モブ令嬢の企み 1
転生した伯爵令嬢サンドラ・ブランシ嬢の視点です。
やっとこさ、乙ゲー要素が出て来た。後書きに乙ゲーの設定を、載せています。
転んで頭を打って前世を思い出すなんて、ベタもいいとこだけど、思い出したわ!
庭の木の根っこにつまづいて、思いっきり転んで地面に激突。目が覚めたらベッドに寝かされていて、自分が日本人で、乙ゲーが大好きな中学生だったってことを思い出した。そして、ここは大好きだった『想い出も幸せも、君と共に……』略して『オモキミ』の世界にそっくりなことにも、気がついた。
やった、異世界転生!あるのね、ほんとに。
でも、そうなると、私は死んだってことだ。
お父さんとお母さん、悲しんだろうな。5年生で難病発症して、その後はずっと入退院を繰り返していて、楽しみといえばマンガと、ゲームだけだった。
治療は嫌いだった。特に点滴のあとは、だるくて動けないし、気持ちが悪くて何も食べられなかった。あっちこっちが痺れたし、髪の毛も抜けて、一年中、ニット帽を被らないといけなくて……それでも新しい薬の効果に一喜一憂する両親を見ていると、もう、治療したくないとは言えなかった。
(最後の方はあまり覚えてないけど、お父さんとお母さんに、ちゃんとありがとうって言いたかったな……)
ちょっと悲しくなる。もちろん、今のお父様やお母様のことも大好きだ。それに。
鏡を見ながら、フワフワの髪を引っ張ってみる。オレンジがかった金髪に、水色の瞳はまるでお人形のようで、我ながらかわいいと思う。パジャマとニット帽が日常で、オシャレとは全く縁がなかった前とは違って、今はオシャレし放題なのが嬉しかった。
あー、それにしても伯爵令嬢サンドラ・ブランシ(7歳)なんてヒロインでもなんでもない、ただのモブだ。せっかく転生出来たのに、ただのモブ。
あっ、そうよ!モブが異世界チートで成り上がったり、気がつけば、攻略対象と仲良くなったりする漫画もたくさんあったから、私もそれを狙えばいいのよ!
まずは知識チートよね。やっぱり『リバーシ』かな?あとは『フライドポテト』とか、『マヨネーズ』よね!お父様に言わなくっちゃ!
それと、忘れないうちにゲームの内容を書き出しておかないと。できるだけイベントは押さえたいもの!それに、私の一押しの彼は攻略対象では無いから、うまくいけば彼と仲良くなれるかも!きゃぁー!
とりあえずノートを持ってきて、広げる。
(最初はやっぱり攻略対象よね)
鉄板の王子様、第一王子で銀髪、紫の目のアドリアン・グエン・ベルティカでしょ、騎士団長の息子で金髪で青い目のエドガー・ロックベール、宰相の息子で公爵家嫡男でもある亜麻色の髪に水色の目のロラン・ベルガルド、宮廷魔術師の息子で、赤毛で緑の目のフィリップ・バルテ、そして暗殺者で毒使いの妹がいる、白髪で灰色の目のヤンの5人。
あと、隠しルートで攻略可能になるフェンリルを従えた闇魔法使いで、黒目黒髪のダミアンも入れれば6人よね。
でも、忘れていけないのが、一押しだったマキシムよ!彼はエドガーの親友で、朱のメッシュが入った黒髪に、ライトグリーンの瞳がとってもかっこよかったのに、攻略対象ではなかった。
ユーザーの人気も高く、何とかして彼のルートが開かないか頑張ったユーザーの嘆きが、攻略サイトにあふれていたもの。私もその一人だけど。
マキシムは幼いころに出会った初恋の少女が、事故で亡くなったため、その思い出をずっと引きずっていたんだけど、何とかして私がその少女になれないかしら?少女といつ出会うんだっけ?確かエドガーの回想シーンで出てきたはず……思い出せ、私!
そうよ、確か王都で第二王子の誕生祭が開かれていた時で、エドガーとマキシムが二人で護衛を連れて町に遊びに行った時に、ひったくり事件が起きるのよ。
ひったくり犯が二人組で二手に分かれて逃げたので、マキシムたちもそれぞれ追いかけて行くんだけど、マキシムは途中犯人をで見失うのよね。で、その時にその少女が現れて「こっちよ」て言って彼の手を引いて、ひったくり犯の所に案内するの!
「でも、そんなこと、私にできるかなぁ?なんか怖いし、危なそうだし……」
あ、でもこれって、もしかして『吊り橋効果』って言われるやつじゃない?実際ひったくり犯を追いかけなくても、そんな状態で手をつないで走れば、恋に落ちるんじゃ?
よし、それを目指そう!とりあえず第二王子の誕生祭よね。たしか来月だったかしら?ふふ、今から準備をしとかないと!
後はヒロインよね。確か名前はアリス・ベレット。水色の瞳にストロベリーブロンドの髪で、病気がちの母親に代わって幼いころからパン屋で働いていたけど、そのお母さんが亡くなったのを機に、王都にやってくるのよね。そして、魔術学園の食堂で働くことになるんだわ。
そこに、王子と側近たちが入学してくるんだけど、新学期早々、王子を狙った暗殺者が学園に侵入、王子が怪我をしちゃうのよね。それをアリスが目の当たりにして癒しの力を発現させて、あっという間に王子たちの信頼を得るの。その後男爵令嬢だとわかって、正式に学園に入学した後は、攻略対象の好きなお菓子や思い出の料理を作って攻略していくんだけど、その料理が何かわからないわ。なぜかちっとも思い出さない。なんでだろ?
まぁいいわ、とりあえず知識チートから初めて、次は第二王子の誕生祭、それから……
せっかくいろいろと出来ると思ったのに、甘かった。リバーシはすでに『オセロー』という名で存在したし、マヨネーズもフライドポテトもあった。そう、よく考えれば、マヨはサラダにかかってたし、ポテトはお肉の付け合わせについてたわ……
「お嬢さま、お嬢さまが言っていた『オセロー』の特許、他の玩具の特許とまとめて売りに出てるけど、どうします?買います?」
わたしの従僕のノアが言うけど、そんなの買ってどうすんのよ。
「いらない……それよりノア、グリヴの町って知ってる?」
「知ってますよ、最近話題のとこですから」
「話題?」
「はい、ダンジョンのトイレが初めて出来たって」
トイレ?そんなことが話題になるんだ。逆に今までなかったことが不思議だわ。でも、ノアが知っているのなら話が早いわ。これで、誕生祭の次の目標はできたわ。ふふ、楽しみ!
【ローティーン向けの乙女ーゲーム『想い出も幸せも君と共に……』略称オモキミ】
〚ヒロイン〛 アリス・ベレット (光)
水色の瞳にストロベリーブロンドの髪
病気がちの母親に代わって、幼いころからパン屋で働いていたが、母が亡くなったのを機に王都にやってくる。そこで魔術学園の食堂で働くことに。
その年は王子と側近たちが入学してくるが、新学期も始まって間もなく、王子を狙った暗殺者が学園に侵入する。そのせいで怪我を負った王子を前に、癒しの力が発現する。その後、男爵令嬢だとわかって学園に入学が決まる。攻略対象の好きなお菓子や、思い出の料理を作って、仲良くなっていく。
〚攻略対象者〛
ベルティカ王国の第一王子 アドリアン・グエン・ベルティカ (風・身体強化)
母親違いの第二王子がいる
想い出ご飯 幼いころ、亡き母(王妃)が作ってくれたサブレ
婚約者 公爵令嬢 イザベラ・アスラン
騎士団長の息子 エドガー・ロックベール(火・身体強化)
想い出ご飯 辺境伯領に預けられていた時によく食べていた、肉と野菜の煮込み料理。
元辺境伯の孫で、現辺境伯の甥
宰相の息子 ロラン・ベルガルド(水)
想い出ご飯 亡き祖母自慢のアップルパイ
公爵家嫡男
宮廷魔術師の息子 フィリップ・バルテ (土と風)
想い出ご飯 幼いころに、ばあや(故人)が入れてくれていたハーブティー
侯爵家次男
暗殺者 ヤン (身体強化)
想い出ご飯 昔家族が元気だったころに、祭りで食べた屋台の串肉
妹・マリ(下半身不随の毒使い)がいる
隠しキャラ ダミアン(闇)
フェンリルを従えた闇魔法使いで、絵が得意
フェンリルの名 ジル
想い出ご飯 特にないが、おいしいパンに目がない




