天使の翼と幸せの国
地上に舞い降りた綺麗な少女は青年と出会った。
彼女は天使で、幸せの国へ行く翼を手に入れるために地上に降りてきたのだ。
最初は驚いた青年だが、彼女の美しさや可憐さの前ではそんなことは些細なことだった。
幸せの国へ行く翼は愛と幸福によってできるらしい。少女は青年に一目惚れしていた。無論青年も彼女の事を一目見たときから好きになっていた。
それはまるで魅了の魔法のような、そんな邂逅だった。
愛し合って1年余り。彼女は幸せの国へ行く翼を手にいれた。幸せの国へ到達することは、天使にとっては非常に名誉のあることであり、その国での幸せを保証される物凄いところらしい。
しかし青年は本気で少女を愛していた。その気持ちは最早捨てきれなかった。
彼女は天使だ。天使と人は相容れないもの。本来なら触れることも出来ない遠い存在なのだから。
青年は悩みに悩んだが、好きだと言う気持ちは消えなかった。
たとえ天使であってもずっとこのまま一緒に居て愛したい。
青年は事もあろうに幸せの国へ行く翼を折ってしまったのだ。
青年は自分が仕出かしたことを少女に謝った。謝って済まされる問題ではないが、それでも彼は彼女に謝った。
しかし少女は泣くわけでもなく、ただ微笑んでいた。
「幸せの国へは行けなくなったけど、多分貴方と居れるのが一番幸せなんだと思う」
以後彼らは幸せに暮らした。やはり少女にとって幸せの国は今やこの世界で青年と暮らすことだったのだ。
そう、翼は失われてはいなかったのだ。