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200才「お化け」のため息  作者: 小鎌 弓


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20/20

20. 現在そして未来

 人間たちの、戦後の復興は目を見張るものだった。

 道路はアスファルトで舗装され、水道・電気などが整備され、近代的な住宅が立ち並ぶようになった。駅には「街頭テレビ」が置かれ、プロレス、大相撲、野球などの中継に、大勢の人々が群がっていた。私も、夜中のうちに街路樹に登っておいて、上からテレビ中継を観戦した。以前、「街灯ラジオ」から聞こえていたのは「軍歌」や「軍の情報」ばかりだったが、「街頭テレビ」が流す映像は、平和で面白かった。ラジオの時も、どうやって音が出ているのか不思議だったが、テレビはもっと不思議だ。人間の発明力は素晴しい。

 それから、高層ビルやマンションが、次々とそびえ立つようになった。時には渋滞が起こるほど、自動車が増えた。いたるところに街灯が灯り、ビルには電飾の看板が光り、24時間営業する店も現れた。人々の暮らしは劇的に変わった。

 だが、私たち「お化け」にとっては、それが「終わりの始まり」だった。

どぶも井戸も塞がれ、草むらはアスファルトやコンクリートになって、隠れる場所が減った。気密性の高い住宅が増え、そっと忍び込んで「食事」することすら、難しくなった。また、夜でも町は明るく、24時間ずっと人間たちが活動するので、夜中の移動も、もはや至難の業となった。

 それだけではない。カメラが普及し、人々が自由に写真を撮ることも、私たちには脅威だ。少し前までは、観光地だけ、カメラを意識すればよかったが、今はどこでも気が抜けない。特に最近の人間は、何でもない所でも、すぐにパシャパシャと写真や動画を撮りたがる。これでは、どんなに細心の注意を払っても、たまに写真に写りこんでしまう。

 そんな写真を見て、「不自然な手がある」「変な生きものが映っている」だとか、「あるはずの物が映ってない」「これは、心霊写真だ」と 人間たちが言っているが、あれは、ほとんどが私たちの仲間のせいだ。レンズの視界に、うっかり入ってしまったり、あるいは故意に入ったり…。

 実は、故意に移りこんでいるのが多いようで、超音波での「いたずら」の報告を、いくつか聞いた。


 最近は高性能な監視カメラも増えたので、四六時中、カメラに撮られる危険性が出てきた。夜中の監視カメラの映像に「変な生き物が映った」「変な動きは、宇宙人に違いない」と、人間たちが騒ぎ、「フェイクか?」「本物か?」と議論されているようだが、あれの一部は、私たちの仲間が、奇妙な姿でわざとカメラに映りこむ「いたずら」をしているのだろう。江戸の頃、お化け・幽霊を演じていた「いたずら」好きな仲間が、今は未確認生物を演じて、人間を驚かしているのだろう。

 昔は、そんな「いたずら」を見て笑う超音波の声がよく聞こえたが、最近は超音波の笑い声を聞いていない。演者にとって、観客の居ない舞台は、さぞ物足りないことだろう。


 「誰か、この近くに居ますかー?」

 何度か、聞いてみたが、最近は返事がない。どうやら、この辺りには仲間がいないようだ。普段、単独で暮らすとはいえ、返事がないと少し寂しい。寿命まで、まだ200年ほど生きられるはずだが、この先、仲間に会えるだろうか。少し不安である。もしかして、我々「お化け」は、「絶滅」のカウントダウンが始まったのかもしれない。

 ところで、日本は今、人口が減少しているらしい。100年後には、現在の3分の1になると予想されているようだ。AIの発達による生活様式の変化や、天変地異、戦争などにより、さらに人口が減る可能性もある。200年後も、私の「主食」は人間の生命エネルギーのままだろうか。ひょっとして、人類の「絶滅」のカウントダウンも始まってしまうのだろうか。

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