第7話 似た者同士
帰ってきたプラタナスは、早速授業を再開した。まるで何事も無かったかのように、平然と。謝罪なんてあるわけもなかった。
「どうしたのかねぇ?もっと集中したまえ」
「っ!?……はい」
その事に苛立った生徒の多くが不満を抱き、集中を欠いた。そしたら、プラタナスから注意が飛んでくるのだ。彼らは爆発しそうになるのを必死に抑え、返事こそするものの、結局授業は終始険悪なままだった。
「サルビアって剣だけじゃないんだな。普通、爆発魔法を一回で成功とかありえないから」
「圧縮する感覚が剣を作る時に似ていた。それにザクロ先輩なんて、剣の先に纏わせていたじゃないか。あれはまだできん」
「まだって辺りがなぁ……天才め」
授業の雰囲気は良いものではなかったが、内容となれば話は別。非常に濃く、なおかつ実戦的で実用的。祖父から教わった範囲の延長線上にあった内容だったが故に、しっかりと理解できたサルビアはいい笑顔である。
「やぁ。ザクロにサルビア君。授業はどうだったかな?」
他の生徒達がそそくさと出て行く中、残っていたザクロとサルビアの前にプラタナスが歩み寄る。どうやら、感想をねだりに来たらしい。
「素晴らしいです。相手の手の内を知れる上に、強い奴とも戦える授業なんて」
「爆発魔法は術者の膜をすり抜けることで有名な魔法だ。その影に隠れてか、圧縮から解放に移行するまでの段階に極めて集中力を要することはあまり知られていなくてねぇ」
「知った今なら、そこが狙い目と分かります。相手が熟練の魔導師ならば別ですが」
魔法をほぼ攻撃に使用しないサルビアだが、それでも血肉となる授業だと彼は思った。当たり前のことだが、長所と短所を知りたいのならば、説明を聞くよりも実際に使ってみるのが一番である。
「内容はまぁ、今回は良かったですけど……先生。あれじゃまた人が減りますよ」
しかし、ザクロは内容そのものよりも授業の態度を批判し、心配する。元より受講生は減少の一途を辿っていたというのに、今日の騒ぎは実に良くない。お試し期間で、授業を選び直しやすいのも逆風である。
「そうかい?やはり人違いの相手を殺しかけたのは悪かったかねぇ?」
「いやそれが一番やばいですけど、授業放り出した方ですよ。謝った方がいいんじゃ」
多くの者に授業を取ってもらうには、へり下るとまでは行かなくても、迷惑をかけたら謝るような常識的な対応が必要だ。
「誰かのご機嫌取りに頭を下げるつもりはない。さすがに、ルピナスには謝ったがねぇ」
しかしこの男。本人以外に謝らず、頭を下げるなど絶対に嫌だと言い張る始末。それを聞いたザクロは、深いため息と共に肩を落とす。
「彼女、帰ってこなかったけど、その様子ならちゃんと話できたんですね?」
もうどうしようもないことは置いといてと、ザクロが気にしたのは例の少女のこと。送り出しはしたものの、プラタナスの日常の態度を思えば不安しかなかった。
「もちろん。この上なく綺麗にまとまった。放課後に私の手伝いをし、私と共に訓練をすることになったとも」
「げっ!?そこまで?まじっすか!」
「まじだねぇ」
だが、その不安は外れたらしい。追いかけた彼は満面の笑みで、万事丸く収まったと報告したのだ。
「で、先生。ザクロ先輩、依頼ってなんですか?」
話も一息ついたところで、サルビアが疑問を差し込んだ。授業中もずっと彼の心で鎌首をもたげていた疑問であり、ザクロとプラタナスが今の今まで忘れていた疑問でもあった。
「あー……それはだなぁ……」
「私とザクロ君との模擬戦……要は、ほぼ殺し合いの練習だぁね」
言い淀んだザクロは、話を合わせてくれと視線で意思疎通を図る。それに頷いたプラタナスは、ものの見事に裏切った。
「そんな楽しそうなこと、なんで黙ってたんだ先輩」
「いやいや。今日連れてきたのは、それに誘う意味もあるって言ったろ?」
「いい提案じゃあないか。それは嬉しい。早速決めていこう」
サルビアにジト目と殺気を向けられ、ザクロはあっさりとベロニカを見捨てる。むすっとしたままのおぼっちゃまに、ばつが悪そうな薄情者。そんな二人に手を差し伸べるのは、とてもいい笑顔で勝手に話を進めていく自己中だ。
「依頼は週に……そうだねぇ。ザクロと同じく2回としよう。授業があった日の放課後だ。報酬は金でいいね?」
「もちろん、受けさせて欲しい。正直、戦えるなら金は別に」
条件を聞く前から、サルビアは承諾すると決めていた。強者と合法的に戦い、強くなれる機会など、見逃すわけにはいかない。彼としてはむしろ、こちらからお金を支払いたいくらいだった。
「いや、貰えるものは貰っとこうぜ。お前がいらないって言うなら、ベロニカさんにあげたりすればいいし。な?」
「……なら、そういうことで」
だが、ザクロに言われて思い出した保護者の顔のシワの深さに、報酬は賄賂にすると決意。しっかりいただくことで、話がまとまった。
「授業の見学なんてもう全部明日に回すので、今からやりませんか?」
「すまないが、今日はルピナスと話をする予定でね?お休みにさせてもらうよ。ああ、今日の分の報酬は出すから、安心したまえ」
「そ、そんな……安心できない……」
早速契約を履行しようとしたサルビアだったが、ルピナスとの話し合いを理由に拒絶され、屍のようにうなだれる。働かずに金を貰えると聞けば、普通は喜ぶはずなのに。
「俺が言えたことじゃないけど、6限目と7限目の体験授業はサボるなよ。適当に選んだら裸で踊ることになっちまうぞ」
「……そんなものがこの学校にあるのか?仮にも名門と聞いたのだが」
その上ザクロから放たれた追い討ちに、サルビアは初めは嫌そうな顔を。途中からは純粋な疑問を顔に浮かべ、さすがに冗談だろうと半笑いで確認する。
「民俗学を体験する授業である。ちなみに、女子の裸目当ての男子が10割で最悪の授業だった」
「出たのか」
「思い出させんな……魔物を神様として祀ったり、仲間として扱う文化だとか、部族独特の薬だとか、そういったところは面白かったけど……」
だが、その授業は実在した。なにせ、出たことがある生き証人が死んだ目で語っているのだ。しかしまぁ、邪な目的は果たされなかったようで。ちなみに踊る時だが、脱ぐのは希望者のみである。
「私とザクロでオススメの授業を紹介しよう。一番は当然私の授業だが、それなりに光るのもいくつかあるからねぇ」
「となると時間割的に、今から受けられるのは魔法学の基礎が6限目だな。さっき言ってたやつ。ってやべぇな!早く行かなきゃ間に合わねぇぞ!」
「ふむ。ならばその後にある魔法陣作成も受けたまえ。教師はあのパエデリアだが、有用な魔法陣と速く正確に書くコツを教えてもらえる」
「……ありがとうございました。今度の依頼は、ちゃんと戦ってください」
「ああ。次の授業の放課後は、きっちりやるとも」
教師と先輩という頼れる二人から受けた方がいい授業を教わったサルビアは、始業のベルに追われて、目的の教室へと急ぐ。去り際、次は戦ってもらえるよう、丁寧な念押しも忘れずに。
「む?アレは……」
移動の最中、たまたまだった。階段を登ってふと、窓の外へと目を向けたサルビアが捉えたのは、裏庭方面のある木陰。座っている少女と、彼女の側に立つ二人の人形。
「魔法の練習中か。あるいは……やめておこう」
こっそり隠れて特訓中ならば良い。だが、そうでないなら。いわゆるぼっちというやつで、人形しか友達がいないというのならば、それは。さすがのサルビアでも、気を使う案件だ。
「窓の外見てブツブツ言ってどうしたよ。可愛い子でもいた?」
「……いや、なんでもない」
可愛い子はいたが、見て見ぬ振りをするべきだろう。そう判断した彼はザクロを誤魔化し、さっき見た光景を記憶から消し去ろうとするのだった。
「ああ。よかったです。やっと合流できました」
「ベロニカ。遅かったな。何かあったのか?」
6限目が終わり、サルビア達が教室から出てすぐのこと。廊下の奥から、暗い顔をしたベロニカがやってきた。眠いのか、胸に下げられた「来校許可」の札ごとふらふらと揺れている。
「パエデリア先生と学長先生と少々お話を」
「なるほど。それはその顔になるわ」
少々どころの時間ではなかったのだろう。学長の長話の被害に遭ったことを理解したザクロは頷き、同情の目を向ける。
「あと1限だが、一緒に来るか?疲れてるなら、もう帰って寝ていろ」
「そうしたいのは山々なんですが……万が一に備え、ご一緒させていただきます」
「真面目なのはいいけど、無理しない方がいいんじゃ」
その疲れを表現する顔たるや、サルビアもザクロも思わず心配して気を遣うほど。しかし、ベロニカは仕事ですからと乾いた笑いと、今にも閉じそうな瞼で拒絶。共に授業を受けると言い張った。
「今言うべきか?刺激で目が醒めるかもしれない」
「いいのか?刺激でぶっ倒れても、俺知らねえぞ」
ゆらゆらと歩くベロニカの前で、コソコソと肩を寄せ合って耳元で話し合う二人。話題はもちろん、ベロニカの許可なく受けた、プラタナスとの訓練の依頼について。割と真面目な殺し合いの練習であり、ザクロもそれなりの怪我を何度か負っている。たかが依頼というわけでもないのだ。
果たして、それを今話しても良いものか。もう少し後にすべきではないか。胸中で二つの考えがぶつかり合い、その勝者は。
「目が覚めれば僥倖。気絶したら休ませてあげられるから、言った方が良いのではないか?」
「おー。そうだな。気絶も睡眠も似たようなもんだよな」
サルビアとザクロなりのズレた気遣いによる、言っちまおうという判断だった。
「ベロニカ。そう言えば、例のプラタナス先生と週2で戦闘訓練することになった」
「そうですか。分かりました」
「えっ?反応それだけ?」
意を決して打ち明けて、返って来たのはとてもあっさりとした肯定。正常な思考も出来ない程、疲れているのだろうか。驚いた2人が突っ込むが、
「ええ。まぁ。都合も良いので」
「よく分からんが、後でやめさせるのは無しで頼むぞ」
ベロニカが止まることはなかった。身体はふらつきながらも、目は至って真剣そのもので、正常な思考による判断だと分かる。
「……」
だが果たして、何が都合が良いのか。それはイマイチ、分からなかった。
7限目。朝からお叱りを受けたパエデリア先生による、魔法陣の授業だ。実魔応用より人は多いものの、6限目の魔法学基礎よりは少ない。
「なに?貴方達も来たの?この授業、難しいって評判だけど」
その中に、朝からいきなり殺し合いになりかけたプリムラの姿があった。というか彼女とサルビアで、ザクロを挟む席だった。
「いやぁ。それでもこれは受けた方がいいかなって。むしろそっちが受けるの意外というか」
人が少ないのは、この授業の評判故である。身体強化など簡単なものならともかく、魔法陣とは描くのも覚えるのも大変な代物。多少値は張るが、買えばいいというのが世の認識だった。高過ぎる大魔法などほぼ必要ないものであるし、適性によっては自前の枠で使えばいい。
「意外って何よ。これ受けないやつ、馬鹿でしょ?」
だがしかし、その認識は戦場に生きる者達にとってはぬるま湯に過ぎた。戦地で多種多様な魔法陣を自作できることは、大いに価値がある。とは言ってもまぁ、まだ十代の学生に戦場の意識を求めることがまず難題か。
「最初はそんなもんだろ。入ってすぐこの授業取るのって大概物好きだし。派手な実戦型に行きたがるのが普通だって」
一年間の学校生活で賢くなった上級生達が、この授業を受けているのだろう。例その1とその2の言う通り、新入生の割合は大体2割ほどである。
「……アレは」
見渡したサルビアだけが、後ろの端の席に座ったフードに気付いた。ほぼ間違いなく、プラタナスの授業で逃げ出したルピナスだ。そのことをザクロに伝えようと彼は思ったのだが、
「それはともかく、脳筋……いえ、脳剣と近くの席なんてごめんなんだけど、遠くに離れてくれない?」
「なぜ俺達が離れなければならない。貴様が移動すれば済む話だろう」
プリムラから叩きつけられた理不尽な要求に、全部吹っ飛んだ。鼻を鳴らして両断したサルビアは腕を組み、むしろ深く座り込んで不動の意を示す。
「嫌よ。私が退くなんて」
「じゃあこのままだな」
「いや、もう退こうぜサルビア?張り合ってもいいことないって。幸い席たくさん空いてるし」
「嫌だ」
互いに譲らぬ爆発間近の雰囲気に、危険を感じたザクロがサルビアの腕を引っ張るも、彼は断固として席を立たず。子供かと内心で呆れ返った先輩は、保護者の方を仰ぎ見るが、
「予想通りになっちまった」
ベロニカは爆睡していた。そして間の悪いことに、ちょうど授業開始の鐘が鳴って、パエデリアが教室に入ってきた。
「起立、礼」
横目で火花を散らす2人に挟まれ、起立していないベロニカを見て、ザクロは頭を抱えたかった。
「パエ公、めっちゃこっち見てるよ」
授業開始から数分。ベロニカの寝相が教室から注目を集め始めていた。だが、無理もない。
「こんな姿勢だったら誰だって気になるわ。早くなんとかしなさいよ。てか、あの教師もちゃんと注意しなさいよ。私や貴方達のことを散々叱りつけたくくせに」
学長の注意から逃亡した自分を棚に上げたプリムラだったが、発言の内容は至極真っ当である。ベロニカの姿勢はそれはもう、面白かった。必死の虚しい抵抗の残りだろう。机に座り、背筋を伸ばし、首を曲げて白目を剥いている姿はいっそ敬意すら覚えてしまう。
「なに?子供は叱れても大人は叱れない忖度教師なの?」
「さっきパエデリア先生とも話したって言ってたし、知ってんだろうな」
それでも注意されない理由。きっとパエデリアも、ベロニカの寝不足っぷりを知っているのだ。故に声をかけづらく、そのままにしているのだろう。それとまぁ、ベロニカが生徒ではないというのも、あるのかもしれない。
「俺、ベロニカさんと外で待ってるわ……どっちにしろ、この授業は取るって決めてるし」
「……すまない」
「早く運んでちょうだい」
この状況を見かねたザクロは、ベロニカを連れ出すことを決意。サルビアにはしっかりと体験をして選んでもらおうという、先輩の気遣いの行動だった。
「その代わり、俺がいないところで絶対に問題を起こすなよ」
「……ああ」
「そうね。ま、この授業の時間くらいなら」
さすがのサルビアも思うところはあったし、プリムラも多少感謝しているのだろう。2人は頷き、ベロニカを担いだ彼が教室の外へと出ていくのを見届けた。
「……」
「……」
空いた席を挟んで、前を見ながらも内心で睨み合う。負けてたまるかと双方筆を取り、授業の内容を記し始める。
「と、このように。魔法陣を使って先に発動の感触を確かめることで、魔法を習得しやすくする方法は非常に効果的であり、一般的だ。故に、魔法陣の存在しない魔法は他の魔法に比べ、習得の難易度が高くなる」
ベロニカがいなくなり、晴れやかな表情となったパエデリア。サルビアは彼の声を一言一句聞き漏らさず、要点だけを記していく。体験授業ということもあり、基礎の基礎から。今は魔法陣の利点についての説明だ。
「例としてあげるならそうだな。傀儡魔法辺りか」
「えっ?」
プリムラと張り合い、研ぎ澄まされていた集中がぷつりと途切れた。思わず顔を上げ、例として黒板に書かれた文字を何度も読み返す。隣の勝ち誇った表情のプリムラなんて、目に入らなかった。
「しかし、この逆。魔法陣しか存在しない魔法も、極めて稀だが存在する。要求される魔力や必要な適性が高すぎるもの。そもそも適性が存在しないとされているものなど––」
言っている内容は基礎ばかりで、サルビアでも理解できる。彼が分からなかったのは、そこではない。後ろを振り向き、ルピナスの席を探す。だが、彼女はもうそこにはいなかった。
「あの女……」
もしも、傀儡魔法に魔法陣が存在しないというのなら、先ほど窓から見えたあの景色は一体、何だったのだろうか。
7限目の終わりの鐘が鳴り、ぞろぞろと部屋の外へと排出される生徒達。その列には加わらず、椅子に残る生徒の中に、2人はいた。
「ふふーん。どうしたの?その汚い字列に所々欠けた陣。もしかして、授業の内容?へー。読めないんですけど?その陣、発動できるんですかぁ?」
「……」
あれ以降、サルビアは授業に集中できなかった。その結果がこれ、しっかり授業を血肉に変えたプリムラに煽られている今だ。一々ノートと陣を目の前でチラチラ揺らされて、うざいことこの上ない。
「ん?あの2人は」
サルビアが目を逸らした先、たまたまいたのは、プリムラの取り巻きだった生徒達。一瞬プリムラの方を見たもののすぐに顔を背け、そそくさと教室の外へと逃げていく。
「やっぱり棒を振り回すだけのゴブリンには、勉強なんてできやしないのね」
「お前、友達いないだろ」
彼らを見たサルビアはピンときた。思ったままを口にして、それを反撃の矛とする。
「……は?あんたもいないでしょ?」
「眼は水晶か?ザクロがいる」
刺された少女は一度固まり、殺気で魔力を揺らめかせる。しかし、その反応はむしろサルビアの気を良くさせただけ。おまけに叩き込まれた反撃に、彼女は呼吸さえ忘れたようだ。
「はっ。切り捨てたのよ。弱かったし、甘い汁吸おうとしていたの見え見えだったから。ザクロだって、きっとそうじゃないの?」
「……」
「あんたって自覚ないんだろうけど、性格悪いわよ。周囲を蔑ろにして自分ばかりの、超自己中男だもの」
それでも、プリムラは負けを認めなかった。一拍置いた彼女が返した刃は鋭く、核心を貫いていた。ザクロの心情は分からないが、サルビアの性格に関してだけいえば、事実だったから。
「そうだな。だが、別にいい。甘い汁を吸いにきたやつだとしても、戦いにはなる」
「いい心がけね。私も似たような心境よ?」
だが、そんな事実がどうしたというのだ。空が青いと言われ、傷付く人間はいない。サルビアだって、己の性格の自覚はある。
「余計なものは、全部削ぎ落とさなきゃね」
甘い汁を吸いにきたのなら、吸わせてやろう。ただし、その代わりに役に立て。欲望を満たさせろ。友も仲間も踏み台に、最強を目指す二人。
「いずれ貴方も、削ぎ落としてやるから」
「望むところだ」
決して認めないだろうが、二人は似た者同士だった。まるで自分に言い聞かせるようなところまでそっくりで、故に、互いに知らぬふりをした。




