遺跡を発見!
とりあえず悪魔は退散したようだ。
ルスは頭を押さえて立ち上がった。
頭部には掴まれた時に爪で切られたのか出血していた。
「暴走した人形たちは…?」
「見た感じだと機能停止したみたいね」
辺りでは暴れていたはずのロボが倒れていて、この街の治安維持を行っている衛兵がロボを確保していた。
―――前回の戦いでディオネは悪魔戦では使えないと思っていたが…俺よりも戦えるじゃないか…
自分の力を驕っていた。ディオネもあの竜神族が選んだ最高位の魔術師の一人だ。
「このロボは…処分されるのかしら・・・」
悲しげな表情でディオネが呟いた。
「さぁな?面倒はもう御免だよ」
ルスは興味なさそうに答えた。
「とりあえず、シノハラのところまで戻るぞ」
「ぬしらか…」
シノハラは笑顔で出迎えた。
「まぁ、入れ。お前さんたちのお陰で彼女達の暴走は抑えられた。」
「処分されたりとかしないのですか?」
ディオネがおずおずといった感じで訊ねた。
「処分?そんなことワシが認めんわい!」
「そうですか・・・よかった」
「これから最後の一体を作る。これまでは今回のように暴走したときに備えて悪魔と戦うための最低限の装備しか搭載していなかったが今回は最高傑作をつくるぞ」
シノハラは気合十分といったところだが心配は残る。
「それって、そいつが支配されたらお終いじゃないか」
ルスが指摘するとシノハラは答えた。
「それはネットワークのセキリュティが不味かったんだが今後はこの最後の個体からしかアクセスできなくすればいいんじゃよ」
「それが難しいことではないのか?その個体に侵入されたらまた暴走を意味するし…」
「なに、最高のウイルスバスターが見つかったからこうするのじゃよ?」
「見つかったとは・・・?」
ディオネが問う。
「いや、あなた方ですけど?」
シノハラは口調を変えて言った。
「は?」
―― 翌日 ――
一つは片手に魔方陣を浮かばせている影、もう一つは手にした紙を見ながらそれについていく影、そして、最後尾を軽くスキップしながら歩く影があった。
場所は広大な高原。辺りには岩山が幾つかと草木がある。
「しっかし、この袋もスゲーよな!あの砲撃棒が入っちまうんだからなー」
ルスは遊びで作った魔法陣を片手に沢山入っちゃう袋をまじまじと見ながら言った。
「ふん、そんな重いの本当に使うのかしらね?捨てたら?」
ディオネは砲撃棒なんか使えないと思っているようだ。メモをしてある紙を見るだけで此方を一瞥もしない。
「わかってないな~。科学の凄さをなぁ?セフィラ?」
ルスは新たな仲間の方を向いて聞いた。
「私はその科学で作られたものであるから科学を贔屓する訳ではないけれど素晴らしいと思う。」
セフィラはスキップをやめ、ルスに小走りで近づいてくるとそう言った。
セフィラとは昨日、シノハラが即席で完成させた最高傑作の彼女達の一人であった。
白髪で赤い目を持つ、全身が白い肌の少女だ。
―――全身とはいっても見てないけど
その時に戦闘実験も見た。
対悪魔自動制御S203複数体を相手にセフィラは全てをあっという間に倒した。
ルスの魔力解析で作られた剣を両手に戦っていた。
魔力での身体の強化がなくてもルスが魔力で強化したときと同等かそれ以上で動けていた。
―――どんどん俺が必要なくなってるような気がしてきた。
しかも…
「ルス、右方向より四速歩行の魔物が急速接近中。交戦準備を」
このように高性能レーダーが積んであるのでルスの『ウィンド リーディング』の必要性が問われることとなった。
ルスは砲撃棒を取り出した。
撲殺モードよりは短い砲撃モードで構えた。
「確かに生体反応があるな」
サイトを覗きながら呟く。
すると画面にはLOCKと表示される。
ルスは引き金を引くとバックブラストはない。
その光弾は砲口から発射されると一旦、上昇してからその魔物へと飛んでいった。
そして、直撃すると衝撃で辺りに砂ほこりが舞う。それが晴れると魔物は黒焦げになって倒れていた。
「これでも・・・使えないというのか」
「もう一体、逆方向より接近中」
「うらぁぁぁぁ」
そっちの方向にディオネが炎の槍を投げた。
炎槍はサイの形をした魔物に当たると炎で包み込んで黒焦げにした。
「こんな調子では今日中に辿り着けるのですか?」
「街を出発したのが昼で遅かったからな…」
セフィラの言うとおり今日中はギリギリといったところだろう。
「てか目的地にある武器は何なんだ?」
「刀と呼ばれる…勇者の物らしいわね。」
「刀ね・・・そんな物を作らせてたのか…」
ルスは確信した。間違えなくこの世界で語られている勇者というものは日本人であるようだ。
または・・・日本を知っている人。
結局、日が暮れるまでに辿り着けなかったがその刀が眠っているという遺跡のある山のふもとに辿り着いた。
「(てか、何でこのグループは女性ばかり増えていくんだ?)」
《それはアンタの女運が悪いせいかしらね?》
レティシアが答える。
ここらには洞窟のような場所は存在しないようだ。
だから今晩はテントを張って一夜を明かすことにしたがテントは一つのみ。
ディオネは女性でセフィラもロボとはいえ、形は女性であるため必然的にルスがテントを譲ることになる。
「うう~、さみーな」
寝袋に包まりながら丸くなる。
しかも、月明かりが結構明るくて眠ることもできそうにない。
「つーか、アレは月なのか?」
「あれの名称は月で間違えはありませんよ?」
セフィラがルスの横に立ち、見下ろしていた。
「何だ?眠れないのか?」
「私には休眠というものが必要ありませんので」
「そーなんだ」
ルスはそう言って眠ろうとする。
「貴方は女性がこんなに話して欲しそうにしているのに無視するのですか?」
「生憎、今は眠ることができてねーんだよ」
するとセフィラがゴチャゴチャ言ってきた。
そのせいでこの夜は眠ることができなかった。
<夜明け>
「アンタ、眠そうね・・・」
「・・・うっさい。」
セフィラに絡まれた後は結局、一睡をすることすら叶わなかった。
ルスは目の下に隈を作りながら寝袋から這い出てきた。
「散々でしたね」
「誰のせいだよ」
ルスは握りこぶしを握って睨みつけた。
「とにかく、食事にしましょう。遺跡の探索にどのくらい掛かるかは分からないわ」
「「了解」」
ディオネが仲裁をするのでおとなしく手を引いて、食事にした。
食事を終えるとすぐに出発した。
山道を登る。遺跡は山の上にあるのだ。
不思議なことに魔物も動物も何もいなかった。辺りには植物が生い茂っているというのに動物などはいないという奇妙な状態であった。
立ち止まって森の様子を見る。
「こんな状態で植物は育つのかよ…」
≪これはそういうのは関係なく、魔法で制御されてるみたいね・・・≫
「(よく分かるな・・・)」
≪霊体だから分かることもあるのよ・・・≫
そんなものかとルスは納得して山道を登った。
約30分後
山道の先には開けた場所があった。そこに古い形がパルテノン神殿のような建物があった。
「ここが・・・勇者の武器が眠る遺跡ね」
「行くぞ!」
ルスたちは遺跡内へと入って行った。