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5 掛け算対決

 エフラン魔法学院の初日登校日。

 俺は寮と魔法学院を移動するためだけの専用魔法で、登校してきた。これなら丘の上にある学校まで歩いてこなくていいし、悪いことじゃない。


 俺が編入するのは二年一組。なお、この学校は高等部しかない。


 あんまり早朝に来るのもおかしいので、始業十分前ぐらいに教室に入った。


 ギンッ!

 一斉に視線が俺のほうに向けられた。

 ちょっと、びくりとしたけど、転校生が来るわけだし、そりゃ目立ちもするか……。

 けど、注目の浴び方がおかしいんだよな。なんかむき出しの敵意を浴びせられているというか……。


 いきなりケンカを売られるのだろうか? ありうる。ここは超荒れてる、超不良校だからな。しかし、俺の魔法の能力は賢者クラス。つまり、魔法のガチなプロだ。魔法を使えば、負けることはまずないはず。


 …………。

 あれ、反応はないな。そのほうがうれしいといえば、うれしいんだけど。

 よし、ここは思念だけで簡単に使用できる魔法、「兎の聞き耳」を使うか。


「兎の聞き耳」は周囲の声を聞き取ることができるシンプルだけど、意外と重宝する魔法だ。 かつて、とある国の偉大な賢者は、この魔法で多くの民の苦しみや不満を聞き取って、いくつも改革運動を行なったという。


 よし、「兎の聞き耳」使用!


「あいつ、人間だぜ……。なんで魔族の土地に来たんだ?」

「いったい、どんな悪事をしでかしたんだろ?」

「とてつもないことをやらないと、こんなところに来ないだろ……」

「人ぐらい殺してるんじゃねえか……?」


 やたら、失礼なことを言われてるぞ!


「締めるか?」

「いや、実力がわからねえのに、それはダメじゃないか」

「まずは様子見だな」


 思ったよりも計画的だな。しかし、情報収集をすることに決めて正解だった。何かやってくる可能性自体は高い。


 ちなみに生徒の数は俺以外だと五人ぐらいしかいない。

 最初は始業前だから、ほかの教室に行ってるのかと思ったけど、これ、ほとんど来てない可能性もあるな。


 やがて始業の鐘がゴーンゴーンと鳴った。

 ただ、不良たちは自分の席にもつかずに立ってたり、ほかの奴の机に座ってたりしている。教室で目立っているのはオーガだな。あいつがクラスのトップだろうか。


 それよりもどんな先生が来るかのほうが気になると言えば気になるな。

 こんな学校の先生って、どんなのなんだろう。


 部屋に入ってきたのは、モアモアさんだった。

「それでは、出席をとります。いつものメンバー以外、欠席ですね」

 えっ? この人が教師なの……?

 しかし、誰もそれに違和感は覚えてないようなので、間違いではないようだ。


「本日は転入生の方がいらっしゃいます。人間のルーリックさんです。ルーリックさん、前へ」

 あいさつしないわけにもいかないので、教室の前で、「王都から来ましたルーリックです」と最小限の紹介をした。多分、学校名を言ってもわからないだろうし、わかったらわかったで調子に乗っているように聞こえるだろう。


 やはり、男子生徒たちからにらまれてるな。それと、背中に翼の生えている女子が一人座っている。かなり化粧が濃くて、いかにも不良っぽい。それとスカートなのに、股を広げて座りすぎだろう。パンツ見えてるぞ……。


「それでは、皆さん、授業をはじめます。一時間目は算術ですね。偉大な魔法使いになるには算術も必要ですから。プリント、取りに来てください」


 あっ、そういえば、教科書とか支給されてなかったな。持ってこない奴が多すぎるから、その都度プリントを配るとか言っていた。


 さて、どんなことをエフラン魔法学院では教えてるんだろう。


=====

7の段のかけ算 その二


7×7=49

7×8=56

7×9=63

覚えよう!

=====


 想像以上にレベルが低い!!! 低すぎる!!!

 マジかよ……。これ、高等部二年の授業だよな……。ていうか、これ、授業も何もないだろ……。計算の結果しか書いてない。


「十分後に7の段の小テストを行ないます。皆さんはそれまでにマスターしてくださいね」


 真顔でモアモアさんが言った。いや、これはいくらなんでもふざけてるだろ……。俺をネタではめようとしてるだろ……。


「くそっ! 7の段がやっぱり一番難しいぜ!」

「7の段から掛け算って急に難しくなるよな……」

「5の段は覚えられたんだけどな……」


 マジにみんな、悩んでる! エフラン魔法学院、恐るべし!


「あ、あの……モアモア先生、これぐらいは全部できますけど……」


 思わず言ってしまった。


「おい、転校生、調子乗るなよ!」

 オーガの生徒に言われた。わざわざ言ったことに関しては出すぎた真似かもしれないが、調子に乗ったと思われる内容じゃないだろ。

「7の段と8の段はほかよりはるかに難しいんだぞ! ふかしてんじゃねえよ!」


 なんか、頭が痛くなってきた。てっきり魔法が未熟とかそういう次元と思ってたけど、もっと根本的な問題だった……。


「わかった……。じゃあ、7の段と8の段と……せっかくなんで9の段と、それと12と13の段も言おう……」


「よーし。言ったな。もし、一回でもミスったら購買のジャム練り込みパンをおごれよ!」



 普通に全部言えました。



「13×8=104、13×9=117、13×10=130、はい、終わり」

「全部言えています。転校生のルーリック君の勝ちですね」


 オーガが無茶苦茶悔しがっていた。

「くそっ! これがチートな力を持った転校生ってやつかよっ!」


 チート、関係ないから!

 そういうの、まだ、何も発揮してないから!


 次の休み時間の終わり頃、オーガに声をかけられた。


「おい」

「な、なんだ……?」

 これは締められる流れか?


「さっきは俺が負けた。これは購買のジャム練り込みパンだ」

 ちゃんとパンを差し出してきた。そこは約束を守るんだ……。

「ありがと……。おいしくいただくわ」

「オレの名前はオーガのブルタンだ。覚えとけ」


「ああ、わかった……」

「今、登校してきてる奴の中では最強の男だ」

 最強の男、7の段、できないのかよ。本当に魔法学院なのだろうか。魔法が使えるようになって卒業する生徒、いるのか。


 とにかく、よくわからない流れでパンをゲットした。


本日、夜にもう一度更新します。

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