表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/115

次はトイレだ! よん

私の異世界における、長さ・距離の単位です


ミィルト(mi)、フィルト(fi) 

100ミィルト=1フィルト=1メートル程度

 翌朝、わたしはみんなより、一足先にダンジョンヘと向かうことにした。アレがまた復活していないか、確認しておきたかったからだ。

 もちろんエドガーには、窪みが残っているか、気になるからと言ってある。これは嘘じゃない。


 朝の清々しい空気の中、走ってダンジョンへと向う。中に入ると、すぐに地面をじっくりと見て回った。


 よし!消えている。心配事が消えた喜びで、連続片足ターン(フェッテ)をキメる。今なら何回転でも出来そうだと思ったけど、15回目で気持ち悪くなったので、止めた。


 そこでようやく、窪みを作った壁に目を向けると、そこにはいくつもの窪みが、昨日と同じ様に残っていた。

 こっちも成功!でも、一番大きな物と、2番目に大きな窪みは無い。ペタペタと壁を触りながら確かめていると、師匠達が到着した。


 師匠はさっそく壁を確認すると、


「どうやら、変形にも、限度があるようね」


「じゃあ、これ以上大きいものは作れない?」


 残っているのは、縦100mi横50mi、そして奥行き50miの物と、それよりも小さな物だった。これじゃあ、トイレにするには小さすぎる。


「それはやってみないと、判らないわ。まずは、今残っているこれらの一部を、倍の大きさにしてみましょう」


「そうか。一度で出来なくても、何回かに分けて、大きくすれば良いんだ」



 今日は、わたしと師匠が【変形】をしている間、アルノーさんとエドガーには、【移動】の調査をお願いすることにした。だって、トイレの側にはペラの葉を植えたいし、当然、便器にはヘンチョを入れないと、色々と困るからだ。

 まぁ、ヘンチョは一応生き物だから、ダンジョンの原状回復の影響は受けないかもと、師匠は言っていたけど、念のためだ。


 【変形】が大丈夫なら、【移動】もいけるのではないかという仮説の元、採集したヘンチョを、同じ層の別の場所に移して置いておくと、どうなるかを調べてもらうのだ。なのでエドガーにはヘンチョの採取を、お願いすることにした。採取したヘンチョは、【変形】で作った窪みに入れて、しばらく観察する予定だ。

 

 そしてアルノーさんには、ペラの葉と()()()()()という植物が3階層にあるというので、こちらも【移動】出来るか、調べてもらう。

 グンニーラは、わたしの背丈より大きな葉っぱが二枚から四枚生える植物で、扉の解決方法をいまだに思いうかばないため、いっそこれを扉の代わりにしようと思ったのだ。


 持ってきたバケツとスコップ、そしてヘンチョ用の篩を渡して、必ず掘った穴は埋めるようにお願いする。そして念のため、2階層と3階層を使って検証するよう言うと、とたんにエドガーが張り切りだした。アルノーさんが、3階層には、スライムや、岩蝙蝠などが時々出ると言ったからだ。

 どちらも、子供でも退治できると言われている魔獣だ。


「判ってたら、剣を持って来たのに」


 不満を口にするけど、顔が笑っているから、説得力はゼロだ。


「岩蝙蝠は、弓矢の方が倒しやすいですよ」


 アルノーさんに言われ、明日から弓矢を持ってくると、はしゃいだ声を上げる。その情報に、使えそうだと思い、頬が緩む。頭の中で次の計画が出来上がっていくけど、今はトイレの事に集中することにした。


(これが完成しないと、あっちも実現しないものね)


ヘンチョ観察用の窪みを作らないといけないので、わたしも一緒に下の階に降りていく。階段状の岩と坂道で、それ程大変な道ではない。 


(これなら、あっちの計画も問題なさそう。ふへへっ)


 2階層と3階層に一つずつ窪みを作ると、戻って自分のすることをした。




 屋敷に戻ると、ちょうど寄り合い所の設計士さんと測量士さんが到着していて、今からクルグ村に向うところだという。

 測量士さんは特殊な土魔法が使えるとかで、地質調査も一緒にする聞いて、わたしは一緒に行くことにした。

 魔力を地面に透して、地中の深い処まで調べることが出来るという。


「大きな岩や水脈がわかれば、排除するための準備をしたり、そこを避けて建てたり出来るし、井戸の場所も決めやすいからね」


 村に着くと測量士さんは、そう説明しながら、地面に手を少し埋め、魔力を通していったく。

 横で真似してやってみるけど、まったく判らなかった。どうやらわたしには、地質調査の才能は無いみたい。残念だけど、金鉱山を見つけて一山当てるという夢は、一瞬で消えてしまった。

 


 次の日、倍の大きさにした窪みは、全部残っていた。

なので、大きい方から2つだけを、昨日と同じ体積分窪みを広げる。途中で色々と出てきて、すごく欲しかったけど、我慢した。


 そうやって、毎日少しずつ少しずつ広げ、トイレの形に近づけていった。




 そんなこんなをしていたら、父さまが帰って来た!

 時々連絡はもらっていたものの、父さまの無事な姿を見て安心した母さまが、父さまに抱き着いて離れないのは仕方がないかもしれない。

 なんせ今回の視察、辺境伯の領地を出たとたんに、2度も馬車が襲われたらしいのだ。幸いにも、いつもより護衛が多かったお蔭で、無事だったのだけど、


「どうも変だったんだよね。荷物を奪うというよりも、僕を襲うのと、馬車を奪うのが目的みたいでさ。普通盗賊なら、まず狙うのは積荷だろう?」


 確かに、それは何か変だった。いくら支店の視察旅行とはいえ、商会の馬車が動くのだから、当然ながら馬車の上には、商品がたっぷり積まれている。

 馬車なんて目立つものを取るよりも、小分けの利く商品を奪って売りさばくほうが、足も付きにくい。

 おまけに人が殺されたとなったら、憲兵による山狩りが行われたりするから、かえって自分の首を絞めるようなもんだ。

 じい様が、護衛につけた騎士さん達にも話を聞くといってたから、詳しいことが判ったら、また教えてもらおう。

 

 ということで、とりあえずソファに座る父さまと母さまの間に、自分の体をねじこむ。いや、寂しかったのは別に母さまだけじゃ、ないからね。私も十分寂しかったんだから、ちょっとばかり『愛されている娘』気分にひたらせてもらおう。


 ちょっとエドガー、こっち見て笑ってないで、さっさと部屋に戻ったら!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ