表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/105

ベルティカ王国のトイレ事情 

アルノーさん視点です。この内容をエミィちゃんに説明してもらうには、無理がありすぎたため、代わりに説明してもらいました。

ほぼ、トイレの話ですので、すっ飛ばして頂いても、何ら問題はありません。

 冒険者達が語るトイレの話は、なんだか聞いてはいけない気がした為、護衛として問題無い程度に離れた。しかし、その程度で聞こえなくなる筈も無く、あからさまな会話に、こちらの顔が赤くなる。


 冒険者に憧れる娘(12歳)を持つ父親としては、もう少し慎みを持って欲しいとも思うものの、彼女達に騎士である自分の基準を押し付けるのも違うと思い、黙っていた。しかしあの発言には、あまりの衝撃に、膝の力が抜けた。


(頼むから、せめて衝立は常に使ってくれ……)



 そもそも、我がベルティカ王国では、用便をトイレ以外でするときは、必ず【()()()()()()()()()()()()()()()()】事になっている。これは、法律で決められており、【()便()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()】とみなされる。

 実際、酔っ払いがうっかり路地裏で用を足したら、二年間の強制労働の刑に処された、なんで話があるくらいだ。


 その為、自分で用を足せるようになった子供は、親から生活魔法『()()()()』を教わる。これは同じく生活魔法の『火種』と同じく、ごく僅かな魔力で使える魔法のため、大半の人が使える。もし使えなくても、小さなスコップ一つあれば、問題無い話だ。


 それにこの国の全ての家に、トイレはついている。トイレが付いていない家や部屋は、売り買いどころか、貸し出す事さえ出来ないからだ。

 おまけに街中には一定の距離で『街中トイレ』が設置されている。これは、それぞれの町内が管理しており、有料のものと無料のものがあるが、どちらも補修や新設には、国からの補助金が出るので、常にきれいな状態が保たれている。 


 便器は基本陶器製だ。内部は浄化の魔法陣が刻まれていて、形は上から見たら卵のような形の寸胴型。細くなっている方が前で、男女とも、それに腰かけて用を足す。


 便器の底には『()()()()』が入れられている。これは100年ほど前に発見された黒っぽい色の微生物で、動物の死骸や排せつ物、植物を分解してくれる、すごく便利な奴だ。どこの土の中にでもいて、特殊な篩を使って採取する事が出来る。


 もっとも、こいつは乾燥させた状態でも、10年は休眠状態で生きているため、乾燥させた物が薬屋や雑貨屋などで売られている。

 これを専用スプーン1杯分を便器に入れ、水をコップに半分ほど注いでやれば、すぐに活動を開始する。あとは月に一回、スプーンに半分ほどを足してやれば、ずっと元気に分解してくれるのだ。


 勿論、分解されても余分な水分は出るし、ヘンチョの死骸も出る。それらは便器の底の専用容器に貯まるようになっている。これはヘンチョ水と呼ばれ、少し灰色がかった水で、嫌な臭い等は無い。


 しかも薄めると肥料として使用出来るので、専門の買取業者もおり、持っていくと良い値段で買い取ってくれる。蓋付き瓶にヘンチョ水を入れて業者に持って行くのは、子供に人気の手伝いだ。


 そして用を足した後に使うのは、『()()()()』。大人の手の平より少し大きい葉で、これも、どこにでも生えている蔓草だから、みんな適当に道端に生えているのを摘んだり、庭の隅に植えたりしている。

 街中トイレの側にも、これを植えた鉢植えが必ず置かれている。


 もちろん冬場は枯れてしまうので、事前に摘んで乾燥させたものを、各家で保存している。仮にそれが無くなっても、乾燥させ、束ねた物が売られているので問題無い。


 乾燥ペラの葉は、ぬるま湯や水で10分ほど戻してやれば使えるようになる。生の葉よりもしっとりした感じになるので、我が家では年中これだ。

 使った後は、便器に放りこんでおけば、これもヘンチョが分解してくれる。そんなこんなで、街中において、トイレは一切問題がない。


 それに移動や旅に関しても、大きな街道沿いには一定の距離毎に、駅馬車や馬車旅での休憩や宿泊に使う『馬車宿場』があり、ここにも『街中トイレ』が数多く設置されている。

 これらは有料の所が多いが、飯屋を利用すると無料になったり、割引されたりするので、文句を言う者は、あまりいない。


 したがって『穴を掘って、埋める』必要があるのは、街以外、街道以外の場所だ。例えば、農作業中の農民や猟師、街道以外の道を行く行商人、そして冒険者達は、頻繁に使用する。

 勿論、我々騎士や兵士も、野外演習や登山演習の場では、『穴を掘って、埋める』しか無い。しかも、座らずに中腰で用を足さねばならない。これは、入隊したての者が最初にぶち当たる、試練でもあった。


 一応衝立は用意されているが、全員分には程遠いため、女性騎士のためにも、男共は極力、使用せずに済ませるため、よけいだ。


 しかし先日、ハウレット商会から団に新商品の案内が届いた。あれが軍や騎士団に導入されれば、野外でのトイレ事情は変わるかもしれない。それにダンジョンも、もしかしたら……


 今、ダンジョンに置かれた木箱を、不思議そうに見つめる少女を見ながら、思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ