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ターニングポイント「2020/03/03」

作者: 白椿

ランキングをいくら眺めてもよく分からなかった近年のなろう。

だがそうか、ポイントは2つあった。

 小説家になろうは急激に変わっている、らしい。

 正直ランキングを見て作品を探すような行動からは離れて久しく、実感というのはあまり無いのだが、数字で比較するとその差は歴然としている。

挿絵(By みてみん)

 一例として、2010年代を通じて支配的だったハイファンタジーは急速に勢力を縮小し、異世界恋愛に取って代わられたようだ。

 最初にこれを知った時は、なんとなく「女性ユーザが増えているのかな」と思った程度だった。


 しかしながらそれは無理のある仮説だった。

 確かに女性主人公作品、異世界恋愛系など、アニメ化や有力コミカライズ作品が多数出るようになり、長期的に女性ユーザが増えているだろうことは疑いないものの、短期間のうちに従来の、男性的傾向色濃かったユーザ集団を圧倒するほどかといえば厳しいだろう。


 注目すべきはジャンルの変化では無かった。

挿絵(By みてみん)

 近年的な変化として最も大きいものは、短編(及び完結済)作品のランキング占有だ。

 連載中作品はかつて、2010年代を通じてランキングの9割弱を占めていたが、この変化の中で急速な後退を見せていく。



 2020年を境に全てが変わった。

 その発端となった出来事も極めて明快だ。

 2020年03月03日に行われた、「評価フォームの機能改修」の影響だろう。


 要点は大きく3つ。

 まずは「評価フォームを連載作品の全部分に設置し、作品閲覧中いつでも作品の評価をすることができるように」した点。

 この影響は短期的には大きく、2020年の03~04月頃に限れば、連載中作品に多量のポイントが送り込まれる結果となった。


 次にかつての文章評価・ストーリー評価という「区分を撤廃し、☆アイコンでの5段階評価に変更」した点。

 そして最後は評価欄に「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」という記述された点。

 長期的な変化をもたらした要因はこの2つだろう。



 ここで少し「従来の(2010年代的な)ユーザの行動」に関して触れておきたい。

 小説検索から「連載中のみ」「月間ポイントの高い順」で、作品をまとめたものが以下の表になる。

挿絵(By みてみん)

 ごちゃごちゃと数字が並んでいるが、注目してほしいのは「比率」の部分で、上位20作品を平均化すると、評価ポイントが総合ポイントに占める割合は52.0%であった。


 ブックマークに由来するポイントと、評価に由来するポイントは大体1:1。

 また古い(2010年代の)作品の場合だと、評価ポイント比率はさらに低くなりがちな傾向にある。

 かつてのなろうはブックマークに由来するポイントの存在感が極めて大きく、それを維持できる連載中作品がランキングの大半を占めており、こうしたユーザ集団の行動形態は現在でも大きくは変化していない。


 次に小説検索から「短編」「月間ポイントの高い順」で、作品をまとめたものが以下の表になる。

挿絵(By みてみん)

 短編の場合、評価ポイントが総合ポイントに占める割合の平均は89.3%であり、ブックマークとの比率で言えば1:9。

 ブックマークは単にポイントを送るもの以前に、それによる更新通知こそが本来的な機能であり、その比率が低いというのも当たり前な話ではある。


 ただここで注目してほしいのは「評価人数」、ついで連載中の「ブックマーク数」だ。

 そもそもとしてブックマークと評価ポイントでは、送り込めるポイント量に5倍もの差が存在する。

 仮に連載中作品読者を「ブックマーク型」のユーザ、短編作品読者を「評価ポイント型」のユーザとして分類しよう。

 評価ポイント型ユーザはせいぜい1/3程度の人数が揃えば、従来(2010年代)的なブックマーク型ユーザなどポイント面で圧倒できる。

 性別構成を揺るがすほどの人口移動など無くても、ランキングはこうなるのが道理というものだ。



 少し整理しておこう。

 まず2020年03月03日、なろうは評価フォームの機能改修を実施した。

 改修されたシステム下では短編こそ有利だということが認知され、04月頃からすでにランキング中で短編が増加基調となる。

 その後も短編の増加は続き、それに次ぐ形で両者のメリットを摘まめる短期の完結済作品も増加。

 この過程で連載中作品はランキングから弾き出され、ポイント獲得量の顕著な減少が続く。





(ここから2022/11/08追記)

 もっと分かりやすい表現があったなと、ジャンルによる差異に関する追記。

 11月08日現在の主要ジャンルは、

  異世界恋愛    215作

  ハイファンタジー 44作

というもの(月間総合ランキング)。

 だがこの5倍もの数字を踏まえてなお、「見た目ほどにはなろうの性別構成は変わっていない」と認識している。

挿絵(By みてみん)

 連載中作品に限定して見た場合だと、(かなり差が縮まりこそしたものの、)ハイファンタジー>異世界恋愛という図式は現在も変わっていない。

 またローファンタジー及び現実世界恋愛に関しては数量的に安定しており、主人公の性別的に概ね男性向け的傾向と言っていいだろう。


 連載中作品のこの構図は変わらないままに、2020年から短編・短期完結作品部分が急速に肥大化。

 これら2グループの評価行動は、あまりに異なるものだ。

(ここまで2022/11/08追記)

ブックマークというのは最も信頼のおける指標かと思う。

更新通知に紐づけられており、最新話までついていっている従順なユーザ規模を把握しやすい。

古い認識かもしれないが、一定の割合で書籍化時の潜在的購買力と見なすことも出来るだろう。


評価フォームの機能改修により、見かけ上のポイントは大きく動いたわけだが、その過程でブックマークの価値は相対的に暴落してはいないか。

ランキングから連載中作品が後退し続ける現状は、商業化に堪える作品群の縮小であり、多数決の原理による有力作品選別能力の消失。

なろうの衰退どうこうというよりむしろ自殺に思える。

(このへん一部削除)



今までGoogleトレンドなりSimilarwebなり、大きな数字を追う中で「なろうは隔絶した存在である」という認識だったし、むしろそれは強固になる一方だった。

しかし月間ランキング上位のブックマーク的な数値。

挿絵(By みてみん)

システムが違うものを単純比較していいのかという問題、明らかにアニメ化・コミカライズからの還流が大きいだろうと、なろうの8位・10位・18位を外すような操作を行ったのは確かだが、サイト間の差はかなり小さい。

特にカクヨムの堅調な成長に関しては、かつてのなろうの主流派「長編」「連載中」「ハイファンタジー」、そしておそらく「男性」的な集団が、相当数流出しているように思えてならない。

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