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ひ弱な青年賢者はヤンキーだらけの魔法学院のトップに立つことにしました  作者: 森田季節
ヤンキー女子は実は清楚な美少女編

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22/24

22 賢者の役割

「なにせ、オレたちも魔法を使えるからな」

 その言葉に俺は意外な印象を受けた。

 なにせ、とてつもなく頭が悪かったら魔法など使えないからだ。


「お前たち、この学校の中では成績がいいのか?」

「違うぜ。不良は不良でケンカ用の魔法だけは覚えるんだよ。オレたちもそのクチだ。特定の魔法だけ丸暗記すれば問題ねえ。風も火も起こせんだぜ」


 たしかに徹底した丸暗記でそういうことができなくもない。


「このクラスのヘッドはルーリック、お前だよな。こっちの『殺歎サタン』をつぶしてみろよ。オレたちの数は五十人だけどな」


 どうやら、これでこいつらは勝った気持ちでいるらしい。

 そりゃ、魔法を使えない奴の集まりで魔法を使えたら、その時点で調子に乗ってしまってもおかしくない。


「ああ、いいぜ。この俺が全員の相手してやるから、欠席なしで来いよ」


 その言葉にスピーナが俺を後ろから抱き締めてきた。

「危ないって! いくらリックでも五十人も相手になんてできないよっ!」

 たしかに常識はずれではあると思う。


 でも、だからこそちょうどいいんだ。


「このエフランの頂点に立つにはそれぐらい派手にやったほうがいいんだ。そしたら誰も二度と俺にケンカを売ってこないだろ」


「おいおい、女の前だからってかっこをつけてると死ぬぞ? 今のうちに前言撤回してたほうがいいんじゃないか?」

 ミノタウロスのバルクードはにたにた笑っている。こいつからするとそうとしか見えないのか。


「ああ、別にプライドとかそういうの守るためにやってるわけじゃないから、問題ないさ。それよりちゃんと全員で来いよ。追加で倒さないといけない奴が出てきたとか言われても困るからな」

「わかったぜ。『殺歎サタン』の怖さ、教えてやるよ。げへへへへへ」

 バルクードとその後ろの連中が猛烈に頭悪そうに笑う。


「お前をぶっ殺した後、その彼女とよろしくやってやるからな。ああ、ぎりぎり生き残ってる目の前で、彼女が泣きながら貫かれてるところを見てろよ。五十人全員の相手をさせてやるからな」

 その言葉にスピーナがまたぎゅっと俺にしがみついた。

 そりゃ、怖いよな。スピーナの安全のためにも早くこんなバカどもはぶっつぶしておかないと。


「ムカつきはするけど、後でお前らのベストプレイスをぶっ壊すからいいや。それと、こっちも一つだけ要求しとくな」

 俺は敵のトップのバルクードをにらみつけた。


「お前ら、俺に負けたら真面目に勉強しろよ。せめて高等部の全国平均の点数取れるまでにならないと絶対許さないからな」

「ああ、いいぜ。全校生徒を引っ張り出して、全国平均になるまで勉強させてやるよ」


 あ~あ、言っちゃったな。

 じゃあ、これで俺が勝ったら言葉の上ではエフランは全国平均よりは上の魔法学校になるんだな。

 悪くないじゃないか。そんなに簡単に成績が上がるなら、どんな予備校も尻尾撒いて逃げるな。


「ああ、それとお前がボコボコにしたブルタンたちに謝れ。土下座もしろよ」

「いいぜ」

 なんかいくらでもオプション足せそうだな。

「それから、全員坊主な」

「いいぜ」


 こいつら、勝利の確信持ってるから、こう言えるんだろうけど、かなり危ない橋渡ってるってわかってないんだな……。


 こうして、来週、近くを流れる川の河原でぶつかることになった。さすがにこの規模になると、学校でやると学園長にも迷惑がかかるだろう。


 俺はそいつらが去っていった後、スピーナの頭を撫でた。慰めてやらないと、かなり怖い思いをさせてしまった。

「ごめん。あのバカどもはしっかり黙らせるからな。それ相応の報いは与えてやるつもりだ。スピーナに指一本触れさせない」


「そんなことより、リックは自分の心配をしてよ……。敵は魔法も使えるわけだし……」

 ああ、スピーナのその恐怖は正しい知識がないから起きてるものだ。でも、今のスピーナの段階だとしょうがないところもある。


「賢者っていうのはそういう次元じゃないから問題ない」



 大事になってきたので俺は学園長のところに説明にも行った。

「ほほう。なるほど、なるほど」

「というわけで、何卒よろしくお願い申し上げます……」


「本当はそんなことを聞いたら立場上、止めるしかないんですけど、目をつぶってあげましょう」

 ラファファン学園長はこんな話を聞いてものほほんとしている。よくよく考えると、ものすごく器が大きい。普通は衝撃受けて寝込んでもいい話だと思う。


「学園長は好きなようにやれとおっしゃっています」

 モアモアさんが通訳をしてくれた。

「自分がやってきたことが間違いだったと知らしめてやってください、とおっしゃっています」

 まあ、がつーんとやるぐらいのほうがいいのかな。


 一応、学園長から聞いた話だと、『殺歎サタン』は盗賊の下部組織みたいな意味合いもあるところらしい。

 つまり、トップのバルクードとか上にいる奴はそのまま「就職先」は決まっているわけだ。だからこそ、ある意味、気楽に生きていられるんだろう。


「盗賊団になんて入っても、ろくな未来が待っていないのに……。下手をすれば、事件を起こしたところを捕まって逮捕されてしまいます……。でも、どれだけ言葉を使ってもきっと理解してもらえないんですよね」


「まあ、俺がわからせてやりますよ」

 愚者を導くのが賢者の役割だからな。

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