出撃
2030年7月26日
アラビア海上 某所
現地時間 0730
右舷第1ヘリポートに、発艦準備を終え、プロペラが高速で回転するC-130が1機、待機していた。
この、桁違いに大きな空母では、空母「フォレスタル」のころには実験段階以上には進まなかった大型輸送機の発着艦も可能である。
後部のカーゴハッチは開け放たれ、歩兵の降下に必要な支援物資の積み込み作業が行われていた。
いま搬入されているひときわ大きな荷物は無人攻撃車両「アーチャー」である。
1メートル近くある直線的なデザインの胴部の下に、胴体に対しては少し小さめな2本の脚部を備えている。
胴体右にはM134 7.62mm機関銃が、左側部には6連装の対戦車ロケットランチャーが装備され、胴体内にもL16 81mm迫撃砲が収納されている。
歩兵に先駆けて地上に降下し、彼等の降下地点の安全確保と、その後のナビゲートをするのがこの「アーチャー」の役割だ。
「アーチャー」に続いて機内に乗り込む。
第2次大戦の頃からずっと変わらない、骨組みと配管のむき出しになった壁面に担架のような椅子がこしらえられた無骨な機内構造がイツキたちを迎えた。
今回イツキはチーム3のメンバーのうち、顔見知りの数人と一緒に出撃する。
この分隊の指揮官であるウォレス。狙撃手を務めるヘクター。軽機関銃で支援するマイク。そして前衛のイツキ。
この分隊——O分隊はこの4人で構成されている。
本当はヘッシュも一緒なのだが、負傷のため今回は休みだ。
ちなみに今イツキが着用している戦闘服は、いままで愛用していたコートやコンバットベストではなく、技術部がイツキ用に新たに開発した特殊戦闘服で、黒系で統一された一体型のコート風のデザインをしている。
防弾プレートやマガジンポーチ、各種ポケットも最適な場所に付けられ、なによりこれ一つで光学迷彩対応のスニーキングスーツも兼ねているというのだからすごい。
ただひとつだけ、イツキが気に入らないところがある。
下が、なぜかズボンではなく、スカートなのである。しかも、両太ももにはハンドガンとナイフ用の収納プレートが取り付けられているのでかなり短い。
強風が吹けば中身が見えてしまいそうだ。
こんなデザインを考案するのは技術部のなかでも「オタコン」というニックネームを付けられたあいつしか考えられない。
あとで締め上げることにしよう。そんなちょっとした決意を胸に秘め、イツキは雑な座席に腰を掛けた。