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黄泉物語  作者: 満月 蒼
1/2

ようこそ、黄泉国へ。

私は普通の、本当に普通に部活して、おしゃべりが好きで、そんな高校生だった。


過去形なのには訳がある。とりあえず現状を言うと




真横に死体が転がっています。




え?って思うまもなく突然光に覆われて―










気がついたらそこは少なくとも現世じゃなかった。


「おい罪人よ。お前がどうして黄泉の国に落とされたか分かるな」

突然前に現れた狐が私にそう問いかけた。

黄泉…?

それって、死者の国!?

私は慌てて答えた

「分かりません。ってか死んでません!」

「自分の罪も分からぬとは…お前は田沼小太郎、そうだろう?」

「違います!誰ですかそれ!私の名前はまお!七海舞桜です!」


自分の名前を名乗ってから、その狐はびっくりした顔をして私をじろじろ見た。



そして、顔を青ざめた


「なんてことだ…私としたことが、罪人を間違えるなんて…!ま、マオさまに知れたらどうなることか…」

マオ…?

私のこと…ではなさそう。

狐がぶつぶつ呟いていると、狐の真後ろに私と同じくらいの青年が現れた。


「俺がどうしたというのだ、狐よ」

「…!マオ様…!」

「そやつ、罪人ではないぞ。何をしておるのだ、俺の仕事を増やしおって」

その青年はただの青年ではなさそうだった。言うなら、閻魔様みたいな…

「ああ、俺の名は閻魔魔王えんま まおだ。お前が察するように、俺は現世で言うところの閻魔大王だ。」

心読まれた!?怖い!


すると、マオ様はこちらをじろじろと見てきて―


「なるほど。俺の花嫁を連れてきたのだな。現世から連れてくるとは、なかなかな」

「花嫁ぇ!?冗談じゃないわ!私死んでない死にたくない!!」

マオ様の言葉を遮って私は叫んだ。

するとマオ様はくつくつと笑って

「何、冗談だ。だが誤りとはいえ黄泉に来てしまった以上、帰すのには少し手続きが面倒なのだ。しばし時間もかかる。そして、言いにくいことなのだが―」


マオ様は一旦言葉を切った。


「今この黄泉国ではな、現世で言うところのお家問題、なるものが起こっている。俺は若くして黄泉神ヨミノカミになったからな、それを気に入らぬやつがあの手この手と俺を陥れようとしている。そこに花嫁の存在をちらつかせれば、俺の地位は強固なものとなる」


何かと思えばたかが御家騒動。私の知ったことじゃないわ。


私が無言で睨むとマオ様ははぁっと溜め息を着いて言った。



「…分かった。現世に帰るまででいい。花嫁のフリをしてはくれぬか。お前の望みは叶えよう。出来る限りの配慮もする。どうだ」

「仕方ないわね…他にあてもないし。フリだけよ。ちゃんと現世に早く返してね」

私が溜め息を着きながら言うとマオ様は顔を綻ばせ

「ありがとう」


その笑顔が少しかわいくて、不覚にも少し、ほんの少しときめいてしまった。

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