そして魔王は、勇者を殺した
最強と言われる神、ギゼウス。
その力には魔族、人間、他の神々すらも膝をつくのみだった。
数千年後、自身が邪神、暴神と言われる世界に転生をした最強神は、生きとし生けるものすべてに復讐を誓う物語。
魔王は、勇者を殺した――――
今からはるか昔、神話といわれる時代に最強と言われる神がいた。
その神は全能神である天空の王ゼウスを父に持ち、その力は父をも超えるとさえ言われた。
この時代世界は神界、魔界、人間界にわかれ、魔界と人間界は下界といわれていた。
「よく来た、魔王。久しぶりだな」
「このたびは直々の呼び出し恐悦至極に存じます」
「魔界はどうだ」
「神々のお力によりもうしばらくで人間どもを駆逐できそうです」
「我々の力は絶対だ。当たり前ですらない。これが秩序だ」
魔王と呼ばれた男は玉座に座る男の前に膝間づき、目線を下に向けている。
「そんなにこわばるな魔王よ。人間が我々への捧げものをしなかったのが悪い。それも秩序だ」
「はい。我が魔王軍がてこずっていた人間の連合軍を一撃で撃滅なさるのをみれたのは生涯忘れません」
「ぬるい、死んでも忘れるな。だがそろそろ本題に入ろう。我が力を欲するか?」
「はい。憎き人間のため、我が同胞を救うためお力をお借りしたいです」
「我が力には代償が必用だ」
「心得ております。毎度の奉納物に加えさらに今回はこれをお持ちしました」
魔王がその手を空にかざすと紫の魔法陣から小さな剣が現れる。
「ほう、これはヘパイストスの作品にも負けず劣らずの剣だな」
「魔剣<雷神貫剣>こちらをささげさせていただきます」
「あぁ?」
その言葉を吐いた瞬間に神から勢いよく絶大なオーラが出される。
並大抵のものならば、いや下級の神でもそのオーラに体が耐えられないだろう。
ただ、この魔王は強い。並大抵の神ではかなわない力を持っている。
だが、この魔王の前にいる神はさらに強い。
オーラにより壁や柱に入った傷は魔法なのかすぐに修正される。
「口を慎め。この剣が我への献上品だと?お前たち基準としては"いい剣"だと評価したまでだ。お前は今、我の機嫌を損ねた。そうだな、代償として魔族の命をもらおう」
「は、はい。我が命でしたら神、ギゼウス様のものに」
「お前程度の命、我の前では蟻と同然だ。そうだな、5万人ほど魔族を減らすか」
「な、なんと……。それではお話が……」
「このようなカスみたいな剣でも試し切りは必要だしな」
ギゼウスと呼ばれた神が、魔王が献上した手を剣の方に延ばすと剣が空を切りその手に収まる。
「お前は見込みがある。減らすのは雑兵どもの数だ。明日までに1万、来週までに4万を用意しろ」
「私の命はおささげします。ですから私以外の魔族には手を出さないでください」
「魔族ごときが神に命令するな。<黄金の鎖>」
魔王を黄金の魔法陣が囲み黄金の鎖が魔王を拘束する。
「魔族ごときが思い上がったことを!少しは見込みがあると思っていたが残念だ」
ギゼウスが<雷神貫剣>を振りかぶった瞬間、
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ」
ギゼウスの周りに様々な色の魔法陣が重なり合い電撃、炎、氷などさまざまな魔法がギセウスを襲った。
「あぁぁぁぁぁあ。なんなんだこれは。神に、私に下等な魔族の攻撃など効くはずがぁぁぁぁ」
神である我に攻撃を当てるには神の力が必用なはず。どの神が裏切った!今すぐ消してやる!
ギゼウスの魔法が解かれた魔王はすこしよろめきながら立ち上がる。
「さすがの最強神もこの剣には勝てませんか。ですが神であるあなたを殺すのは私だけではありません!」
全身鎧に包んだ人間がギゼウスの前にどこからともなく現れる。
「神、ギゼウス。お前は人間と魔族を利用しすぎた。お前の気分1つで魔族も人間も数えきれないほど死んだ。ただ気分が悪いからというだけで俺から家族も奪った。この勇者ヘラクレスがその恨み、この一撃に込める!」
ギゼウスは驚いた。
いくら勇者とて転移はギセウスの城では使えないはずだからだ。
「いい顔ですよ、神。ですが終わりにしましょう」
魔王はにやりと笑いながら勇者とともに魔王に向かっていくつかの魔法陣を展開する。
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
恐らくこの魔法陣の中で1秒でも耐えられるのは神界、魔界、人間界でほとんどいないだろう。
それをギゼウスはすでに1分近く耐えていた。
叫び声をあげながら、痛みに耐えながらその思考を加速させる。
依然としてギゼウスは魔法陣の中で苦しめられていた。
だが、この本当にやっかいなのはこの攻撃ではなくこの剣自体なのだ。恐ろしいほどのスピードで魔力が吸われている。
防御障壁も張ることができない。そして動くこともできない。
しかたない、あれを使うしかなさそうだ。
「お前らの思う通りにはせぬわぁぁぁぁぁぁ」
ギゼウスの周りの魔法陣を囲むように黄金の魔法陣が出現する。
「死にぞこないの邪神が!やるぞ勇者!魔族と人間の力を合わせるぞ!」
「はい!」
「魔族の力をこの手に現れよ、獄炎轟」 「人間の、いや、お前によって消されたすべての人たち想いをこの一撃に掛ける!聖光滅」
「「聖魔合体魔法滅神闇聖」」
魔王と勇者の手からすさまじい量の魔力が放出される。
しかし、ギゼウスはかろうじて展開した魔法陣でなんとか防ぐ。
「我はお前らに復讐する!神の力は絶対だ。この神を超えた神であるギゼウスが死ぬことはない!」
そういうとギゼウスは最後の力を振り絞り城を覆い隠すほどの魔法陣を展開した。
「まだそんな力を隠していたのか」
「ですがあの剣から出される魔法陣からは動くことはできません。もうすこしです!」
「「はぁぁぁぁぁぁあ!!!!」」
魔王と勇者から出されるギゼウスを襲う光が大きくなる。
「魔王、勇者お前らのことは転生しても忘れぬ。絶対に殺す。いや、殺す程度ではすまぬ!過去、未来全てを変えてお前らの血縁いや、種族皆殺しにしてやる」
「なに!?転生だと?まさかそんな……」
「我が作った魔法だ。だが、本当に使うときが来るとはな。見ているんだろ!魔王と勇者の後ろにいる神ども!お前らも全員殺す。俺を裏切ったものは俺が消滅させてやる!!」
ギゼウスを囲む黄金の魔力が勇者と魔族の魔法を打ち消すように輝き始める。
「我がいない一瞬の平和に溺れるがいい。転生魔法」
黄金の光がギセウスを包み込む。
勇者と魔王はその光から目を逸らし、目を開くことができるよう時にはギゼウスの姿はなかった。
残されたのは崩壊した城と魔王と勇者、それと主人の帰りをまつ玉座のみ。
そして魔王は、勇者を殺した――――
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