第一話 彷徨うただの屍
どこか知らない森の中。何日もあてもなく彷徨い続けた。川があったから水には困らなかった。木の実やきのこに似た食材を生で囓り、腹を満たした。つい先日まで死のうとしてたのに今は必死に生きようと足掻いている。矛盾している。頭の中はグチャグチャで、ただの屍のように、それでも歩き続けた。
何日も歩き続けると、森の中にポツンと木造の小屋が建っていた。中を除いてみると人の気配がなくホコリが溜まっていて、何年も放置されてるようだった。
「…ここで少し休ませてください。」
誰が聞いてるわけでもないけど、なんとなく何も言わずに入らせてもらうのは嫌だったので、そう言って中で休ませてもらった。
(それにしても、ここはどこなんだろう?)
なにか地名がわかるものがあればいいと思っていたが、外国語で書かれている本が数冊あった程度だった。どこの国かはまったくわからない。海に飛び込んだときにそのまま島にでも漂流したのかとも考えていたが、方角もわからない完全に森の中で辺りには海岸らしきものがなかった。
(身体が濡れていないのはなぜだ?誰かがあそこまで運んでくれた?なぜあんなところに?)
名前もよく知らない海岸の崖の上から海に飛び込んでそのまま意識を失った。なんで…
「…僕はまだ生きているんだ?」
その声は誰にも届かず、ただ誰もいない部屋で虚しく響いた。森を彷徨うただの屍は、ゆっくりと眠りについた。