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モブ令嬢の企み 4の1個目

この作品が、第8回アース・スターノベル大賞の銀賞を受賞しました!皆さま、ありがとうございます!

 今回グリヴの町に来たのは、『特別な用事』があるお父様について来たんだけど、まさかこんなアスレチックができていたなんて。

 前に来た時はまだ工事中だったから、何を作っているのか判らなかったけど、いいわね、素敵じゃない!

 前世では入院生活が長かったから、こういうので遊ぶのは小学校以来だわ。滑り台もブランコも、つり橋渡りもターザンロープも全部楽しい!


 もちろんドレスでは遊べないから、ブルッペと呼ばれるズボンをはいている。これ動きやすいから、もう何着か買って帰ろうかな。あと、うちの庭に滑り台、欲しい!


 **


 夕方。宿に戻る途中で、大きな乗り合い馬車が広場横に入って来るのが見えた。そこからゾロゾロと人が降りて来るのを、なんとなく眺めているうちに、その馬車の横に大きく『砦跡用乗り合い馬車』と書かれていることに気づいた。


 あれ?砦跡って、なんだか聞いたことがあるような……なんだっけ?……そうだわ、ダミアンよ!彼が住んでた場所じゃない!なんで忘れてたの、私ったら!


 あっ、でも、もうすぐ春の2月(につき)だけど、まだいるかな?とりあえず明日行って、確認しないと!


 あと、ダミアンについて忘れてることは、ないわよね。

 たしかダミアンは皇国の皇帝の息子なんだけど、身分が低い側妃が彼を産んですぐに亡くなったのをいいことに、正妃の命令で魔物の餌にされかけるの。でも、運よくフェンリルの親子に拾われて、なんとか生き延びるんだけど、きっと寂しかったと思うのよ。

 しかも表向きは死産とされているから、誰も彼のことを探しにこないし。

 おまけに育ててくれたフェンリルのお母さんは、帝国の兵が仕掛けた罠にかかって死んでしまうのよね。

 その後はフェンリルの子供と一緒に、夏場は森の洞窟に、冬は人里離れた砦跡に住みながら、冒険者として生活するんだけど、彼とフェンリルの力を利用しようとする大人たちにひどい目に合わされて、人嫌いになっちゃうの。

 たしか罠にかかったダミアンを助けるために、魔獣の力を封じる首輪を付けられたフェンリルが大怪我を負うのよね。そこでダミアンの魔力が暴走して…

 まぁでも、それもあと3年は先の話だから、今はどちらも元気いっぱいのハズ。



 だけど砦跡に居たとして、どうするのが良いんだろ?フェンリルが一緒に居るから、使用人として屋敷に来てもらうには、ちょっと怖いし……


 あっ、でも、なにか困ったことがあったら、いつでも尋ねて来てほしいって伝えるだけでも良くない?どうするかは、それまでに考えておけばいいし。頼れる相手がいるってだけで、気が楽になると思うのよ。そうよ、そうしよう!


 そう思って朝から出かけたのに、ホント、さんざんだったわ。

 乗り合い馬車を降りたとこまでは良かったけど、そこからが、最悪。

 みんながゾロゾロ入っていくから、あとに続いて入ろうとしただけなのに、不審者扱いされたんだもの。


 おまけに面会手続きを取れっていわれても、コッソリ隠れ住んでいるダミアンたち相手に、そんなことできるわけないじゃない!

 しかたがないから伯爵家の名前を出して、権力に物を言わせようとしたけど、それも通用しないなんて、どうなってるのよ、ここは!


 ふつうは伯爵令嬢が訪ねて来て中を見たいって言ったら、では、ご案内しましょうってならない?


 あげく、変なちびっ子がしゃしゃり出てくるし、しかもその子が責任者だなんて、意味がわからない状態よ。


 仕方がないから戻ろうと思ったら、今度は町に戻る馬車は夕方まで出ないって言われてしまうし。


 あの変なちびっこの馬車になんとか乗せてもらえたから良かったけど、そこでもなぜか間諜にされそうになるし、ノアには惚れっぽい子扱いされるしで、さんざんだったわ。

 しかもお腹の音が鳴るなんて、どれだけ恥ずかしかったか。

 でも、しかたないわよ。あんなにいい匂いがしてるんだもの。それなのに1つもくれないなんて、やっぱりあの子、意地悪だわ。


 **


 宿に戻って食堂で昼食を食べたあと、階段代わりの滑り台で遊んでいたら、ノアが沢山の封筒を運んでいた。


「あれ?ノア、なに持ってるの?」


「旦那様がお買いになられたゲームですよ」


「ちょっと、なにこれ」


 1つ抜き取った封筒には、魔獣の絵が描かれていて、中にはカードみたいなものが、何枚かはいっている。


「どうやら新しい絵柄が発売されたのが嬉しかったのでしょう。たくさん買われて……そういえば、これらは今日行った砦跡で作られているみたいですね」


 1枚引き出すと、それはなんとなく見覚えのあるカードだった。


 コレって、ポケ◯ンカード……


 あぁ、そうか。あの子、転生者だったのね。カチリと音を立てて、いろんなことが当てはまっていく。

 これは、確認しないと!


 さて、どこに行ったら会えるかと思いながら宿を出ると、ちょうど目の前を歩いていた。


「ちょっと、あなたっ!あなた、転生者でしょう!」


「テンセイシャ?」


 そんなふうに首を傾げて、なんのことか判らないふりをしても無駄よ。こっちには、証拠があるんだから。


「どうりで、おかしいとおもったのよ。あなたみたいなちびっこが、砦跡の責任者だなんて。どうせココが乙ゲー『きみおも』の世界だと気がついて、前世チートでやりたい放題してるんでしょう!」

お読みいただき、ありがとうございます。

次作の投稿は8月6日午前6時を予定しています。


評価及びブックマーク、ありがとうございます。

感謝しかありません。

また、<いいね>での応援、ありがとうございます!何よりの励みとなります。


誤字報告、ありがとうございます。

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