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がんばれ、ガイドたち! にぃ

「こちらは、エミリアさんに」


 何が書かれているのか気になって、ソワソワしているわたしにも、騎士団長さんが1枚渡してくれた。すぐにマキシムとエドガーがのぞき込んできたので、三人でそれを見る。

 そこには大きく【要保管】の文字の下に、


『一・今回、第一王子が参加するのツアーにおいて、その全ては規則どおり、通常どおりに行われることを希望する。

一・従業員においては、通常の営業時と同様の言動に関しては、一切咎められることは無い。』


 と書かれていて、最後に【リシャール・ベルガルド】と書名されていた。


「リシャール・ベルガルドって、もしかしてロランのお父さんの名前? 」


「ええ。そして、この国の宰相閣下のお名前ですね」


 アルノーさんが頷きながら、教えてくれる。

 ということは、宰相閣下が『いつも通りでいいし、お咎めなんて無いよー』って言ってくれてるってことね。どおりでみんな、ホッとした顔になるわけだ。

 まだ、胃の辺りをサスサスと撫でる手は、止まってないけど。


「コレって、王子たちを特別扱いしなくても良いってことだよね? 」


 一応、確認しておかないとね。

 アルノーさんがが頷く横で、


「そうだね。だけどまぁ、2人の参加者に5人のガイドをつけるんだから、十分に特別扱いだとは思うけどね」


 マキシムの言葉には、トゲを感じる……。


「なぁ。コレのことを、王子たちも知ってるのか? 」


 エドガーが騎士団長に聞く。確かに王子たちがこの書類の事を知らないと、意味がないよね。ツアーの途中で『不敬だー!』なんて騒がれたら困るもの。


「ご存知のはずですよ。この書類は、殿下の護衛隊の隊長より渡されたものですから」


 それにもし、王子が不敬だと騒いだとしても、この書類を見せれば済むはずだと言ってくれたので、安心する。

 とりあえず、これ以上ガイドたちの胃に穴ボコが開かなくてすむようだ。


 宰相閣下の書名入り書類を両手で掲げながら、


「みなさん、ここに書かれているように、砕けた言葉遣いをしてもお咎めはありません! 心置きなく、いつも通りに振る舞って下さい! 」


 最後にがんばれ! と言って、馬車に戻った。


 ***


 さて、あとはお楽しみだけよ!

 いろいろとあったので、砦跡に到着した時は、もう夕方になっていた。急いで荷物を持って、それぞれの部屋へと向かう。


 その後は、観察機器の設置だ。これは明るい間にした方が良いらしい。マキシムの話では、暗いと小さな目盛りが見えにくいんだって。


 外階段を使って観察機器を屋上に運ぶのは、アルノーさんが引き受けてくれた。


「ここらで良いですか? 」


 出来るだけ平らな場所を選んで、置いてくれる。 そこからはマキシムの指示にしたがって、設置していく。


「まず最初に、エミィ、三本の足を安定するように広げてくれる? 」


「はい!」


 うっかり倒れないように、アルノーさんに支えてもらいながら、うんしょこと足を広げる。


「エドガー、読み取り台の上に、今月のプレートを乗せて」


「えっと、今は春の二月だから……これだな。よし、置いたぞ」


「このとき気をつけないといけないのは、日にちの目盛りなんだ。これを間違えると、せっかくの観測が大無しになるんだって」


 言いながら、メモを確認しては、目盛りを合わせていく。


「たぶん、これで良いはず」


「よし! だったら晩飯にしようぜ! 」


 グゥっ〜。


 エドガーが言うと同時に、わたしのお腹がなった。くっ、不覚! でもエドガーの声が大きかったから、きっと誰にも聞えて無いよね? 


 絶対、聞こえてませんように!



 夕飯は、調理担当者の名前から『サカキ食堂』と呼ばれるようになった食堂の人気メニュー、『スティック・フライ定食』を四人で4人分予約してある。

 これは串に刺したお肉や野菜を衣をつけて揚げた物が5本と、サラダとパン、スープのセットだ。エドガーとマキシムはフライを三本、アルノーさんは五本追加でたのみ、わたしはスープをお代わりした。


 お風呂はちょっと悩んだけど、湯冷めしそうだし、明日入ればいいやってことで、今日はやめにした。


 そして、ついに観測だ!砦跡の屋上に上がって空を見ると、まん丸じゃない月と、沢山の星!星!星!


「うわぁ~」


「すごい……」


 その時、アリスがダミアンと二人で、大きなバスケットと小ぶりの鍋を持ってきてくれた。『黄色い小鳥亭』にお願いしていた夜食だ。 さっきしっかり夕飯を食べた? 確かにそうだけど、当然、夜食は別腹よー!


「遅い時間なのに、ありがとう!」


「これぐらい、お安いご用です!」


 アリスは笑いながら言ってくれたけど、その横ではダミアンが、こちらを睨んでる。


「いくら雇い主だからって、こんな時間まで働かすなよ」


「えっ、大丈夫だよ、ダミアン君。それに時間外の手当も、ちゃんともらってるし」


「だからといって、夜に配達させるなんて……」


 ハイハイ、仲が良いことで。


 大きなバスケットの中には、野菜や卵の他に、ひき肉を丸めて焼いたものが挟まったパンが並べられていて、小鍋には温かいスープが入っている。それをピクニックシートの上に広げながら、


「ねぇ、もし時間があるなら、アリスも見ていかない?」


「良いんですか?!」


「もちろん! ほら、ダミアンも一緒に見よう! 」


「……まぁ、少しなら付き合ってやる」


 その後は食べて観測して、しゃべって食べてと、楽しい時間が続いた。

お読みいただき、ありがとうございます。

現在、慣れない書籍化作業に手間取っており、来週、再来週の更新は、お休みさせていただきます。

そのため次作の投稿は12月10日午前8時を予定しています。


評価及びブックマーク、ありがとうございます。

感謝しかありません。

また、<いいね>での応援、ありがとうございます!何よりの励みとなります。


誤字報告、ありがとうございます。

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