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ひ弱な青年賢者はヤンキーだらけの魔法学院のトップに立つことにしました  作者: 森田季節
ヤンキー女子は実は清楚な美少女編

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21 ベストプレイス

 そこから、二年一組の成績は急速に上昇していった。

 というか、今までが完全に底だったので、そこより下がるということがありえなかったのだ。


 そして、学園長が言っていたように、この学校の教師陣は実は優秀な教師揃いだった。そういう教師陣のおかげで、生徒も理解を速めてくれたと思う。



 さらに俺は模試を全員に受けさせた。

 無茶苦茶反発があったけど、俺がクラスのトップだから受けろと言って押し切った。


 ただし、高等部入試前にやる、中等部三年用の模試だったけど……。


 結果は後日、教室に張り出された。どうせ、全員低いのに慣れてるから恥ずかしくはないだろう。恥ずかしいとかそういう次元の低さじゃなかったのだ。


「すごい……。これまでなら絶対にみんな0点だったはずの中等部三年レベルの魔法テストで……平均25点も……」

「いや、それってどこがすごいの……?」

 スピーナにツッコミを入れられた。


「スピーナがたいしたことないだろと言いたい気持ちもわかるけど、これはすごいことだぞ。なにせ、少しはわかりかけてるってことだからな。これならさらに勉強していけば、高等部の内容にも十分追いつける!」

 ちなみにスピーナは57点だった。クラスの中で見ればかなりできるほうだ。


「でもよ、追いついてどうするんだよ。やっと高等部の次元に近づけるってだけだろ?」

 オーガのブルタンはまだ意味を理解してないようだ。

「ブルタン、中等部の魔法の理論をしっかり理解すれば――初歩的な魔法なら使えるんだぞ」

 それで、ブルタンとその仲間たちも目の色を変えた。


「俺たちも魔法が……」「魔法って夢物語だと思ってた……」「魔法が使えればモテる……」「魔法が使えるのは勝ち組!」


 ちょっと魔法に幻想を見すぎな気もするけど……でも目標ができるのは悪いことじゃない。

 そう、ここはあくまでも魔法を学ぶ学校なのだ。

 生徒はなんだかんだで魔法を覚えたい。


 そして目標ができた人間の集中力は確実に増す!


「それでリックは何点だったの?」

「満点」

 こういう模試は正誤がはっきりしている問題が出題される傾向があるから、こっちも迷うことはない。きっちりすべてを全問正解できた。


「そういうところで満点になるのって、かわいげないわね……」

「やめてくれ。けっこう気にしてるんだ……」


 とにかく、俺はこのクラスから魔法学院を改革する!


 これまでサボっていた生徒もモヒカンゴブリンのゲグが登校してきたことで、流れが変わったのか、じわじわと登校するようになってきた。

 一度、そういう流れができてくると、登校する側のハードルも下がる。


 教師の特別授業などには、自分のところの授業をサボって教えを聞きに来る他クラスの生徒までいた。それはそれで問題なんだけど、学園長に言って、許可をもらった。

 自主的に勉強するって意識が芽生えてる時点ですごいことだし、そういう生徒はきっと成長できる!



 だが、そんなクラス全体が上り調子なある日。

 俺はスピーナと学校に登校してきた。


 校舎に入った途端、なぜか空気がこれまでと違う。

 違うといっても未経験のものじゃない。この殺伐とした空気はあれだな、俺が最初に転校してきた時と同じだ。


「なんだろ、アタシ、すごく嫌な予感がするんだけど」

「わかる。いったい、どうしたんだろうな……」


 魔法を極めていくと、いわゆる第六感、さらには第七感も鋭敏になっていく。

 俺はかなり強烈な違和感を覚えていた。

 自然と額に汗がにじんでくる。


 そして二年一組の教室に入ると――

 男子がまとめてつぶされて、教室に転がされていた。


 あのゲグも負けたらしく、床にへばりついている。ブルタンたちも完敗したらしく、鼻血が出ている奴もいる。


「おい、これはどういうことだよ……」

 呆然としていると、ブルタンがどうにか体を起こした。


「すまねえ……ルーリック。こっちの完敗だった……」

「誰だよ、こんなことしたの!」


「それはエフラン最強って言われてる三年の――」

「どうだい、オレ様のあいさつは?」


 どこか粘着質の腹の立つ声がした。

 背後には大柄なミノタウロスを中心に不良が集まっている。といっても、この魔法学院はほぼ全員、不良なので、生徒=不良だけど。


「成績上げて調子乗ってる奴らがいるって言うから締めてやったんだよ」

 ミノタウロスがにやにや笑いながらしゃべる。


「オレたちはエフラン最強を四年間やってる『殺歎サタン』だ。オレはそのヘッドのミノタウロスのバルクード」

「ん、ちょっと待ってくれよ……。魔法学院って三年って卒業じゃないか……? なんで四年間最強をやれるんだ……?」

 ここ、中等部と一貫教育とかじゃないし。


「決まってんだろ。留年だよ、留年」

 後ろの奴らも「俺たちが卒業できるわけねえだろ!」「出席日数足りてねえんだよ!」と笑っている。いや、それ笑ってていいのか? かなり深刻な事態だぞ?


「エフランが賢い校風になったら来年以降のオレたちの居場所がなくなるだろ。だから、徹底して邪魔してやるからな」

「いやいやいや! そもそも卒業しろよ! なんで居座ろうとするんだよ!」

「そんなの、ここがオレたちの――」


 その不良グループは声を揃えて言った。


「「ベストプレイス!」」


「そういうことだよ、ベストプレイスから出ていくことはできねえ。そうだろ?」


 俺は恐怖するより先に思った。

 こいつら、マジでバカだ……。


「いいか、この学校を変えたかったら、オレたちと戦え。別に魔法を使ってもいいぜ」

 あっ。じゃあ、楽勝だ。


 そこでまたミノタウロスノバルクードは笑った。

「なにせ、オレたちも魔法を使えるからな」

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