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ひ弱な青年賢者はヤンキーだらけの魔法学院のトップに立つことにしました  作者: 森田季節
魔族の高校へ転入!? 編

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1 親がクズすぎた

新作開始しました、よろしくお願いします!

=====

二年生第一学期 中間テスト 結果

1位 496点 賢者

2位 468点 コルトラ

3位 454点 アルシャード

4位 451点 ローリア

5位 449点 ビルクンド

6位 441点 コーサス

7位 439点 サントロイカ

=====


 俺は校舎の掲示板に張られたその成績を見て、ほくそ笑んでいた。

 超名門のヴァーランド魔法学院では成績はモロに1位から最下位まで発表される。


 その中で俺はダントツのトップ、しかも名前でなく、賢者と職業名で書かれている。


 当然、ほかの生徒の中でも話題にのぼる。

「うわあ、ルーリック、またトップか……」

「しかも、ぶっちぎりだ」

「そりゃ、高等部二年ですでに賢者の試験に合格するだけあるよな……」

「つまり、もう教師役に回れるだけの力があるってことだろ……」


 そうだ、みんな、もっと俺を讃えろ。どれだけ讃えても讃えすぎるってことはないぞ!

 なにせ、もう、本当に血のにじむような努力をずっと繰り返してきたんだからな……。


 今では天才だとか言われることもあるけど――

 ぶっちゃけ、俺は中等部の途中までそこそこ程度の成績だった。悪くはないが、生気優秀で目立つなんてことはなかった。家もうさんくさい実業家の出で、つまり平民だ。


 でも、中等部二年の時、大賢者サクラッド様の講演会を学内で聞いたことで気持ちが変わった。

 大賢者サクラッド様は魔族を率いていた魔王を屈服させた勇者メンバーの一人で、平和が訪れた後は人間と魔族の友好関係を築くのにも腐心した英雄だ。


 それにもかかわらず、サクラッド様は絶対に威張ったりしなかった。学生の前でも、対等な人間がいるかのようにしゃべっていた。

 俺は彼のようになりたいと思った。はじめて目標が生まれた瞬間だった。


 まあ、それと……サクラッドがそれなりに歳がいってるはずなのに、かなりのイケメンですごいモテてたというのもあったけど……。


 魔法使い系統の職業は、残念ながらあまりモテないと言われていた。どっちかというと剣士などになって、そのまま王国の騎士身分にでも連なるほうがモテる。

 どうも、魔法使い系統の職業は暗い図書館で魔道書を読んでいるイメージがあるのだ。まさに俺がそういうことをしていたので、否定しづらい。


 しかし、大賢者にまで上り詰めれば、話は違う。俺でもモテる可能性がある!

 だったら、魔法使いの上級職の一つである賢者にまでなってやる!


 講演の日から、俺は片っ端から教科書や参考書の魔法の詠唱を暗記して、マスターするという力技を繰り返すことにした。

 魔法使い用の塾などもあったけど、親の仕送り額が少なすぎて、とても通えなかった。


 別に物覚えがとくによかったわけでもないから、時間はかかった。

 かかってもめげずに喰らいつくように泥臭く続けた。

 そのうち、体が詠唱を覚えることにも慣れてきた。

 そしたら次第に魔法陣の描き方とか、ほかの部分も成長していった。


 自分の学年の内容をクリアした頃には成績もかなり上がってきた。それでも休まずに勉強内容を、次の学年に移した。

 高等部の内容をひととおり習得したら、ついには賢者の認定試験の範囲にも手をつけた。


 それで高等部二年でついに俺はついに賢者の認定試験を受けて、通った。

 賢者は魔法使いや僧侶など魔法を使う職業で数年は腕を磨いてから挑戦する上級職だ。それにいまだに学生の俺が受験して、合格するのは初のことだった。


 これまでの最年少の賢者は十九歳だったので、俺は二年ほど記録を更新したのだ。


 努力を突き詰めると、最初は壁に見えていたものもぶっ壊せるんだ。いわば努力チートだ。


 その努力は、そろそろ花を咲かせそうだった。

 中庭で女子たちがこんな話をしていた。


「ルーリック君、すごいよね。もう賢者だし」

「魔法学院でもはじまって以来の快挙なんでしょ」

「平民出身だけど、貴族階級の子も狙ってるとか」

「ああ、サンドル伯が娘さんと結婚の申し込みをしようとしてるって話でしょ」

「あれ、大公に止められてるんだよね~」

「じゃあ、もう大貴族同士の奪い合いだ~」


 人生十七年、俺はついてにモテ期を自力でつかんだ……。

 おい、実業家のうさんくさい親父、見てるか?

 お前の息子は成功してるぞ! あんたよりまっとうな方法で天下を取ったぞ!


 と青魔法を使ったアナウンスが校内に響いた。


 ――ピンポンパンポン、高等部二年のルーリック君、至急、学園長室にまで来てください。


 これはあれかな。何かの表彰かな。


 やっぱり天下取った人間はなにかと忙しいな。


 俺は意気揚々と学園長室に入った。


 ヒゲの長い学園長がものすごく暗い顔をしていた。

 あれ? これ、歓迎される流れじゃないような……。


「ルーリック君、君は本当に素晴らしい成績を収めている。我が校の誇りだったよ」

「ありがとうございます。ただ、なぜ、過去形なんでしょうか……?」

 なんか気になる言い方と表情なんだよな。「だった」って言っていた。


「実は君の実家から高等部以降の学費が一ゴールドも納められていないんだ。高等部二年になった時にまとめて払うと言われて待っていたが、その期限も切れてしまった……」


「えええええっ! 親父、学費払ってなかったんですか!?」

 おかしいぞ……。俺は親から学費はちゃんと払ったと聞いてたんだけど……。あれはウソだったのか……。


「申し訳ないのだが……学校の規定で、君は退学ということになる……」

「いやいやいや! こういうのって、ほら、成績優秀者だと特待生制度みたいなのがあったりしないんでしょうか? これでも最年少で賢者になったわけだし、きっと学校の宣伝にも……」


 ゆっくりと学園長は首を横に振って、怪しいパンフレットを出してきた。

「君の両親は、『最年少の賢者が教える魔法講座開講』などと言って、お金を集めるだけ集めたあとに消息を絶っている、つまり詐欺でお金を集めてからの夜逃げだ……」


「親がクズすぎる!!!」

 たしかにうちの親、うさんくさい実業家と思ってたけどガチだった……。

 学園長の出したパンフレットは「若き天才賢者ルーリックが完璧に指導します」なんてことが書いてある……。


「しかも、その中には我が校の名前もしっかりと使われていてね、これで特待生は無理だ……」

「ですね。俺もそれは納得しました……」


「これ、君の親からの手紙だ。どこからか学校に送ってきたんだよ」


=====

ルーリックへ。

パパとママ、軽く破産しちゃったよ。ははははは。

また生きてれば出会える日もあるかもな。

笑って生きていればいいこともあるさ。

なお、仕送りはお前の名前を使って稼いだ中の一部だ。

パパとママより

=====


 殺すぞ。

 むしろ、お前らが生きてるうちに出会って、息の根を止めるぞ……。


 しかし、こうなると本当に退学なのか……?

 それは困る! いくら賢者とはいえ、高等部退学では大幅に働き口が制限される。


 ただでさえ、魔族との戦争が終結してから、魔法使いの存在価値も落ちているんだ。

 賢者として一番安定した働き方は、どこかの大学などの教授などになることだけど、それも高等部退学では任官資格なんてあるわけがない。


「学園長! 何か方法はないんでしょうか?」

「ないこともない……」


 よし、まだ首の皮一枚つながってるぞ。

次回も早目に更新します!

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