7. 目玉とお化け
「唐傘お化け」より、難易度がアップするのが「提灯お化け」だ。赤い破れ提灯に目玉が1つ。ときどき口を大きく開けて、長い舌をだらりと出す。
風もないのに揺れていると、より不気味さが増すが、それを演出するにはさらなる技量が必要だ。軒下の一点だけで体を支え、ゆらゆらと自然に揺れる提灯を表現するのは、絶妙なバランス感覚と演技力が必要だ。
まずは、軒先に擬態して、人間が通るのを待つ。人がやってきたら、ぼんやり光って揺れる「提灯お化け」にパッと変身する。
「ギャアァーーー!」と悲鳴が上がった瞬間、すっと軒先に同化する。
「ちょ、提灯のお化けだぁーーー!消えたーーー!」
と、人間はパニックになる。
このときの「化け具合」を見て、仲間が演技を批評する。
「今夜の手足の出し方、ちょっと唐突だったね」
「目玉の動き、もう少しゆっくりのほうが自然だったかも」
「揺れ具合は秀逸!あれはカンペキだったよ」
こうして、擬態の精度だけでなく、「間」の取り方や、怪しげな「空気感」までも演出しようと、試行錯誤を続けた。「お化け」芸は奥が深い。やがて、仲間から喝采を浴びるようになると、舞台役者になったような気がした。
「唐傘お化け」にしろ、「提灯お化け」にしろ、どうやら人間は、「目玉が1つ」を怖がるらしい。しかし、一方で「子供」を可愛がる習性がある。
それでは、もし「1つ目玉の幼い子供」が現れたら…?可愛がるのか、それとも怖がるのか??
そんな素朴な疑問から、全国各地で「一つ目小僧」実験が行われた。各地の仲間たちが、それぞれ思い思いの一つ目小僧に化け、人間の反応を調査したのである。
その結果は……圧倒的に「怖がられた」!
超音波で届いた報告のすべてが、「驚かれた」「逃げられた」「泣かれた」ばかりで、「可愛がられた」という報せは無かった。
どうやら、人間の感情は「カワイイ」より「怖い」の方が勝つらしい。
そこで今度は、「目玉の数を増やせばどうなるか?」という疑問が持ち上がり、その実験も各地で行われた。最初は、おでこに目玉を追加して「三ツ目」。これも、人間たちは怖がった。
ならばと、背中や腕にも目玉を増やして、挑戦を続けた。目玉が10個、20個、30個…。最終的には全身目玉だらけの「百目」も試された。
が、結果は変わらず。「腰を抜かした」とか、「卒倒した」とか、「念仏を唱えだした」とか……。そんな報告ばかりが各地から相次いだ。
どうやら人間にとって、目玉の数は「1つ」でも「たくさん」でも、不安になるらしい。「目玉は2つ」でなければ、彼らは恐怖を感じるようだ。




