プロローグ
よろしくお願いします。
VRMMORPG《AnotherWorld"IDEA"》
ヴェルトと呼ばれる未開の世界、その荒野にて―――
1台のバギーと、それを追うように1台のバイクが走っている。
バギーの中には銃器や杖で身を固めたプレイヤーが4人、その真ん中に縄で縛られた少女が一人。
猿ぐつわを噛まされ身動きの取れない状況にも関わらず周りのプレイヤーを威嚇するように睨みながら縄を解こうと身体をよじらせいてる。
バイクには2人の男が乗っていた。
操縦するのはサングラスを掛けた男で、背中のホルスターに拳銃が二丁収まっている。
後ろに乗る男は刀を腰に下げ、前を走るバギーを睨みつけている。
両車の間は300m程だが、後ろを走るバイクが徐々に距離を詰めてきている。
「クソッタレ!!おい!!もっとスピード出せねぇのか!!このままだと追いつかれるぞ!!」
後部座席で後ろを振り返りながら杖を構えた男が叫ぶ
それに対しドライバーが
「もう目一杯出してるんだよ!!文句言ってねーで相手に向かって魔法の一つでもぶっ放せ!!」
「撃ってるよ!けど、当たんねぇんだ!
あいつ、まるで俺がどこに何撃つかわかってるみてぇに避けるんだよ!」
「クソッ!クソッ!!
折角ここまで順調だったってぇのに何だってあんな奴が出張ってきやがんだよ!」
別の男がそう言いながら手にした銃器を後ろに向かって発砲する。
その銃弾を危なげなく回避し、バギーとの距離を詰めていく。
ふとバイクを操縦している男が左手で拳銃を抜き、前を走るバギーに向けて2発発砲する。
1発ははずれるが、2発目が前を走るバギーのタイヤに命中する。
何らかのスキルが掛かっていたのか、タイヤのバーストに合わせて車輪がロックされる。
そのタイミングで後ろに乗る男がバイクから飛び上がる。
刀を抜き放ち、バギーに対してその刃を振り下ろす。
何らかのスキルが発動されていたのであろう、バギーをそのまま一刀両断しながら着地する。
その姿を確認したバイクの男が一言、
「依頼達成を確認、帰還する。」
「あ、待って!」
「加勢ならしないぞ。」
「あぁ、それは必要ないんだけど…
どうせ帰るならあの子も一緒に連れてってもらえないかな?」
「それは依頼か?」
「あぁ、うん、依頼でもなんでもいいや。」
「プレイヤー1人を街まで運べばいいんだな」
「そう、彼女を安全なところまで運んでほしい。
あー、そうだな、うちのギルドの前に降ろしておいてもらえると助かるよ。」
「承った。
報酬は後ほど取りに伺う。」
そういうとバイクの男はバギーから降りてくる男たちの間を縫って縄で縛られた女性プレイヤーを拾い上げる
「くれぐれも丁寧に運んでね。」
「問題ない。」
言いながら少し離れたところで女性プレイヤーの縄をとき猿ぐつわを外す
「遅い!!
フリートもあんたも何やってたの!?」
喋れるようになるや否やそんな言葉を投げかける。
「文句はフリートへ行ってくれ。
時間が惜しい、出るぞ」
そう無愛想に返すと彼はアクセルを絞る。
「ちょっと!まだ話は…」
「黙ってないと舌を噛むぞ。」
そう言って彼は更に速度を上げ、荒野を走り去っていった―――
《トランスポーター》マヒロ、この世界で最速保持者の称号を持つプレイヤーであり、数多く存在するトランスポーターの中で唯一、最前線へ行って帰ってこれる運び屋である。