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90話

 今回の事件の罪状は、実のところカザミジよりもスヅハの方が重い。というのも、全ては彼女の付き合っていた男達に問題があった。

 一見大人しそうに見えるスヅハであったが、それはあくまでも、花街の酒楼という高い収入を得やすい仕事に就くための仮の姿。実際の彼女は先程見たような荒れた性格をしていて、付き合いのある男達は、どいつもこいつも碌でも無い者達だという。

 一人は本来出回ってはならない非合法な薬の売人で、それを花街で売り捌こうと画策していた。

 もう一人は賭博場を営む男。花街にも賭博場はあるが、それはちゃんと御上の許しを得て運営している合法的なものだ。しかし、その男の賭博場は違法な賭け金、イカサマ、非人道的な取り立てと、無許可で営業をしている闇賭博場を営んでいたのだ。その男はスヅハを使い、花街の客を引き摺り込んではイカサマで無一文に仕立て上げ、更に執拗な取り立てで追い詰めて、最後はその命までも奪ってしまうこともあったという。

 そしてもう一人はあの、入れ墨の男だった。あの男は、所謂何でも屋であるらしい。しかし、金が貰えれば何でもするという男で、最初はスヅハが何度別れようと言っても別れてくれないカザミジから逃れる為に雇ったらしい。

 その男とスヅハが、カザミジにありとあらゆる嫌がらせをしている内に、スヅハはその男と男女の仲になったという。そうして、その男の手伝いをスヅハもし始め、その最初の手伝いが境の街にいた花らしき女の仕事で、花街の男客をその女の元へ斡旋していたというのだ。

 その女とは、当然クスナのことである。男はクスナの好みではなかったのか、将又別の理由か、クスナの餌食にはならなかったようだ。

 そして、スヅハと入れ墨の男が上手く情報をひた隠しにすることで、花街でもクスナの存在には気付いていても、真相に辿り着けなかったのだという。

「そんな…」

 ロイドは愕然とした顔でその話を聞いていた。

「残念ながら全て事実なんですよねぇ、色々と調べましたから」

 ルネの表情を見る限り、それは事実のようだった。


 ロイドと別れた後、ふらりと一人消えたルネは、どう時間を潰そうかと考え、ロイドとは違う独自の経路であの二人の事を調べていたのである。

 するとまぁ、出るわ出るわ。叩けば叩くほど埃が舞う干された布団のように、大小様々な罪状が噴出したというのだ。

 カザミジは所謂小悪党程度のものであったが、問題はスヅハであった。

 どうしてもこういった歓楽街とは、表側が明るく栄えれば栄えるほど、影は色濃く、深くなり、其処には非ぬ者達が集まる。番人という仕事柄、そちらの方にも一応、目を付けてはいるわけで、ルネはそちら側で聞き込みをしていたのだ。

 そうして浮き上がったスヅハと裏社会の繋がり……。といっても、スヅハにしてみれば、たまたま付き合った男がそういった男ばかりだったのかもしれないが、最後は自らもそちら側に転がり落ちているので、情は無用だろう。

 そもそも、そんな闇を嫌い、そういった者達を全て排除しようとしているシライトにとって、スヅハのような存在は決して許せるものではない。

 ある程度の話を聞いて、更にクスナの件にも多少なりとも関わっていたと分かってしまえば、もう彼女を助けようとする者も現れないだろう。

 まぁ、ルネにとっては全てどうでもいい事ではあるので、後は野となれ山となれ、だ。

 そして、そんな調べ物をしている最中、ルネはロイドの危機にも気が付いていた。しかし彼が直接助けたりすることも、あのヒダルの結界に訪れることもなかったのは、面倒だったの一言に尽きる。

 もしあの件をルネが解決し、ロイドを救ったとしたら…アイーザの怒りの矛先は確実にルネに向く。そうして二人が殺し合いになったとて、ルネはアイーザに勝てない。頭脳戦ならまだしも、実戦となればルネにはアイーザに太刀打ち出来る手段が無いのだ。

 ルネは馬鹿ではない。無駄な争いは避ける。それも、自分に勝算がなければ尚の事。そもそも、生き残るため、やむを得ない共食いだというのならまだしも、そんなくだらない理由で互いを食い合うなど愚かでしかない。ルネはそんな無駄な事に体力を割きたくない。

 だからこそ、アイーザにロイドの事を伝え、ルネはカザミジとスヅハの件をある程度調べ終え、後はシライト達に放り投げたのである。

「え?でも、クスナの事があるなら、もう少し調べたほうがいいんじゃ…?」

「あぁ、それなら問題ありませんよ?調べた結果、本当にただ利用されただけのようでしたし…」

「後は花街(此方側)の問題だからね。僕達の手でこの問題を片付けなければならない」

 もし、アイーザとルネがクスナの式を放置していたら、あと一歩、気が付くのが遅ければ、花街は白い遊技場ではなくなっていたかもしれない。そして、花街の事は花街の者たちが正していかなければならない。だからこそ、花達を纏め上げるシライトが先頭に立たなければならないのだ。




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