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4 転入することに決めました

「ルーリックさん、ひとまず、この学園の最強になってください」


 学園長はさらっと教育者ぽくないことを言った。


「……最強になる?」

「はい、このエフラン魔法学院にはいくつも不良グループがあります。その不良グループをルーリックさんが全部締めて、ルーリックさんがもうちょっと勉強しろよと言っていただければ、かなりの効果が見込めて、学校の偏差値も急上昇すると思うんです」


 とんでもない提案してきたな、この人!


「いやいやいや! 俺は賢者にはなりましたけど、腕っぷしは強くないですよ……? 攻撃力はたかが知れてますからね……?」


 賢者というのは魔法使い系統の上級職だ。よって剣士や格闘家などと比べると攻撃力は当然知れている。腕力は一般人から毛が生えた程度である。

 一方、ここは魔族の土地だから、生まれつき腕力のある奴もいるだろう。ミノタウロスとかサイクロプスとか。


「そこは上手くやっていただくということで。いざとなれば魔法で倒せばいいことですし」

「たしかに魔法の技術なら俺が勝つと思いますけど、それで不良が納得するんですかね?」

 俺は魔法なんて関係ないって顔をしそうだ。


「そこはケースバイケースだと思いますが、ぶっちゃけ腕力のほうもどうにかなると考えています」

 また、楽しそうにラファファン学園長が笑う。どことなく笑みが艶っぽい。


「なにせ、ルーリックさんは努力家ですから。格闘技のほうも鍛えて、極められますよ」


 なんか、さらりと言われた。

 そこに、モアモアさんが飲み物の載ったプレートを持ってきた。


「ハチミツ水でございます」

「あっ、どうも……」


 学園長のほうにも水を置くと、その横でモアモアさんはじっと控えている。まあまあ、気になるけど、もっと気になることがあった。


「格闘技も極められるって、そんな簡単に言われても……。俺、見たらわかると思うんですけど、ひ弱ですよ」

 ムキムキな賢者なんておかしいしな。魔法全般の勉強に時間をフルに費やしたので、あまり日の光すら浴びずにこの数年、生きてきた。


「はい、今はひ弱かもしれません。しかし、それは冒険に出たばかりの勇者がひ弱なのと同じ。きっと、圧倒的な努力でそんなもの、乗り越えることができますよ!」

 胸を張って、学園長に言われた。どうでもいいが、なかなか豊満な胸だ。


 なぜ、そんなに俺の力を過信しているのかわからないけど、これ、水掛け論になるんじゃないかな。


「ルーリック様、学園長の見込みがはずれることはありません。教育業界では五割の女と呼ばれております」

 モアモアさんが言った。それ、二回に一回ははずれてるのでは……。


「俺は教育者じゃないんで、不良の生徒を教化できるかはわかりません。ただ、立派な生徒として、この学園に通うぐらいなら、やれると思います」


 自分ができることを率直に告げた。

 あくまでも、これは交渉だ。


「わかりました。もちろん、わたくしたちは、ルーリックさんを歓迎いたします。あくまでもルーリックさんは転入生。ルーリックさんがほかの生徒にどう影響を与えるかどうかは、いまば副産物ですからね」


「それなら、やれる範囲でやってみますよ」

 おかしいな。この部屋に入る前は断ろうかと思ってたけど、学園長と話していて、いつのまにか気持ちが変わっていた。

 これもいい人生経験だと考えよう。どうしようもなくクソだったら、その時にまた考えればいい。


「あ、そうだ。毎月百万ゴールドもらえるって本当ですか?」

 親が行方不明で仕送りという概念が消失しているので、お金を稼げないとやっていけない。


「はい。今年度は学園の修理費用を大幅に削減して、ほかのところに回したので、支払えます」

「いや、そこは壊れたところをどうにかするべきでは……」


「やっても、やっても、壊れますからね……。ならば最初から壊れていれば、これ以上は壊せないという作戦に変えたのです」

 学園長が苦労しているということははっきりとわかった。


「編入は明日からですね。今日は寮にご案内いたします。モアモア、お願いしますね」

「かしこまりました、学園長」


 ぺこりとモアモアさんが学園長におじぎをした。


 モアモアさんは俺のほうに何か一枚、紙を差し出した。

「この魔法を使用してもらえますか。魔法陣と詠唱法は書いているとおりです」

「ああ、かなり特殊ですけど、やれなくはないですね」


 俺は杖を取り出して、部屋の中で、それをやった。なにせ、賢者だからな。よほど異形の魔法陣でない限り、ちゃんと作成できるし、詠唱も問題なく行える。


 すると、いきなりドアが俺の前に出現する。


「なんだ、このドア!」

「ふふふ、寮は時空を歪めてずっと先に作ることにしたんですよ。どっちかというと、教職員用の寮なんですけど。これなら生徒を叱っても絶対に復讐のお礼参りをされることもないでしょう?」


「この魔法を使われると来られてしまいますが、この学園の生徒に空間に関する魔法を使える生徒は誰もいませんので」


 学園長とモアモアさんが続けて、説明をしてくれた。いろいろと皮肉が効いてる気がするけど、安全には違いないか……。


 モアモアさんが扉を開けて案内してくれた先は、海を見下ろせる高台だった。そこにこぎれいで大きな館が立っている。規模からするとちょっとした城だ。


「この中の空いているお部屋を使っていただきます。ちょうど二号室が空いておりますので」

 そこのクオリティ自体は前の学校の寮よりもハイレベルだった。

 ここで暮らすというのも、ありと言えばありだな……。


 ちなみに建物の住所を確認したら、学園から500キーロも離れた、まったく違うところだった。

 明日からの学校生活の前にリラックスするにはいい環境かもしれない。


 その日は寮の近くのお店などを確認して、食べ物を買ってきて、夕飯にした。

 転校初日はどうなることやら。不良に背後からいきなり殴られませんように……。


次回は明日更新します!

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