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六話、人間の街では騒ぎが起こる




「ーーこれが、人間の住む街か……」



 なんだかんだで、司禄が発見したという街の前まで辿り着いた俺達。目の前に、光る装飾がいくつも施された煌びやかな大きな門がそびえ立つ。余りの豪勢さに見入ってしまう。扉はなく、自由に出入りできる様になっている。

 冥界で毎日同じ風景の繰り返しだった俺にとって、そこは新鮮そのもの。冥界の大門もこのくらい鮮やかなら得体が知れず恐ろしいという印象を少しは払拭できそうだが。



「ここは、人間の街の中でも大規模だ。街の中心には、バカでかい城もあるらしい」


「へぇ、詳しいんだな」 


「聞いたことがあるだけだ」



 ガロンは門の先に小さく見えるその城を見つめる。その情報も、冥王の存在を聞いたという人間が持っていたものなのだろうか。

 その言葉に何も返さず、俺は黙ったままガロンを見ていた。



「中へ入りますか?」


「そうだな」


「……悪いが、オレはここまでだ。中まで入れない」



 そう言ってその場から動こうとしないガロン。



「? 一緒に行かないのか?」


「オレは狼だ。オレが中に入れば大騒ぎになる。正直、こんな近くに居ていつ騒ぎになってもおかしくねぇくらいだ。元の場所への戻り方を探しに来たんだろ? 騒ぎになればそれも出来ねぇよ」


「……案外場を弁えてんだな」


「オレ達獣だって考える。本能のままってのは、長生きしねぇんだ」


「……分かった。なら、ここでお別れだな」


「オレはこの辺りをウロウロしとく。せっかくの出会いにこのままお別れってのもつまらねぇ。閻魔が出てきたらまた同行させてもらうつもりだ」


「……俺について来た所で別に何も無いと思うが。まぁとりあえず、行ってくる」


「ああ。またあとでな」



そう言いながら、俺と司禄はガロンを残し目の前にそびえ立つ街の門をくぐっていく。



「……生身の人間を見たのは初めてだな。やはり、死者より血色がいい」



 街中を歩きながら、すれ違う人間達を見て思った。冥界にくる死者達は生気を吸い取られたかの様に、蒼白で無表情な者が多い。たまに生前血の気の多かったのであろう者もいるが。そもそも死を迎えているから、生気も何もないが……



「ここは人間の集落ですが、油断は禁物ですよ閻魔様」


「分かってるさ司禄。……それにしても、なんだこのとてつもなくいい匂い」



 犬の様にくんくん匂いを嗅ぐ。何処からともなく漂ってくる香ばしい香り。よく見てみると、周辺には何やら沢山の料理が並んでいる。どれも美味そうだ。

 冥界で出される料理もなかなかだが、それにも負けず劣らずだと匂いだけでそう思えた。



「情報も集めたいが、とりあえず腹ごしらえだな」


「そ、そんな悠長な……」


「冥界でも今頃は昼休憩くらいだろ?」



 俺がにやっと笑いながらそう言うと、司禄は少し顔をしかめるもそれ以上反対はしてこなかった。

 意見も一致?した事で、レストラン街だろう食事処が並ぶ方へと移動しようとしたその時――













「お……狼だ!!! 狼が街に入って来たぞーっ!!」




 まさかの展開…………





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