暴走ロボたち
「俺の魔法を解析?」
そうじゃとシノハラは答えた。
対してルスはしかし…何故?と質問を投げかけた。
「魔王が復活した。この町も勿論、支配対象となるじゃろうが我が軍には悪魔に対抗できる力がない。」
「それで…何で俺の魔法なんだ?俺は魔術に関しては未だに初心者だぞ?」
「技術は関係ない。君の特殊な魔力が必要なのだ。」
≪なるほどね…確かに光属性なら悪魔とは渡り合えるだろうな≫
「それで、どうじゃ?」
「ん、なら見返りはあるのか?」
ルスはニヤリと笑い、そう言った。
≪うわ、悪役みたいな顔…≫
―――黙れ!むしろ、正義だ!
ルスはレティシアを黙らせて話を続けようとする。
「いくつか武器が欲しい。まず、軍の兵器を見せていただきたい。」
「…わかった。こっちへ来い。」
そう言って案内されたのは研究所の奥にある広いスペースだ。
そこには多くの研究員が武器の実験をしていた。
「ここにある武器が最新鋭だ。」
「ほ~う、わかった。」
見て回ると銃や迫撃砲、対戦車ロケットのようなものが沢山あった。
現代兵器と同じものが沢山あった。
そこで目に付いたものがあった。
「アレだ、アレを見せて欲しい。」
「いいじゃろう」
シノハラから受け取った品は棍棒とロケットランチャーを合わせたような武器だ。
ロケットランチャーのような強力な武器が欲しくて見せてもらおうと思ったのだが説明によると…。
「この武器は棍棒形態と大砲形態がある。名を砲撃棒。なんと小型の転送装置も付いていて瞬時に装備できる。」
「そうか、使わせてもらおう」
砲撃棒を振り回す。
『砲撃形態』
弾は必要なく、術者の魔力を放つものだ。
引き金を引くと思ったより少ない反動と共に赤い弾が発射される。
ターゲットに着弾すると辺りを炎で包み込んだ。
「気に入った。これを貰おう。解析でも何でもしろ。」
「よかった。…ありがとう」
「何、まだ成果も何も出てないだろ。」
ルスはそう返した。
それもそうじゃなとシノハラは笑った。
「では、こっちじゃ」
付いていくと更に奥へと入った。そこは小さな小部屋で中央に魔法陣が床に刻んであった。
壁には御札が大量に貼ってあった。
「この札も勇者が考案したのか?」
一枚、剥がしとってシノハラに見せて問う。
「勝手に剥がすでない。そうじゃ。前代勇者の考案した魔道具じゃ」
「そうか。ふ~ん…」
模様は陰陽の描かれているよく見るようなものではなく、完全に別のコッチの世界にしかないものだろう。
そして、指示を受け、魔方陣のど真ん中に胡坐をかいて座った。
ここに座っているだけでいいらしい。
暫くすると魔法陣が青白く光りだした。
そのまま、座っていると光っているのは消え、魔方陣も消え去った。
「終わりか?」
「うむ、後は彼女達にこれを応用した装備を導入するだけじゃ…」
「そうか…成功するといいな。」
そう言って、ルスは研究所を後にした。
「遅い!どこに行ってたのよ!」
図書館に戻るとディオネがプンプンに怒って待ち構えていた。
辺りは既に真っ暗になっていた。
「ん、わりぃわりぃ。見つかったのか?」
「うん。一応、全て抜いてきたわ。」
ディオネは腕時計をいじった。すると時計から紙面のホログラフの様なものが現れ、地図を表した。
「ここが一番近くね。……ガウス山。ここにあるわ。」
「ふ~ん、そうか…。じゃ、早速、明晩に発つか」
「了解。」
――― 明朝 ―――
「何だ…コレ」
街に出てみると惨劇が広がっていた。
ビルは崩れて、辺りで戦争が巻き起こっていた。
その暴れている奴とはルスの力を付け加えたロボたちであった。
―――何故だ?
「ルス!これらはアンタの話していたロボじゃない!?」
「そのようだ…ここを頼む。シノハラとあってくる!」
風の魔法で飛ばして、シノハラの研究所に向った。
研究所は真っ暗だ。朝日で照らされてはいるがそれでも暗かった。
「シノハラ!居るんだろ!?」
「ああ…ここじゃ、助けてくれ…」
シノハラが縛られて倒れていた。ルスが紐を解くとシノハラはPCに向った。
「この街中の彼女達が暴れている…。」
「それはわかってる。原因は?」
「魔力による干渉だ。彼女たちは特殊なネットワークで繋がっている。それを介して同時に暴走させてるのだろう。」
一人の女が街中を走っていた。
長い髪を揺らし、マントをヒラヒラ舞わせて元凶を探していた。ルスと同じ格好である。
「魔力の位置を補足、そこに向かうわ」
≪頼むぞ。レティシア≫
ルスはレティシアと身体を入れ替えて行動していた。
「元凶はアレよ…」
電波塔を走りながら見る。そこには黒衣の女が立っていた。
どうやら、自分は高みの見物を決め込んでいるようだ。
「奴ね!」
「残念ながら貴方の思い通りにはさせません!」
彼女たちが集まっていた。
手には白く光る魔術で作られたと思われるソードが握られている。
≪おいおい、それ俺の魔法でつくったやつじゃねーの?≫
「く、数が多いわね…」
レティシアは歯噛みした。ここまで来て邪魔が入るとは思っていなかった。
ナイフを懐から取り出し、構える。
一斉に彼女たちは襲い掛かってきた。
右から迫る光剣をナイフで逸らし、左から来るのを彼女の手を左手で掴み、投げる。
彼女は背中を地面に叩きつける。
休む隙もなく今度は二人同時に跳躍して、襲い掛かってくる。
レティシアはバックステップで下がり、二人の首を左手刀、右はナイフの柄で叩き倒す。
しかし、その二人は倒れることもなくレティシアを左右から押さえつけた。
前方からは別の彼女が走ってきた。
白く輝く剣が眼前まで迫ってくる。
しかし、彼女は下がった。
それは突如、空から飛来してきた炎によって阻害された。
ディオネが降り立った。
「まったく、アンタには女装趣味もあったの?」
「違う。これには深い事情が…」
≪ちょっとマテェェェェ≫
―――その言い方はまずいだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「嘘…アンタ、サイテーね」
ディオネが絶対零度的な視線は此方にぶつけてくる。
レティシアは涼しい顔をしているがルスは射抜かれて絶句している。
「いいわ、見なかったことにするわ。」
―――それって女装癖の誤解は解けてないよな!
「…ありがとう」
―――レティシアァァァァァァ!莫迦やろぉぉぉぉ!それもう認めてるじゃねーか!
「行って。奴を倒して。それまで私は耐えるわ」
「うん」
そう返すとレティシアは走って行く。
両手にナイフを構えた。
新しく、ナイフを仕入れておいた。
小型の投擲用ナイフもベルトに括り付けている。
悪魔がレティシアの目の前に降り立ってきた。
レティシアは右、左と時間差を少し空けて、横に薙ぎ払うように斬りかかった。
悪魔は難なく避けた。避けるだけではなく、こちらに向って反撃もしてきた。
悪魔の攻撃によってレティシアは腕が折れた。
「ふぐぅぃ…イッタ…」
『 ブラックブレイカー 』
空を覆うほどの魔法陣が現れる。
その瞬間、空の朝日による白みが黒くなり、月が現れた。
―――何だこれ!?
「…ブラックブレイカー…こんなものを使うなんてね…しかも、夜に変えるなんて12魔竜クラスかしら?」
「…第5の柱、アルクラだ。よろしく、そしてさようなら。」
感情を感じさせない声でアルクラは語った。
≪レティシア!代われ!≫
その瞬間、黒い光と共に衝撃が身体を襲う。
砂煙が上がり、木々は揺れ、地面から悲鳴が上がり裂け、風が強く吹き荒れた。
砂煙を一つの影が切った。そこから出てきたのはルス・セルシアであった。
「はぁはぁ、死ぬとこだった…」
「現れたか…ルス…」
背後にアルクラが立っていた。
振り向くと同時にルスの頭を狙って背中に掛けてある黒剣を振った。
間一髪で頭を逸らし、ルスは避けた。
がアルクラがそのまま突きに出た。
ルスは身体を逸らし避けるもわき腹を浅く斬られた。
そのまま、アルクラは横に黒剣をなぎ払おうとしたがルスは剣を抜いて、止めた。
刃がわき腹を抉るも痛みに耐え、剣で黒剣を叩き落とし、下がった。
「はぁはぁ、やはり悪魔相手にはコレか…レティシア、行くぞ!」
「…ガッテンガよ」
頭に感覚の記憶が流れてくる。
―――キタキタ…行くぜ
「うがあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ルスは大声を出す。
アルクラは驚いたようであったがコレが何であるかを理解したようだ。
「面白い」
「その余裕はいつまで持つかな!?」
地面を強く蹴って6m程の距離を一歩で行くようなスピードで向っていく。
左フックをアルクラに当てた。
『 ライトニングスピア 』
電撃の槍がアルクラを貫いた。
「ほほう、いいねいいね!」
アルクラは笑っていた。自らの胸を電気の槍で貫かれていても余裕の笑いを浮かべている。
ルスの頭をアルクラは掴んだ。
「面白いな…」
「放しなさい!」
ディオネがアルクラの背後から両手に炎を纏って動けば焼くというような雰囲気を出している。
「バカ!逃げろ!」
しかし、その台詞はディオネの気に触ったらしい。
遠まわしにテメーは役立たずだと言われたようなものだから当然だと思うが。
ルスはダメだと思ったがそれは間違えであった。
「アタシの本気を見せたるわぁ!」
辺りを無差別に燃やしていく。
「な!」
アルクラはルスの頭を放すと退いた。
「貴様は最高位の魔術師か!?」
アルクラは驚きディオネに問う。
「炎の高位魔術師…ディオネよ!」
「ふむ、これは俺の分が悪いようだ…今宵は退散しよう」
アルクラは指パッチンをした。
すると霧のように消えていった。