戦闘終了
今回短いです。
2030年 7月24日
カタール ドーハ
現地時間 0327
短い戦闘が終結し、修羅場と化した廃墟のなかで、イツキはひとりたたずんでいた。
硝煙の香りが強く漂い、足元には数100発分の銃弾の空薬莢と、空マガジン、炸裂したグレネードの破片が砂のように転がっている。
治りたての足で、イツキは斃した敵兵のもとに向かった。先ほどの戦闘で弾薬を使い果たしてしまったから、「補給」しておく必要があるのだ。
イツキが仲間からたまに「ハゲタカ」と呼ばれる所以でもある。
まず体が半分千切れた兵士に近づき、所属と装備を確認する。
やはりライバル企業の精鋭部隊だった。光学迷彩用のマントは脱ぎ捨てている。戦闘ベストにはまだいくつかのマガジンが残っている。
傍らに転がっていたサプレッサー付きのベクターを回収、マガジンを装填し、給弾する。
ありがたいことに、この兵士はM67グレネードも未使用のまま残っていた。
そのまま次の死体に向かい、弾薬を回収する。
予備弾倉やグレネード、地雷やC4でいっぱいになったカバンを抱え、イツキは無線で連絡を入れた。
「O-03よりオブザーバー。敵と交戦し、これを殲滅するも、合流時間に間に合いそうにない。指示を求む。オーバー。」
「オブザーバーよりO-03。回収地点をB-7に変更する。ここには常時回収機待機しているから、ゆっくり行っても大丈夫だぞ。オブザーバー、アウト。」
無線を切り、敵から奪ったブーツを履く。さすがに瓦礫まみれの道を裸足で歩く気にはなれない。
足にはまだ少し違和感があるが、だいぶ動けるようになった。たぶん大丈夫だろう。
今度は足元にも注意しなければならない。いくら再生できるといっても、痛覚がないわけではない。普通はショック死してもおかしくない痛みだ。
「……ドMじゃあるまいし……」
と小さく溜息を吐きながら、イツキは行軍を再開した。