15. お伊勢参り
それほどまでに人々がこぞって行きたがる伊勢神宮を、この目でぜひ見てみたいと思うようになった。
とはいえ、人間に見つからないよう、真夜中の3~4時間で移動できる距離は限られている。私たちの移動速度では、伊勢神宮にたどり着くのは容易でない。何かいい手段はないかと考えていたら、ふと駕籠に目が留まった。これに乗れば、行けるかもしれない。
まずは駕籠を調査しようと、真夜中に少しずつ移動して駕籠屋の縁の下に行った。連日、縁の下から観察したところ、駕籠の底の裏に張り付けそうだと確信した。
ある夜、私は暗闇の中、駕籠屋の倉庫に侵入し、体を薄くして駕籠の底の裏に張り付き、朝を待った。陽が昇ると、駕籠を担ぐ男たちが出勤してきた。こんな明るい時間に、こんなにも人間に近づくのは初めてだ。私は見つからないように、ドキドキしながらじっと底に張り付き、息を殺した。
やがて、荷物を持った旅人が駕籠に乗り込んできた。駕籠がふわりと浮き上がり、私は落ちないよう、必死に底にしがみつく。
進み始めると、結構、激しく揺れた。この宿場町を出て、しばらくした辺りから、あまりの揺れに気持ち悪くなってきた。生まれて初めての「乗り物酔い」だ。それでも、落ちないように必死に底の裏に張り付いたまま耐えた。
なんとか、目的の宿場町に着き、駕籠は停まった。中に乗っていた旅人も酔ったようで、青い顔でフラフラしながら降りて行った。駕籠の乗り心地がこんなに悪いとは知らなかった。だが、まだ真っ昼間なので、このまま駕籠の裏に潜み続けるしかない。しばらくすると、新たな旅人が乗り込み、再び駕籠がふわりと浮き上がり、進み出した。また、揺れと気持ち悪さに耐えながら、懸命に底にしがみついた。
そして夕暮れになるころ、宿場町に到着した。が、周りを見て愕然とした。なんと、元の宿場町の駕籠屋に戻ってきたのだ。私がしがみついていた駕籠は、駕籠屋の倉庫に元どおり収められ、人夫たちは帰っていった。結局、私は一日中つらい思いをしただけで、全然進めなかったのだ。駕籠での伊勢参りを諦めたのは、言うまでもない。




