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今日から学校と仕事、始まります。②莞

家族が倒れたけど、今まおうのつかいを作ってるとこだから、黙ってて

作者: 孤独

「なぁー、……救急車を呼んでくれないか?」


午前中、父がお腹を抑えながら部屋にやってきて、ゲームをしている自分にそう言った。


「はい?」


自分が実家に戻って来たのは、8日ぶり。1人暮らししろ、家から出てけと言われたが。出てったら、父と母はあんまり仲良くないし、会話ねぇからそこそこの頻度で帰って来いと言われている家庭環境だ。


「俺、ゲームしてるんだけど」


休日だろうが、ニートだった時もそうだが。一日中、ゲームをしている子が家にいるだけで親というのは安心というか、嬉しいって言葉が正しいのかな。そーいう感じが子からする。

子に家事をしてやったり、成長的なものを見守るときがとても楽しいんだろう。


「腹がいてぇんだよ」

「えぇ……」


別に父の歳から言えば、とっくにガタきてもおかしくはない年齢だ。だからこそ、知らねぇーよって感じ。こっちは久々の休日を実家まで来て、誕生日に買ったレトロのテリーのワンダーランドを楽しんでいる最中なんだ。小学生の時、めっちゃ遊んで、その時はまだいた友達と一緒にゲームをやって、外で遊んでいる時に失くしちゃって、凄く泣いたくらいだ。

当時はダークドレアムまでの配合ルートを網羅し、配合詳しかった小学生だったから。コアトルがめっちゃ好きでマネマネからの配合で作って、モシャスでアクバーとか倒したり。メタルキングににおうだちとかで遊びまくってた。

当時を懐かしんで、楽しんでいるんだ。腹の調子で邪魔をするな。


「飯食べて、寝てれば治るって」

「飯食えん。腹が痛いし、冷や汗でるし……熱はないけど。トイレが近いのに、大が出ない」

「お!ボーンプリズナーを仲間にできた。これでがいこつけんしできる~。あ、でももう一体を用意するのはキツイんだよな。どーしたもんか」

「救急車呼んでくれ」

「母さんが薬局行って、下剤みたいなの買ってくるとか言ってたじゃん」

「待てない。きつい……初めての痛みだ」

「……ワイトキングと悪魔系でも、まおうのつかいがいけるんだよな。これでワイトキング作るし、悪魔系もいるし。意外だけど、序盤でもワイトキングって簡単なんだよな」

「聞いてるか?」

「今、まおうのつかいを作ってる最中だから!、????系縛りでテリーを楽しんでるところなの!!」


昔は電池を父親からもらってたな~。今じゃあ、自分の稼いだ金でゲームを楽しむ。この暇とこの達成感には子供の時に遊んでいた感じとはまったく違う。

良い気分である。

勉強から逃げたいからの遊びから、労働から解放された遊びの違いって感じ。

せっかくの休暇を父親の体調で崩されてたまるか。ハーゴンはもう作ったし、もう一体のワイトキングはまおうのつかいにしてやるのがいいだろう。


「おーし。これでりゅうおうができるし、りゅうおう(ドラゴン)にもできるぞ」

「……いや、だから救急車……」

「休日はゆっくりさせてくれよ。寝てるか、トイレにいなよ」


そんな午前だった。

昨日の夜から体の調子がおかしいとは言っていたが、ゲームをしている自分から見れば、ただの風邪かなんかだろうとしか思っていなかった。だって、歩けるし、トイレいけるし。飯食えないとは言うが、飲み物はいけるんだ。別に健康体じゃん。働けるでしょ?

こっちは昼休憩ない状態で、夜通しも珍しくない仕事をしてるんだよ。甘ったれるな!って、親じゃなければ言ってるかもしれない。

イライラを早く解消したいという気持ちもあったから、父親が放置状態。


序盤の扉しか使えないから、レベル上げに苦労しながら、1時間くらい。

その間に母が薬を買って来たり、ドタバタしてたりなんだりで……俺だって、まおうのつかいとアンドレアルを育成するのに大変だったんだ!


「うー。お腹が痛い」

「分かったから救急車呼ぶから。じっとして!」


結局、母親が救急車を呼ぶ事になった。歩けてはいたので病院に行きたいと父が、タクシーを呼んでまで行こうとしていた。だが、今日は日曜日。急患で行った方が確実だって事で、救急車を呼んだ。


「部屋片付けて!扉閉めて!」

「え?え?救急車呼ぶの?」

「しょうがないじゃん」


りゅうおうを丁度、配合できたところ。キリもいいからゲームを止めて、今更心配の顔をして父親の様子を見る子。

母も自分もそうだが、腹痛いだけでしょ?としか思っていない。しかし、当人の父はかなり深刻で……


「救急隊付きましたー」

「大丈夫ですか。痛いところはどこですかー」

「お腹のところと、吐き気もありまして、熱もある気がして、死にそうでー」


まぁ、大袈裟で自分の状況を伝えていた。

それを聞くたびに家族としては、何言ってんだかという感じだった。

救急で駆けつけた方も言っていたが、


「意識はあるんで、大丈夫でしょう。付き添いは……お母様ですか」

「はい。私が付き添います」


そんな感じで担架で運ばれる父親。付き添う母親。病院に行ってくる……。家に残る自分。


「……デスピサロ作るか」



昔から言いたかったが、デスピサロの配合ってメチャクチャ難しい。


「あー、ゲームする気分も無くなった」


午後もかなりプレイしていたが、ゴールデンゴーレムまでしか作れなかった。

これはきっと父親を心配していたせいでもあるな。



◇        ◇



「10日ほどの入院と、手術が必要ですね」


後日。父の命に別状はなかったし、後遺症が残るような病気でもなく、ホッとはした。

コロナの関係もあって、お見舞いなどができないという状況ではあったが。


「父にスマホやら本を届けに来ました」


実家から荷物を届けるとかをするため。父の世話や母さんの家事手伝いなどで、10日ほど実家に帰っている自分であった。

未だにデスピサロできないんですけど。




色々ありましたが、始めはこんなんでした。

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