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従兄弟登場! いち

「じい様、無事に契約できたから、直ぐに木材の注文を、お願い!それが来たら、スグに扉に取り掛かって!それと、あと4、5日したら師匠が来るけど、ここに泊まって良い?」


 じい様のお屋敷に戻ったわたしは、契約書をじい様に手渡しながら、とりあえずの要件を口にした。


「あぁ、直ぐに手配するし、部屋はまだ空いているから、問題無い」


 じい様は家令のレノーさんを手招きして呼び、書類を渡すと、別の書類を受け取りながら、明後日には、大工さん共々、全てこちらに届くと教えてくれた。


「だが、工事中は危ないから、あまり近づかないように」


「判ってる!」


 心配気に言うじい様に、親指を立てて応える。もっとも、工事現場にひょこひょこ出向くほど、乙女は暇ではない。

 明日からの空いた時間は、村を周るのに充てる事に決めていた。既にアルノーさんには、伝えてある。


 昼からは、地図を見ながら周る順番を決める。


(ふへへっ、天気が良ければ、お弁当を持って行ってもいいな。村の詳しい地図も作りたいから、大きめの紙もいるよね)


 色々と考えながら準備をしていると、なんだがワクワクしてきた。


 町から一番近いのは、オングル村。先ずはここからだ!



 窓越しに空を眺めながら、やっぱりお弁当を持って行こうと思いながら、母さまと朝食を食べていると、じい様が子ども連れで、食堂に入ってきた。金髪で青い目の、同い年ぐらいの男の子だ。


 その子は、わたしと母さまを見た途端、にらみつけ、


「おまえら、誰だよ!」


 ゴンッ!


 叫ぶと同時に、じい様にゲンコツを落とされ、頭を押さえてしゃがみこんだ。


(あ?何だ、この失礼小僧は)

 

 いきなりの言葉に、顔が岩ガニになりかけたけど、乙女なのでグッとこらえる。


「こら、エドガー!きちんと挨拶をしないか!」


「……エドガーだ」


 しぶしぶされた挨拶に母さまと二人、顔を見合わせ、肩をすくめると、立ち上がって挨拶を返した。


「初めまして、エドガー様。アンジェリーネ・ハウレットと申します」


「初めまして。その娘のエミリアです」


 庶民の間で 正式とされる挨拶だ。ふへへんっ。失礼な小僧と違って、こっちはキチンと挨拶が出来る乙女なんだよ。


「敬称はいらんよ、アンジュ、エミィ。これはわしの孫で、アンジュの甥、エミィの従兄にあたる。歳はエミィよりも一つ上の、7歳だ」


 じい様がエドガーの頭をグリグリと撫でながら、説明してくれる。従兄!そういえば、母さまには兄さまが二人いるって言ってたから、この子はそのどちらかの息子というわけだ。


「あら、シモン兄さまの?それともクロード兄さま?」

 

 母さま。わたし、伯父さんたちの名前、いま初めて知りましたよ! シモン伯父さんとクロード伯父さんね。うん、覚えておこう。


「クロードの長男だ。あれは今、王都で騎士団に所属しているんだが、そろそろエドガーを鍛えてほしいと、こちらに送り込んできてな。今朝到着した。まぁ、都会では、出来る鍛錬など知れてるからな」


「あぁ、クロード兄さまらしいわ……」

 

 苦笑いを浮かべる母さまをみるに、どうやらこちらの鍛錬がどんなものか、知っているようだ。


「あと、こいつはしばらく、エミィの手伝いもさせようと思ってる」


(あぁ?何言ってるんですか、じい様?)


 今度は完全に、岩ガニ顔になってしまった。ちなみに、エドガーも岩ガニ顔だ。


「なんせこれの父親のせいで、今エミィは忙しいんじゃからな」


「えっ、もしかして代行って、クロード伯父さんなの?」


 じい様、言わなかったっけ?じゃないわ。そんな話、聞いてないし!

 でも、まぁ、それならこの失礼小僧にも、しっかり働いてもらおう!でもその前に、確認しておかないと。


「じい様、わたしの報酬が減ったりは?」


「せんよ。安心せい」 


「特別手当が無くなる、なんてことも?」


「しない」


 よし!両手をグッと握る。えっ、ちょっと母さま、何笑ってるんです?これは大事なことですよ!




 朝食後、レノーさんにお弁当をお願いしていると、エドガーがそばに寄って来た。

 

「さっきは失礼な態度を取って、ごめん。祖父様のとこで剣の訓練が出来るの、ずっと楽しみにしてたんだ。なのに、屋敷に着いたら、知らない人達がご飯食べてて……なんかちょっと、腹が立ったんだ。ごめん」

  

 ペコリと下げられた頭を見ながら、これはもしかすると、仕事をする時の上下関係をはっきりしておく、良い機会かもしれないと、考える。だから。


「もう、いいよ。ただ、今している事は、わたしが引き受けた仕事なの。だから、歳はエドガーのほうが上だけど、わたしの言うことを聞いて、手伝うって約束して」


「判った。言うことを聞くし、ちゃんと手伝う」


 『今の、聞いたよね!』って視線をレノーさんに向けると、頷いてくれたので、証人もできた。これでエドガーは、わたしの部下だ!



 アルノーさんが御する荷馬車の荷台に、エドガーと並んで座る。膝の上には、3人分のお弁当の詰まったバスケット。じい様には、馬車を出すと言われたけれど、せっかくの天気だからと、こっちにして正解だ。

 お日様は眩しいけど、風は気持ち良いし、ガタン、ゴトゴトと揺れるのも、楽しい。



「なぁ。ハウレットって、あのハウレットか?商業地区1番地にある、でっかい店の」


「そう。知ってるの?」


「何回か、母様と買い物に行った事がある。でも叔母さんや従姉妹の店だなんて、聞いたことが無かった。父様に妹がいるのは、なんとなく知ってたけど」


「母さまとじい様が、ずっと連絡を取ってなかったから、伯父さん達も知らなかったのかも」


「でも、仲直りしたんだろ?」


「つい、こないだね」


「そうなんだ。ところで、今からどこに行くんだ?」


「オングル村。今日は、村の調査なの」


 オングル村は、村人は50人ほどの小さな村だ。作物は麦と豆が中心で、ほかにもいろいろと野菜を作っている、のどかな所だ。

 アルノーさんとエドガーの3人で、村長さんのお家を訪ねる。村の中は、女の人や子供ばかりだったので、そのことを聞くと、今の季節、大半の男の人達は、薪用の木を切りに近くの林に行っていて、留守がちだという。


 エドガーは男の子たちに話を聞くといって、村の子供たちと一緒にどこかへ走り去っていった。


 こら、エドガー!手伝うって言葉は、どこ行った!? 

お読みいただき、ありがとうございます。

次作の投稿は9月6日午前6時を予定しています。


評価及びブックマーク、ありがとうございます。

感謝しかありません。

また、<いいね>での応援、ありがとうございます!何よりの励みとなります。


誤字報告、ありがとうございます。

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