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ひ弱な青年賢者はヤンキーだらけの魔法学院のトップに立つことにしました  作者: 森田季節
クラスのトップを目指す 編

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7/24

7 放課後に校舎裏に来い

 その日の最後の授業が無事に終わった。

 俺としては授業をやった感覚もないのだけど、冷静に考えれば、ヴァーランド魔法学院の授業だって、すでに知っていることをなぞってるだけで退屈だったわけだし、大差はないかもしれない。


 じゃあ、あとは学園長室かどっかに入って、寮に戻る魔法を使うか。ドアを作った時に、生徒に後ろから飛び込まれたりすると厄介だからな。


 しかし、その前に捕まってしまった。


 俺の体に影がかかる。

 頭をあげると、オーガのブルタンが怖い顔で立っていた。


「おい、ルーリック、ちょっと校舎裏まで来てくれねえか」

「なんだ? 転校生が調子に乗りすぎたか?」


「お前がすごいのはわかった。それは掛け算だけでもはっきりしてる」


 いや、普通はそれでははっきりはしないんだけどな……。そもそも、魔法と関係ない。


「しかしな、俺のあこがれてる賢者だとかウソをつくのは許せねえんだよ」

 ぎろりとブルタンが俺をにらんでくる。


「賢者に認められる試験はとてつもなく難しいだろ? 高等部の年齢でなれるようなもんじゃねえ。それぐらいは俺も知ってるぞ」

「俺はその試験に合格したんだよ。最年少記録らしいな」

 そんな存在が目の前にいると信じられないかもしれないけど、俺だって自分にウソをつくつもりはない。この年で賢者になったのは俺の誇りだ。


「ふざけんな! やっぱりお前は締めるしかねえな! 校舎裏まで来い!」


 まあ、いいか。

 お前のあこがれの賢者の実力、思い知らせてやるよ。



 校舎裏って人気がない場所のはずなのに、思ったよりもギャラリーが多いな。

「兎の聞き耳」を使って、状況を確認すると、どうやらブルタンをトップとするグループの生徒たちが集まっているらしい。


「あれが転校生か」

「賢者とかウソついてるらしいぞ」

「魔法が使えるような奴がこの学校に来るわけねえだろ」


 マジで魔法を使える時点で奇跡って存在なのか。

 それはどうかと思うけど、たしかに魔法が使えないオーガとかゴブリンとか普通だよな。それは人間でも同じで大半の者は魔法なんて使えないし、使えてもかまどに火をつけるとか初歩的なレベルのものが大半だ。


「いいか、転校生。どっちかが降参って言うまで殴り合い、蹴り合う。一番単純なルールだ。あと、お前が持ってる杖を使ってもいいぞ。それぐらいの武器は認める」

 杖を持ってるのは、俺が賢者だからだ。これがないと魔法陣を作りづらい。


「あっ、ちょっと待て。大事なことを確認させろ」

 俺は軽く右手を挙げる。そういえば、俺、元の学校の制服姿だったな。これ、動きづらいんだ。


「なんだよ、とっとと言え」

「俺は魔法を使えるから、もちろん使うぞ」

「ああ、好きにしろよ。なんでもありだからな。もしも魔法ができるなら、それもありだ」


 だったら、もう負けはなくなった。あとは、どうやって勝つか考えるだけだ。

 まあ、少し痛いけど、ケンカらしい方法をとるか。


「よし、じゃあ、行くぜ!」

 オーガのブルタンが殴りかかってくる。

 ほんとに何も考えずに、突っ込んできたな。頭脳戦の要素、まったくないんだな。


 こっちは作戦はすでに決めていた。


 ブルタンの拳が飛んでくる。


 ぶっちゃけ、賢者レベルの炎や氷をぶち込めばその時点で絶対に勝ちなんだけど――


 俺はあえて両手を前に出して、そのブルタンの拳を体で受け止める。


 両手で防いだはずなのに、体が思いっきり浮いた。

 オーガは力が強いけど、本当にそうだな。


 背中から落ちた。まあ、受け身をとったから、そこまでのダメージじゃない。打撃は来ることをわかっていれば、どうにかなる。

「なるほどな。不良のオーガのパンチってこれぐらいか」


 ギャラリーからはやっぱりブルタンは強いぞなんて声がする。現時点までなら、ブルタンのほうが優勢だもんな。


 うん、不良グループのトップやってるだけはあるな。体がデカいし、力も強い。


 けど、これって力が強いだけだ。力任せとも表現できる、雑な攻撃だ。

 格闘技でもトップに立てる、そんなことを学園長は言ったけど、その意味がわかった。


 不良でこの程度なら、努力して真面目に格闘技を習ったら、そっちの方面でももっと強くなれそうだ。

 なにせ、俺は努力型の人間だからな。

 どういうふうに努力すれば、効率よく力を上げていけるかも知っている。


 もちろん、得意・不得意は人によって違うけど、こいつらに勝てる程度のものは、おそらく短時間で身に付きそうだ。


 それはそれとして、この戦い自体にも勝たないといけない。

 まだ、格闘技の知識はないから魔法を使わなきゃな。

 とはいえ、遠距離から魔法を使いましたというのでは芸がない。それにケンカっぽさが欠けるきらいがある。


 俺はゆっくりと立ち上がる。

 さささっと杖で魔法陣を描く。

 それから短い呪文もさささっと唱える。


「おい、そんなしょうもないことでビビったりしねえからなっ!」

 また、ブルタンが突っ込んでくる。猛牛みたいな戦い方だな。でも、見ていて気持ちがいいと言えなくもない。


 先に俺も魔法陣を作り終わった。


 ブルタンの拳がやってくる。

 それに対して、俺も拳を振るう。


 手の前に小さな竜巻を作った拳を。


 これだったら、殴り合いに見えるだろ。

 ケンカにはやっぱり拳を使わなきゃな!

 一方的に遠距離攻撃で沈黙させるとかルール上問題なくても、後味が悪くなる。


 その竜巻がしっかりとブルタンの腹に入る。


「これが俺の一撃だっ!」


「ぐおっ! なんだ、これ……」

 そうつぶやいた直後にブルタンの大きな体が浮き上がった。


 軽く五十メトールは先までブルタンは吹っ飛んでいく。


 そして、きれいに弧を描いて地面に倒れた。


 歓声なのか悲鳴なのか、どっちかわからないような声が響き渡る。

「つ、つええ! 転校生つええ!」

「ブルタン大丈夫か!」

「あいつ、ヒョロヒョロの人間なのにどんだけ力あるんだよ!」

「やっぱり、何か事件起こした人間なんだよ!」


 さてとブルタンはまだやれるかな。パンチの威力自体もそこそこあったはずなんだけど。


 ゆっくりとブルタンは立ち上がった。

「お前、マジで強いんだな……。まるで竜巻が手にあったみたいに見えたぜ……」


 そして、ブルタンは前からゆっくりと倒れた。

「動けねえ……。いいパンチ喰らっちまったぜ……。このエフランに来るだけあって、お前も相当なワルじゃねえか……」


 勝ったのはいいけど、まだ魔法が使えるって認めてもらえてないな……。

 けど、これで俺は二年一組の頂点には立っただろう。

クラスのトップを目指す 編はこれにて終了です。次回から新展開です!

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