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200才「お化け」のため息  作者: 小鎌 弓


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11/20

11. 人間観察

 「お化け」を見た人間の反応を見るのは、実に興味深かった。

 驚いて悲鳴を上げる者、腰を抜かす者、恐怖のあまり失神する者がいるかと思えば、怖くないと強がりを言う者、全然平気な者など、多種多様だ。中には、怖いくせにわざわざお化けを見に来る奴もいる。怖いなら来なければいいのに……理解できない。

 観察を続けていくと、いろいろ判ってきた。人間の怖がり具合は、体の大小には関係ないようだ。かなりの大男でも恐怖でガタガタ震える者はいる。それから、年齢もあまり関係がないようだ。年寄りでも、若造でも、反応に大差はないようだ。

 怖がり方の男女差……これは、よく判らなかった。夜、外を出歩いているのはほとんどが男なので、女のデータがあまり得られなかったからだ。


 ちなみに、そのころ、茶店の縁の下から旅籠の縁の下に住み替えた。夜に「お化け」と人間の観察をしているので、日中はゆっくり寝たかったからだ。茶店の日中は人の往来が激しく、たまに小銭を落として縁の下を覗き込む客がいるので、油断できない。しかし旅籠は、朝に宿泊者が旅立った後は、次の宿泊者が来る夕方まで静かなので、安心して眠れるのだ。

 当時の日課はこうだ。日中は旅籠の縁の下で眠り、夕方、旅籠に続々とやって来る客を縁の下から観察する。夜には街道に出て、「お化け」と人間の様子を観察する。真夜中になったら、旅籠の中に侵入して寝静まった宿泊客の生命エネルギーを吸い、明け方には旅籠の縁の下に戻って眠る。


 旅籠に出入りする人間は多種多様だった。地方訛りの旅人、情報通の飛脚、客の足元を見る駕籠かき、不愛想な侍、騒がしい商人、どこか訳ありな女たち……。彼らの様子を見、会話に耳を傾けていると、人間の暮らしの裏側が見えてくるようで興味深かった。

 どうやら、人間には細かい規律があるようだ。隣近所で「五人組」という組織を作り、規律を破った者は「村八分」にするという。また、人間にはいろいろ上下関係があるようだ。武士・農民・町人などの身分による上下関係、年齢による上下関係など。男女にも格差があるらしい。結婚は本人の意思とは関係なく、家格が釣り合うかどうかを重視して年長者が決めているようだ。

 旅籠では、いろいろな人の愚痴が聞こえてくる。地元では言えない話も、旅先では言えるのだろう。なぜ人間はそんなに堅苦しい生活をしているのか?自由気ままに暮らす私たちには、理解できない。


 ちなみに、旅籠で暮らすようになって、生命エネルギーの味が人によって違うことを発見した。年寄りより若者の方がフレッシュな味がする。武士はやや苦く、農民はやや甘く、町民は香ばしい。中でも、全国を行脚する浮世絵師や俳人のエネルギーが、私には美味だった。

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