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200才「お化け」のため息  作者: 小鎌 弓


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14. かわら版

 十年ほど、寺子屋で勉強する日々を過ごして、たいていの文字は読めるようになり、地名もだいぶ判るようになった。そんなある日、街道の辻で、編笠を被った二人組が売っている「かわら板」に目が留まった。そこには、(かたき)討ち、火事や地震などの天災地変などの時事ネタが載っていた。夕方になると、別の売り手がやって来て、奇談や妖怪などのゴシップネタが絵入りで書かれた「かわら版」を売り始める。どちらの売り子も顔を隠しており、販売し終わるとサッといなくなった。どうやら「かわら版」の発行は禁止されているらしい。

 朝、発生した火事が、その日のうちに記事になるなど、そのスピーディさには驚いたものだ。情報を入手する人、版を彫る人、刷る人、売る人…、大勢が連携しているらしい。単独で行動する私たちには、とても真似できないことだ。しかも、短時間で作っているとは思えないクオリティだった。挿絵は迫力があり、文章も非常に面白く魅力的に書かれていた。飛ぶように売れるのも納得だ。

 そんな、とても興味深い「かわら版」だが、妖怪・幽霊についての内容は、でたらめばかりだった。なぜなら「お化け」は我々の仲間のイタズラであり、祟りや呪いなどではないだからだ。まあ、我々の存在が人間に知られていないので、仕方ないことではあるが……。


 こうして、民家の天井裏や旅籠の縁の下から、「かわら版」を覗き見、街道を行きかう人々を観察する日々を、しばらく過ごした。すると、以前にも増して、旅人がやたら多いことに気づいた。人々の会話に耳を澄ませていると、どうやら「伊勢おかげ参り」が世間で大流行しているらしい。どの旅籠も、日に日に客が増えて大忙しのようだ。

 しかも驚いたことに、人間だけでなく犬までもお伊勢参りをしているようだ。伊勢参りをすると書いた紙や旅費を入れた巾着(きんちゃく)を、首のしめ縄に結び付けた「おかげ犬」が、事情があって行けない主人に代わって参拝するという。それを見た人々は、「おかげ犬」を丁重に扱い、世話をするので、犬たちは伊勢神宮に参拝して無事に地元に帰っているそうだ。庶民たちの信仰心と、その優しさに、私は感嘆した。

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