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3話

妹視点が続くと言ったな、あれは嘘だ。

今回から主人公視点に切り替わります。

 千尋と買い物に行った翌日、俺はいつも通り朝7時に起床した。

いつもと同じように顔を洗い、朝食を済ませる。

その際に千尋に色々と念押しされるが、まぁこのままで大丈夫だろうと思っている。

部屋に戻り"ゲヒルン(VRギア)"の説明書を読み直し、配線や設定に間違いがないかを入念にチェックする。


「…問題ないな。」


 千尋が少し前からこのゲームを用意するために色々と頑張ってくれていたのは薄々気づいていた。

申し訳ない気持ちもあったが、折角の好意に水を差してはいけないと思って黙ってみていた。

…いや、違う。千尋の行動を否定して、俺自身が否定されるのが怖かったんだ。

3ヶ月前に起きた事故の一件以来、すっかり卑屈な人間になってしまった。

何をするにも否定的で、打ち込めず塞ぎ込む。

リハビリすることでこの足も動くようになると医者は言っていたがそれもいつになるかわからない。

バイクが如何に自分の根幹を成していたのかを改めて痛感した。


 千尋はそんな俺に根気よく付き合ってくれている。

兄としては友達との時間も優先してほしいと思っているが、千尋は「今は真尋強化月間だからいいんですー!」と聞く耳を持たない。

俺はそんな千尋に甘えきってしまっている。

今回のこともそうだ。

結局千尋や両親に甘えてしまっている…。

…はぁ、これ以上うだうだ考えても仕方がないと思考を切り替える。


「とりあえずログインするか。」


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 ―――――

 ―――

 ―


 ゲームにログインすると俺は噴水広場にいた。

ここが初期のリスポーン地点というやつなのだろう。

サービス開始直後だからか、広場はプレイヤーでごった返していた。

確かにこれは事前に落ち合う場所を決めておかないと会えるわけないな…。

待ち合わせ場所は街の北門前にある道具屋前だったか。

千尋が来るまで時間があることだろうし、久しぶりに自分の足で歩く感覚の確認も兼ねて街を散策してみることにした。


 ―――

 ――

 ―


 街は放射状に伸びており、スポーン地点である噴水広場は街の中心に位置しているようだ。

俺はそこからまず東へ向かって歩いていた。

途中に"冒険者ギルド"と書かれた建物があり、引っ切り無しにプレイヤーが出たり入ったりを繰り返している。

 女神の言っていたチュートリアルを受けられる施設だからであろう。

ギルドからは人々の喧騒が聞こえてくる。通りで開かれている屋台からは食べ物の美味しそうな匂いが鼻孔をくすぐる。


 俺の足はしっかり地面を踏みしめ、地面の硬い感触が返ってくる。

現実と比べても遜色の無い世界がそこには広がっていた。

3ヶ月ぶりに自分の足で歩く感動もそこそこに散策を続ける。

広場からも離れ、プレイヤーの姿も見えなくなってきた頃、ふと足に何か当たった感触に気づく。


「…なんだこれ、巾着袋?」


 拾い上げてみるとそれは白い巾着袋だった。

少し重みがあり、中からじゃらじゃらと音がする。

恐らく財布だろうと思い、持ち主を探そうと思い、そこで困惑した。


「これ、どこに届ければいいんだ?」

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