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6 学校中に知れ渡った

 それ以降の授業もなかなかすごかった。


 次の授業は魔法言語。

 魔法で詠唱する呪文には古代語のものも多い。しかも古代語は人間と魔族で、さらに全然違う言葉だったりするので、さらに面倒だ。現代語は人間も魔族も一緒なので、楽なんだけど。


 高等部二年だったら、催眠系の魔法の呪文ぐらいは習うんじゃないかな。

 ちなみに魔法言語の教師は、巨漢のトロールだった。魔法より腕力のほうに自信がありそうだった。生徒に舐められないためというのが、わかりやすく出ている。

「今から配るプリントの内容を読んでいってもらうからな」


=====

正直者の魔法使いと、よくばりな魔法使い


 あるところに、正直者の魔法使いと、よくばりな魔法使いがいました。正直者の魔法使いのところに、ある冒険者が来て、こう言いました。日当三万ゴールドで手伝ってほしい仕事があるんだ。正直者の魔法使いはこう言いました。

「いいとも。お引き受けいたしましょう。」

=====


 ど、童話……?

 しかも現代語で書いてるぞ。魔法言語、関係ないぞ……!?


「いいか、順番に一文ずつ読んでもらうからな」

「先生、俺、全部読めます……」


 またオーガのブルタンとその仲間から「調子に乗るな!」と言われたが、全部声を出して読んでみた。


「――こうして、よくばりな魔法使いは大損をしてしまい、正直者の魔法使いは大金持ちになったのでした。めでたし、めでたし。最後まで読めました」


「す、すげえ。まったく詰まらずに読みやがった!」

「しかも、登場人物の気持ちになり切って、心をこめて読んでやがる!」

「これがチートってやつかっ!」


 チートじゃねえよっ!!! 現代語、読んだだけだ!

 先生なんかはなぜか泣いていた。この話で感動するの、どれだけ涙もろい人でも無理だろ!


「君になら、まともな魔法言語の授業をできるかもしれん……。教師生活十五年目にして、初めてやれるかもしれん……」

 ああ、先生は普通に教員資格持ってるぐらいには賢いもんな……。


 俺のすごさは休み時間などで伝わったようで――

 四時間目にあった魔法陣作成の授業には、やたらと後ろに他クラスの生徒が集まっていた。

 つまり、自分の授業をサボって俺を見に来たらしい。


「はい……これがつむじ風を起こす魔法陣です……」

 前の黒板に魔法陣を描いた。

 老婆のいかにもベテラン魔法使いという教師が泣いて喜んでいた。ここの教師、よく泣くな。


「素晴らしい! わずかな乱れもなく魔法陣を描けておるのう!」

「これ、初等部で習うやつじゃなかったですか? いえ、基礎をやりなおすのって大事だったりしますけど」


 また背後から話し声が聞こえてくる。

「おいおい、魔法陣まで描けるのかよ」

「もしかして魔法も使えるんじゃないか?」

「マジかよ。パねえな!」

「人間って、そんなにスペック高いのかよ」


 ここって法的には魔法学校だよな? なんで魔法を使えるのがすごいことになってるんだ? そうツッコミを入れたいけど、それは尋ねてはいけないことなんだろう。


「ちなみに、おぬしはどこまでの魔法陣が描けるのかのう?」

 教師に尋ねられた。

「瀕死の重傷を負ったケガ人を全快させる治癒魔法とかなら。賢者の試験に必要だったので」


 あれはなかなか難しい。円の中にいくつか模様を入れていかないといけないので、バランスをとりづらい。


「おお、そうか。そなた、賢者の資格も持っておるのか」


 あっ、今のは言うべきじゃなかったかな。

 もう遅い。後ろのギャラリーが盛り上がっている。

「それってすごく偉いってことか?」

「事実なら確実にこの学校最強だろ」

「さすがにペテンだろ。そんな大物が来る理由がどこにもねえよ」


 成績優秀者がこの世界にいるとして、この学校に来る可能性って限りなく低かっただろうからな。


 これ、昼食を教室で食べるの、怖いな。学園長室に逃げ込んでおくかな……。



「いやあ、大活躍でしたねえ」

 学園長室に入ると、ラファファン学園長に拍手で迎えられた。

「ありがとうございます。活躍する気は一切なかったのに、勝手に活躍してしまったようです……」


「ですねえ。この学園の生徒の成績は著しく低いですので。偏差値4ですから……」

 学園長もそのことは気にしているようだった。


「あの、なんで、この学校はここまで成績が低いんですか?」

 もちろん、魔法学校もピンキリだけど、ここまで極端なのは何かがおかしい。


「それは、ここにはいわゆる落ちこぼれの方々が集まってくるからなんです。というか、そういう人たちを受け入れる場なんですよ」

 俺が応接室の椅子に座って、ジャム練り込みパンを食べていると、学園長が向かい側に座ってくる。


「どんな学校でも中等部までに落ちこぼれてしまう生徒さんは出てきます。しかし、どうしても子供に高等部の卒業資格を与えたい、あるいはこれまでダメだった分を取り戻させてあげたい、そういった親御さんが生徒さんをこの倍率が1倍未満の魔法学院に通わせようとするんです」


「なるほど。でも、あまり上手くいってはないみたいですね」

「はい。なかなか大変ですねえ。みんな、勉強を面白いと思ったことがない方たちなので」

 ラファファン学園長は遠い目をして言った。

 それは自分の子供を見守っている母親みたいな目だった。


「この学園の生徒さんの大半はまだ一度も自分の翼で羽ばたいたことがありません。けど、逆に言うと、羽ばたき方さえわかれば、すごく成長する可能性だってあるんですよ。なにせ、まだ何もやってないんですから」

 それは理想論だと思ったけど、同時に奇妙な説得力も感じた。


 たしかに、まともに勉強をしたことがないなら、勉強の方法を把握した時点で、劇的に伸びる可能性はある。


 なぜなら、俺がそうだったからだ。


 自主的に勉強をしようと初めて本気で思って、いつのまにか魔法の勉強そのものにのめり込んで、賢者の資格まで手にしていた。

 もしも、出された課題をこなすだけのことを延々とやっているだけだったら、成績はずっと真ん中ぐらいで止まっていただろう。


「だから、俺が呼ばれたんですね。俺は天才型じゃなくて、努力型ですから」

「ルーリックさんの成長速度を考えると、もはや天才と言っても問題ないんですけど、勉強の楽しさを教えてくれるかもなと思いましてね。それに世の中、バカなほうが成功することもありますからね。一途にやり続けた結果、花が開くことは多いんですよ」


「ただ、俺、教師じゃないから、生徒をやる気にさせる方法は知らないんですけどね」


「はい。とにかく、ルーリックさんはすごい生徒としてふるまっていただければけっこうです」

なんとか日が変わる前に更新できました。明日も二回更新の予定です。

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