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戻った!戻ったよ!・・・・・へ?ナニこの人?


身体を乗っ取られて一日が過ぎた。

「わぁ~、かわいいわねこの服。」

≪何で、こうなった?≫

「うるさい男は嫌われるわよ」

そう言って、俺の身体は服のショッピングを続ける。


≪はぁ~≫

深いため息を吐く。そして、昨日のやりとりを思い出す。





「私は・・・・・レティシア。貴方のもう一つの人格。」

≪俺は多重人格・・・そうだと言うのか!?バカらしい≫

「そうよ・・・・ルス・セルシア」

≪何故、その名を?≫

「私は貴方の記憶をある程度は理解しているわよ。」

≪じゃ、そろそろ戻してくれないか?≫



・・・・・・・嫌です。

返事はそうだった。シンプルな返事だが俺をものすごっく、不安にさせた。

このまま、一生、俺の身体が利用されるというのか。

あ、悪夢だ。


そして、たった今、気がついたが俺の身体が女になっていた。

まず、胸が発達していて顔も女性風になっているのに鏡を見たときに気がついた。

≪ちょっと、どういうことですか?レティシアさん?≫

「あら?そろそろ、シンクロが済んできたみたいね」

レティシアは体中を見る。


≪シンクロとは・・・・?≫

「身体とのシンクロ率が上がってきたのよ・・・。」

≪それは・・・・俺にとってよくないのでは?≫

「それは大丈夫よ。」

そう聞いて俺は少し安心したが身体に戻れるかは分からないので不安はすべては拭いきれない。


「さて、次の場所に向いましょ!」

≪身体をかえせぇぇぇ(切実)≫

その後は酷かった。買い物に連れまわされた。最も、酷かったのは風呂屋に連れて行かれたことだった。


「あの娘、可愛くない?」

≪お、俺に聞くな!≫

精一杯、目から意識を遠ざけながら叫ぶ。ここで気がついたが見たくないものはレティシアが見ていようとも見ないで済むことが出来るようだ。

≪てか俺の身体で風呂に来るなど、どんな神経してんだよ!≫

それでも話はまったく聞いて貰えなかった。




そして、時は経ち。日が暮れて宿屋まで来ていた。



≪そろそろ、戻してくれないか?≫

「ヤダ!と言いたいけど・・・・私には限界みたい。」

≪限界?≫

「この身体は貴方の者よ。私がこの身体を乗っ取るのには魔力をもの凄く消費するの」

≪なるほどね。それで魔力?がもう限界なのか?≫

「うん。ま、満足したわ。ありがと」

すると身体に光が纏い。元の男性の体型へと戻った。


「も、戻った!」

≪ふぅ~、こっちのがやっぱり、楽わね。≫

「成仏したんじゃなかったのか!?」

≪人を霊みたいに言うなぁ!・・・・死人には違いはないけどね≫

どうやら、厄介なものが取り付いてしまった様だ。


とりあえず、今晩はもう眠った。


―― 翌日 ――


会計はレティシアに手伝ってもらった。

街中を歩きながらレティシアと話す。

「そういえば、お前は俺に何時から取り付いているんだ?」

≪あたし?あたしはあんたの世界に居た頃から憑いていたわ≫

「は?前は聞こえなかったお前の声が何でここで聞こえるようになったんだ?」

≪分からない・・・。≫


「そうか、もう一つ。コッチの世界のことよく知ってるだろ?どうしてだ?」

≪アタシはこっちの世界の住人よ≫

「?何故、俺らの世界にいたんだ?」

≪分からない。わからないわよ。≫

「そうか、なら暫くの間、ガイドを頼むぞ」

≪わかったわ≫


そして、街中を歩き始める。

とにかく、あのドラゴンの美少年が言っていたとおりにするしかないな。

帰るあてがない。


「さて、どこに行こうか?」

≪まず、その格好をどうにかしなさいよ。目立ってるわよ≫

・・・・確かに現代っこ名服ををこっちに来てまだ、見てないな。

「じゃ、服を買いに行くか」

≪金は魔王軍の黒装束から奪っておいたわ≫

「見てたよ」

そして、金の入った布の袋を取り出す。小銭しかないから会計が大変だろうな。RPGゲーで1000ゴールドを払うのにも数えないとならないか大変だと思う。


「え・・・と、この金ぴかのが1クルド?」

≪そうよ、銀が1ソルブで銅がラメよ。ちなみに、1ソルブは25ラメよ。そして、1クルドが100ソルブ。≫

「そうか、暫くは教えてもらうことになりそうだな。」

≪仕方ないわね。≫


そして、服屋である【キョーンショップ】

変わった名前の店だな。これが店の前での感想であった。

中は綺麗な普通の服屋であった。売っている物は服や靴であった。

≪金はあるから、その付呪されてる靴にしなさい。≫

「付呪・・・・?」

≪ま、それは昨日、しっかり見といてあげたんだから買いなさいよ≫

「へいへーい」


そして、靴とマントが付いた服を買う。

レティシア曰く、マントは便利だそうだ。マントに包まって眠ったりできるらしい。

ま、そんなわけで某RPGゲーム3の旅人の服と同じデザインのものを購入した。

やはり、見知らぬ地で旅に出るのは避けられない展開になったようだ。


「てか、俺、剣術とかお前ほど出来ないのだが・・・・」

≪ん~、貴方が強くなると私の出番がなくなるじゃない≫

どうやら、そっちの戦いの訓練とかは手伝う気がないようだ。


仕方ないか・・・そう思って町の外へ向う。

「やっぱり、実践だ!」

そして、町の外にいる盗賊や魔物退治をすることにした。

さらっと言ったがこの世界には魔物がいる。

コウモリに腕と足が生えたような【ガーゴイル】や液体が集まって出来たような【ワーター】、人型で素早い【ナック】と結構な種類の魔物が居る。


外に出てきて30分、町の近くの遺跡へとやってきた。

この遺跡から出てくる魔物が絶える事がないらしい。

ということで戦闘じゃぁぁぁぁ!俺は血が見たいぞよ。


まず、手始めに三匹の群れで飛んでいた【ガーゴイル】を見つけた。

魔物の強さを調べるのにはもってこいだ。

まだ、強さなど分からないがコイツではっきりする。


「うぉぉぉぉ」

手始めにナイフを投擲した上手いこと羽根に傷を付けることが出来たのかガーゴイルは地面に落ちた。

剣を抜いてガーゴイルの首を刈る。残りに二匹が飛んでくるがガーゴイルの死体を投げつけた。

一体、死体に当たって墜落。ルスは走って落ちたところへと向う。

起き上がろうとしているのを蹴り飛ばす。


ゴロゴロと転がった先に跳躍。降りると同時に剣を突き刺す。落下時の力も乗せた攻撃でガーゴイルは死んだ。

もう一匹は此方を警戒して降りてこない。

≪仕方ないわね。いいこと教えたげるわ≫

レティシアがそう言うと身体の自由が利かなくなった。


「またか!ってアレ?」

≪今回は丸ごとは憑依してないわ≫

「そうか・・・・何を教えてくれるの?」

≪魔法攻撃よ≫

「魔法?出来るか!?」

≪勿論よ、貴方が連れてこられた理由は魔力が膨大だというのもあるでしょう≫

「そうか・・・早速、頼むぞ」

≪りょーかい?≫


身体が動き、腕が空のガーゴイルへと向けられた。

≪この感覚を覚えときなさい≫


身体の中を何かが流れるような感覚を感じる。

『 ライジングショット 』

手から電撃がガーゴイルへと飛んでいく。ガーゴイルは墜落する。

≪今よ!≫

「よし、うらぁぁぁぁ!」

飛び立とうとしていたガーゴイルを真っ二つに斬る。


「やったぜ」

≪よくやったわね・・・・!?≫

「どうした?」

≪逃げなさい・・・・早く!≫

「何だってんだ?」

≪ああ・・・・≫

レティシアの言う通りに走り出すが目の前に黒い光が現れ、行く手を阻まれ、止まる。

≪戦うな!逃げなさい!≫


「お前が・・・ルスか?」

「・・・・だったら?」

厳つい顔の黒衣の男がルスに問うのに素っ気無く答えた。


「死んで貰う!」

黒衣の男は魔方陣を作成。手に巨大な剣が現れた。踏み込んで飛んでやってくる。

「な!?」

とんでもない速さで飛んでくるので驚いた。


剣を抜いたが間に合わず、肩を深く斬られた。

「ぐっ!!!」

肩を抑える。傷が深い。先日の奴らにやられた時よりも深く斬られてしまった。

≪逃げなさい!ムリよ!≫

「むりだろぉぉぉ!」


叫びながら森の中を走る。

少しは身を隠しながら進めるとは思ったがそうでもなく、難なく黒衣の男は走ってきていた。

すると森を抜けて公道へと出てきた。

人通りが多い。商人、旅人、衛兵が沢山居る。

『 ライジングショット 』

森の方に向って2,3発を同時に撃つ。

しかし、黒衣の男はやってきた。足止めにもならなかったようだ。

その異様な気配に衛兵は気付き、非戦闘員を退避させようとした。


「待てコラ!」

黒衣の男が叫んだ。

ルスは走り続けた。衛兵が狙いが俺だと知って止めに入るが巨大な剣でバラバラにされた。

「あぁ・・・・」

通行人を虐殺している。この光景を見て俺はキレた。


「おわりだぁぁぁぁ!」

黒衣の男が剣と突き刺そうと突っこんできた。

それを剣を抜き、自分の横へと逸らす。

「な、何だと・・・」

「ふざけんなよ、お前の狙いは俺だろ」

黒衣の男は剣を引いて攻撃を続けようとする。しかし、ルスが剣の刃と柄を両断する。

黒衣の男は剣を捨て、ルスの顔を殴った。

「ざ、ざまぁみやがれ!」

「何だ?今のは?」

ルスは物ともしない。すこし、小突かれた程度にしか感じなかった。

恐らく、本来は重い一撃なのだろう。


「消えるのはテメーだ!」

そう言って、剣を振るい、黒衣の男の頭のてっぺんから振り下ろした。

「あ、あぐ。」

すると黒衣の男は黒い槍のようなものを出現させルスの腹に突き刺す。

それを受けて口から血が吹き出てくる。

≪ちょっと、しっかりしなさい!≫

レティシアの声が聞こえるがとても遠いものに感じる。





頭が真っ白になる。



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