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その2

マジックドラゴン2 その2

やっとこさの出撃です。

随分間が空きました。

待っているいる人がいると信じ、最後まで書きたいと思っています。

応援してくれると嬉しいー!

◆◆◆









ロイドの戦斧(トマホーク)が最後の一匹を倒すと、晴れていた霧がまた辺りを包み始めていた。


ジタンが起こした風はいつの間にか止んでいた。


二人で当たるを幸い、なぎ倒した。


しぶとい爬虫類の尻尾は、ウネウネと動いている。

トドメまで、さしているわけではない。

まぁ、動けなくなるまでぶちのめしてはいる。


ー 手強い反応が薄い。なんだぁ?


ジタンの感じをロイドも同じと感じているようだ。

だが、

『油断めさるな』

自分に言い聞かせるように、ジタンに囁く。


『本番はこれからかな?」

ジタンがロッドステアを握り直す。


『そのようですな」

ロイドは静かに応える。


あのトカゲは間違いなく何らかの人為的な改造を受けている。

鉱物と生物の魔法合成。


禁忌の魔法であることは確かだ。


濃くなりはじめた白い霧の向こうに、威圧する巨大な影が控えているのが分かる。



流石にボスクラスであり、2本足で立つその見上げる程の大トカゲであろう。

濃くなり始めた霧の為全容ははっきりしない。


しかし、なかなか近づいて来ない巨影にジタンはいぶかる。

『はて?』


なかなか前に出ないトカゲに焦れて、自分から一歩踏み出そうとしたタイミングであった。


『おまえ達は何者だ、人間のくせに我らを恐れぬ』


トカゲが人語を発した。


亜人、なら言葉を使うのは分かる。

が、トカゲが喋るとなると『?』である。


禁忌の魔法をかけられ、変貌しているだけでトカゲが言葉を操るとは思えなかった。


頭一つも二つもデカいトカゲは襲ってくる気配は無かった。


『答えろ、貴様らは何者か?』


『ぬ!トカゲ風情が、』

ロイドが怒りの声をあげるのを、横でまあまあとジタンはなだめながら、

『たまたま通りがかった旅人だよ』

さらっと言い放つ。


『普通の人間は我らを恐れここまで近づかぬはず、ただの旅人とは思えん』


ー 可愛い看板娘にそそのかされて。

とは言えないし。


『金で雇われて、トカゲを退治にきただけだよ』

『傭兵だと?そうは見えんが』


やはりこの霧の中でも彼らトカゲは我らが見えているようだ。


ジタンは漂い始める霧を見ながら、ボスらしきトカゲを見上げた。

確かにトカゲには違い無さそうだ。


『まぁ、いろいろ事情があってね』


両手で握っていた聖棒ロッドステアを右手に持ち替え、トンと地面を叩いた。


『言葉を話すトカゲに、少なからず驚いているところさ』


ロイドは戦闘態勢を崩さず、両手の戦斧を握り直す。



両者の間に暫し沈黙が流れる。


『我らは、やはりトカゲに見えるか?』


『?』

ジタンとロイドの頭の上に『?』が浮かぶ。


『トカゲにしか見えないが』

ロイド談。


『我らは元は人なのだ』


衝撃の告白だ。




◆◆◆◆◆



退治を頼まれたが、話しの通じる相手となると、少し話しが変わる。

無駄な戦闘をする気も無いのでー もともとジタンはトカゲを滅ぼす気は無かったのでー 相手の、トカゲの話しを聞くことにした。



ボストカゲらの先導でトカゲ達のねぐらに行くことになった。


『もとは人』らしく、二本の足で歩くトカゲの一団はやはり不気味だが。


トカゲ人と言った方が良さそうかもしれない。

ちなみにリザードマンとは違う。

あちらは、爬虫人類として分類されている。


彼らは明らかにトカゲの巨大化した生物にしか見えなかった。それも鉱物と融合している。

ありえない。


彼はの眼の色から狂気の色が消えていた事と、まぁ不意打ちをされても、なんとかなる相手だと踏んだからであった。


ロイドもあらかじめジタンから、殺すな、と言い含められていた。


ー 敵の正体を見極めねばね。


最初の戦闘の時点で全力を出すまでの相手では無いと感じていた。

それもあって彼ら二人は、ノコノコとトカゲ達に連れられていったのだ。


暫く、緩やかな登り道を行くとゴウゴウと鳴る滝の音が響いきた、

滝が近づくに従い霧が少し晴れてきたようだ。

滝つぼの辺りは白熱石が少ないのだろうか。

もしくは、夜半だと蒸気は少なくなるのだろうか。


その滝の裏に巨大な洞窟が存在していた。

自然に出来た洞窟にしては、大きすぎる気がする。


トカゲ達が洞窟の中に消えて行く後に続いて入る。


洞窟の内部は、更に巨大であった。

見上げる程に高く、奥も随分有りそうだ。


『これはまた!』

ロイドが感嘆の声をあげた。


5~600匹のトカゲ人がいるだろうか?

小さなトカゲ人や色の違うトカゲ人もいる。

女型もいるだろうか。

多少色違いの個体もチラホラと見られる。


ひしめき合っているわけではない。

十分なスペースが有る。

それ程の空間があるのだ。

見渡すことがでかない程奥が深く、先が分からない。



壁全体に白熱石が有り、染み出す地下水に反応してほんのりと明るくなっている。更に石の熱で暖かくなっていた。

ヒンヤリするはずの洞窟の中は暖かく、適度の湿気を持ち快適な空間になっていた。


入口から少し行った広場の中央付近に、平らにならされた円形の場所があり、ジタンらはそこに促されて移動した。


巨体のボストカゲ人がそこに、ドカリと座る。

背中から尻尾付近まで有った結晶化し突起した鱗は小さくなっていた。


ジタンとロイドはボスの対面にやはりドカリと座った。

右手に持った聖棒ロッドステアは脇に置く。

ロイドの二本の戦斧は既に背に有る。


『わしはこの集団をまとめている者だ、ガザグと呼んでくれ』

ー んー、やはり元は人?か。


『おれはジタン、隣のデカい四角いのはロイド』


『四角いは余計です』


『はは』


円形の場所を数百のトカゲ達がザワザワと囲む。

ただ殺気とかは無さそうだ。


『ジタン殿とロイド殿ですな』


ガザグは両腕を胸の前で組んでうつむいた。


『我らの討伐を依頼されたと?』

周りにいるトカゲ達がざわめく。


『宿場町の連中がね、君達のあの鳴き声が気味悪いらしくてさ、営業に響くらしいんだ』

『あれは、この地に近づけないように朝、晩声をだしていたのたが』

『効果はあったけどね』

『…』

ガザグは黙ってしまたった。


『あの声を出さなければ、宿場町の連中は何も言わないだろう。あと君達の事は害がないと報告して、ここには余り近づかないわように説得するしかないかな』


ガザグはハッと顔をあげ、ジタンを見た。

『そのようになりますか!?』


ー 説得するかぁ?

ー そーですなぁ、

小声で相談する。


前は人なのだと、人語を操るトカゲなのだと言って信じるだろうか?

なかなか難しい。


『ところで、どうしてトカゲになったの?いつからここに居るの?』


ガザグはまた両腕を組んで、頭を下げた。


『分からぬ。気がついたら、この姿でこの場所にいたのだ』

『んー、そうなん?』

ー そうきたか。

『食料はどうなされた?』

ロイドが聞く。


『最初の頃は餓死寸前までいったのだ。だが、有る一人が白熱石を食べ始めたのだ。空腹のためだろうと見ていたら、旨そうに食うたのだ』

『え~』


『食料は白熱石って事?』


流石にジタンも言葉を無くした。

禁忌の魔法ではなく、白熱石を食べてこんな風になったと言っているようなものだ。


『信じられない』

『まったくです』


ジタンが先に考えた禁忌の魔法と考えたのには訳かある、

昔、似たような事例を見たことがあったからだ。


しかし今回は違うようだ。


ジタンは呆れるやら驚くやらで、流石に困ってしまった。

そうも言っていられそうもない。

暫く考えて、ジタンはガザグに言った。


『誰か仲介役を選んでもらって、宿場町まで同行してもらう事は可能だろうか?』


『なるほど、論より証拠ですな』

ロイドが賛同する。

『それならば、わしがいくぞ』

ガザグが申し出るが。


『いや、ガザグ殿では大きすぎて、宿場の人が逃げだしかねないよ。威圧感が凄すぎだからね』


『んー、そんなもんですかな?』


首をかしげるボストカゲを観察しながらジタンは代案を持ちかけた。


『背は俺達程で弁の立つやつがいいね。威圧感が薄い程いい』


『なるほど、ならば』


ガザグは後ろの配下のトカゲ人に小声で何か指示を出したようだ。


直ぐに一匹の小型のトカゲ人が現れた。



「わしの片腕のガーゼだ」

ボスよりは一回り小さいトカゲ人が紹介された。


「よしなに」


彼はうやうやしく頭を下げた、


小さいとは言え、ジタンより頭一つ高い位のトカゲ人だ、

頭のあたりから背にかけて銀色のヒレが光っている。


他のトカゲ人とは、毛色が少し違うように見えた。

「まあ、そうですな、取り敢えずそう言う事で行きましょ」


ジタンはいつもの軽いノリで言うと、直ぐに立ち上がった。


「もう夜明けが近いはずだ、宿場に着く頃は丁度よい頃だろ」


ジダンとロイド、そしてトカゲ人のガーぜの3人は滝の裏の洞窟を後にした。


夜明けが間近なであろが、辺りを埋める霧の為日が指してきているのかは実際よく分からない。


それでもトカゲ人のガーゼは先頭をゆうゆうと歩いている。

霧の中でも周りが見えているのは確かなようだ。


ジタンとロイドは離されない様に彼の後ろを早足て追いかける。


そして、暫く行くと霧が薄くなり夜半に通った道が現れた。


宿場町まであと僅かであろう。


「さて、どう話すかな」


ー トカゲ人のガーゼに話しをさせるのが、手っ取り早くてよいのだが。


宿場町の入口でかがり火が二本炎がはぜる音をたてていた。


そこに数人の人影が見えた。


夜通し待っていたのか?今出てきたのか?


まさか一晩中って分けではなかろう。


彼らは戻ってきた二人を見つけ手を振ろうとした時、もう一つの異形の姿を見て、固まった。


「これは、いったい?!」

言葉が出てこない村人であった。


そして、町名主が飛び出して来て、ひと騒動あり話し合いが行われる運びになるのだが、そうこうしている間に日は天に昇っていた。


やはりと言うか、何と言うか、宿場町の連中は腰を抜かさんばかりに驚騒ぎにはなった。

が、ジタンは町名主を通して、害の無いこと説明しトカゲ人ガーゼに喋らせる事に成功した。


「我々は人と争う気は無い」


トカゲか話すのにも驚き騒ぎになりかけたが、そこは町名主等が出てきて、なんてかとりなしてくれた。


「まぁ、そう言う事なら、まぁ」


半信半疑ながら納得してもらう事になった。


「我等からも提案がある」とガーゼが名主らに言った。


「はて?」

不思議そうな表情の名主にガーゼは、少し戸惑いながら。

「我等は特別な白熱石を提供できる。灯りにも転用可能な石だ」

「ほうぉ」

「それで交易ができないであろうか?」


ガーゼと名主の話しはトントン拍子に進み、宿場町からは生活必需品、籠とか布地とか、の加工品が交易品として決められた。


話しは丸く収まった様だ。


ガーゼはまた霧の中に帰って行った。


ジタンとロイドは依頼達成の約束の金を少なからず手に入れる事か出来た。

ロイドは早く城下町に行く事にを提案したが、ジタンの「まぁまぁ」で、仕方がないと諦めた。


更に宿場町挙げての祝いの宴が用意され、また一晩留まる事になった。


ジタンは宴会からスルリと抜け、例の可愛い娘とさっさと借りた部屋にしけこみ、ロイドは町名主達の相手をする羽目になっていた。


ロイドは無類の酒好きでいくらでも飲む。そして酔わない。

ガチン族はそんじゅそこらの酒では酔はしない。


夜中まで続いた宴会に皆酔いつぶれていたが、一人ロイドだけがふんぞり返って飲んでいた。


ー 皆だらしない。この位で。


そして翌朝、ジタンとロイドの二人は宿場の人達に見送られて、一路城下町に向かった。



★★★


トカゲ人の洞窟。


「ガーゼ、奴等は信じたか?」


「はい、親方様、最初は半信半疑でしたが、大丈夫です。信じたと思います」


「あのジタンと言う人間はなかなか食えぬ輩ではあるが」


「そのようでしたが、最後には疑いは晴れているようでした」


「うむ、こんなことでネーダ教計画に支障をきたすわけにはいかぬ」


「はい」



「我等の本懐の為に」







★★★






城下町に向かう街道筋。


陽は中天に掛かり、暑い光が刺さる頃。


ジタンとロイドは道の外れにある小川の付近で腰を降ろし、汗を吹いていた。

もっとも、汗を吹いているのはジタンで、ロイドはどっしりと座って竹筒から水を飲んでいた。


数人の行商人らしき人影が街道を行き交っている昼下り。


彼は浮かぬ顔で、

「どーもなぁ」


ジタンが小さく呟いた。


「いかがなされた?」

ロイドが何気に聞き返す。


「いや、どーも、上手く乗せられた気がね」


「?」

「まぁね」


ジタンはそれっきり口をつぐんだ。


ー どうも、やな感じがする。こういう事は後に引くものだが。


ジタンは頭を左右に振ると、行くか、と腰を上げた。

夜半までには城下町に着かねばならない。







預言姫ラーサ





この世界(ル・リクラード)のいくつかの国に夢見の預言姫が存在する。

ジタンが現在までに確認しているのは9人。

他にも居るのだろうが、まだ会う機会がない。


そしてザルド王国には夢見の姫ラーサが城の奥に静かに佇む青白き月の塔に鎮座していた。


先に到着していたジタンの配下セグが占いの館で会っている。

依頼の内容をなるべく早く知りたいためであった。


要件は危険な要素をタップリはらんでいたのだ。


日が沈んでから暫くしてようやっと、ジタンとロイドは城下町にたどり着く事ができた。



「やっとですな」

マルスがその巨体を揺るがす華奢な椅子に座りながら、嫌味をいった。


随分マルスにしては、嫌味を薄めて言ったほうであろう。


ー やっとこさ、4人そろった。なにのろのろ歩いやがる。


と、言い放ちたいところをジタンの手前、飲み込んだ、くらいだろう。



「致し方あるまい」


ロイドが言えば、マルスのハイバ猫の尻尾より短い我慢の紐が切れるのだが、普段と違い今回は取っ組み合いまでには行かなかった。


大体、この二人はジタンがいなけれぱ、絶対一緒には居ないタイプだ。

だからこそ、ジタンを主と仰ぐ、マルスとロイドはくっついていられる。


マルス、ロイド、セグはのちにジタンの風の王国、3大臣と呼ばれるが。

それはまだまだ先の話し。


マルスはジタンが間に居るのと、それ以上にひさしぶりに会えたジタンに迷惑をかけたく無かったせいもある。


4人はセグが予め取っていた宿に合流していた。

町の中心から離れた、それでも品の良さそうな二階屋の旅人専用の旅館であった。



「マルス、君血の匂いがするね。何かした?」

ジタンの問にロイドとセグがジロリと睨む。


「え!いや、今話そうとしていたんだ。本当たぞ」


慌てた様子も隠さずマルスは椅子から立ち上がり、ジダンに力説する。


「うん、分かっているよ、話してくれ」


セグがニヤニヤするのを、マルスは凄い眼で睨みながら椅子に座った。


セグは町であったひと悶着を知っているのだ。


「居酒屋で知り合った貴族のせがれ達が暴漢に襲われたのを助けたんだよ」

「へー!マルスが助けた!?」


ジタンは素直に驚く。


暴漢は4人。内3人は首を切断され即死。

残る1人は全身打撲の重症であった。

その1人も数日後にお亡くなりになっている。


「宝物殿の怪異の話しをしていた貴族のボンボンが店を出た時、後をつけていた輩を見つけて、そんで面白い話しを聞けそうだと思って、ね」


ー やれやれ、それで手荒な真似か。



その後、騒ぎを通報され衛兵が駆けつける事になった。

辺りに生首か3個、血の海に転がっているのだ。

大騒ぎにならない訳がない。


しかし、マルスは逃げる訳でも無く、大人しく衛兵に捕まった。

マルスはまる1日、城下町西側にある衛兵の詰所に連行され、牢屋に入れられる事になった。


夜が明けて、マルスは無罪放免になった。

取り調べを受ける事も無かった。


暴漢に襲われた貴族の親が手を回してマルスを開放する様に尽力してくれたのだ。

どうやら彼は貴族のボンボンに助ける代わりに、そのようにいい含めていたようなのだ。

まあ、そんなこんなでマルスは自由の身になった。


ー ここでマルスを怒ってもヘソを曲げるだけだしなぁ。


ジタンは深くため息をついて、話しを先に進める事にした。


「で、宝物殿の怪異って?」


「西の外れにある宝物殿の地下で異様な声が聞こえる。て話しが最初で」


「西の外れの宝物殿?」


ジタンは思わず聞き返した。


「はい」


「あそこは不味いだろう。特に地下3階は絶対、不味いよなぁ」


「貴族の息子等の後をつけた、ごろつき連中からききだしたんですが」


3人殺して1人半殺しの連中の話し。


「それが、ちょっとまどろっこしい事になっていて」


マルスは言いよどんだ。


「?」


そこでセグが手を挙げた。マルスは言いにくそうにしていたので、間に入った格好になった。



「そのへんはラーサ姫からの依頼も絡むので、あたいから」



セグが巨体の身体を椅子の上にチョコんと乗りながら。


「ネーダ卿を覚えていますよね?」


ジタンとロイドは顔を見合わせ、絶句した。


「なんでその名がでる!」


ジタンがやな顔で言い放った。


「ラーサ姫の依頼も正に、」


「まて!」


セグの次の言葉を遮った。


「その依頼をまさかうけたのか?」

「あー、んーと、そーすね」


ジタンは額に右手をあて項垂れてしまった。


「なんでネーダが出てくる。そんな話しじゃ無かっただろう」


「はは、話しを続けます?」


セグが苦笑いを作る。


「話せ」


ジタンはそのまま目だけ動かし、言った。


セグはその巨体をできるだけ小さくしながら、マルスの件も絡めながら話し始めた。


ー またラーサにハメられた。

ジタンは密かに毒づいていた。


ネーダ卿が絡む今回の依頼の件は。


ネーダとはザルド王国の正教会の全てを仕切る一族の名である。


その一族の支配者は、2人の兄妹、ラムダ3世の名を次ぐ、兄ラムダ・ラクアス・ネーダと、その妹、ラムダ・ランリッド・ネーダであった。


彼らは5年前にこの国に立ち寄った時、ある事件に係る羽目になった。

その事件の中心にいたのが、ネーダ正教会である。


「ネーダがまた出てくるのか」


ロイドがぶすりともらす。


さてラーサの依頼はまたジタンのやる気を十分に削ぐことになった。



★★★★




最初の依頼の概要は5年前の後始末に近いものであった。


あの時、何者かに盗まれた国宝の行方が判明したと言っている。



手配されていた城の宝物の行方が分かったので、手伝ってもらいたい、であった。



あの一件には少なからず責任を感じていたジタンは、渋々話しを聞くことにした。


渋々である。


普段は王国内部で始末するのが一般的なのだろうが、ラーサ姫からのたっての頼みで、ジタンに連絡する事になったのだ。


「ラーサの依頼は宝物の奪還じゃないのか?」

「奪還ですよ」


セグはさらりと答える。


「犯人はネーダ卿が最も疑わしいと』


「!」


セグは何処を見ることも無く、目を伏せる。

ジタンはまた驚いて、目を見張る。


「何でまた」

ジタンは以前の記憶を掘り起こしながら、聞き返した。


ー 確かに、今の王制ではあのネーダには何も出来まい。


だからこそ、5年前のやり残した件は無念であった。



ー ラクアスにランか、国としてあの二人には流石に手は出せないか。やりにくい。



セグが話しを続けても良いか目配せで確認し、口を開いた。

「マルスがヤッタ、ゴロツキの背後を調べたんですが、どうも只のならず者ではないようで」


「何がでた?」


ロイドがセグを少し睨みながら尋ねる。


「裏で正教会の汚れ仕事専門を請け負っている連中につながりがあるようで」


ジタンは首をひねりながら呟いた。

「正教会が宝物殿の地下に用がある、か」

「マルスが手を出してますからね、我らの存在は知られてますね」


セグがボソリと言う。

マルスの顔色が少し朱に染まる。


「まあそれは、城下に入った時点で知れているだろうさ」


ジタンはマルスをなだめながら。

「夢見姫の依頼と宝物殿の怪異、そして正教会、先回のやり残した案件が動き出したって事だな」


マルス、ロイド、セグの3人は無言のまま頷いた。



ー どーしても5年前の決着を着けなければならないか。


ジタンはネーダ教の二人の顔を思い出しながら、またため息をついてしまった。
















さて、ネーダ教がその本性を表してくる次回は

あまりまたせずに投稿できると信じ、

次回乞うご期待あれ。

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