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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第一章
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王都


モモのふわふわの体のおかげか、意外にもしっかり眠れた私はエルイットさんとのんびり歩いて王都へ向かっていた。少し体は痛いけど野宿だから仕方がない。今まで恵まれた環境にいたんだと痛感した。



「そういえば、王都へ入るのに許可とかいらないんですか?」


「必要ないよ。ただ、魔法が施された門を潜るだけさ」


「魔法の門…?モモも入れます?」


「勿論!門には悪意を感じ取る魔法が刻まれていてね。サシャさんとモモ君なら大丈夫!私が保証するよ!」



妙に自信あり気だがもし入れなかったらどうしよう。悪意なんてこれっぽっちもないけど…うん、もしダメだったらモモと逃げよう。咥えてもらえば速いはずだ。


どうやらこの世界は人間の国同士が争っているらしく、王都が近くなればなるほど兵も多く配置されているそうだ。


私達が今向かっているのはリングラングリン王国…というらしい。噛みそうだと思ったのは内緒だ。あとちょっと楽しそうだとも思ってしまったけど。


リングラングリン王国は人種差別もなくとても平和な国で、王様も穏やかな性格で争い事が嫌いらしい。けれどそこを逆手に取られ、近年他国からのちょっかいが絶えないんだとか。


対抗する為に攻撃魔法を開発したり強力な従魔を増やそうとしているらしいが、中々上手くはいかない…まぁそうだろうなぁ。そういうのってきっと何年もかけて結果が出る事だろう。



「ヘルハウンドを連れているし、サシャさんはもしかしたら従魔騎士団に勧誘されるかもしれないねぇ」


「…従魔騎士団?」


「従魔を連れた者だけで編成された国の部隊さ。従魔自体誰でも連れているわけじゃないから、まだまだ人数が少ないけれど…国民からも人気があってねぇ」


「へぇ…でも私達には無理ですよ。ヘルハウンドといっても戦い方すら知らないし、ただ生きるのに必死ですから」


「うーん…そうかもしれないけど…でもきっと声がかかると思うんだよねぇ」



ほら、なんてエルイットさんが指差す方。あ、あれが王都だろうか?大きな壁と門が見え、………んん?



「エルイットさん?何か、土煙がこっちに来てる気が…?」


「あぁ、やっぱり。じゃあサシャさん、私とはここでお別れだね。何か困ったらエルイット商会まで足を運んでおくれ。サシャさんの事は従業員全員に伝えておくから」



ちょっと待ってください、と口を開いたが声にはならなかった。代わりに土煙を盛大に吸い込み咳き込む。マジで何事…!あの土煙もうここまで来たの?!かなり距離あったと思うけど?!


ゴホゴホと咳をしていれば、ぐぇっと声がもれる。お腹に強い圧迫感。



「よぅエルイット!無事で何よりだ!」


「馬車だけ帰って来たもんだから、商会のみんなが心配してたわよ?」


「これはこれは…わざわざありがとうございます。おかげ様で、無事帰って来れましたよ」



少しずつ晴れる土煙の中、薄っすら見えたエルイットさんは口元にハンカチをあてていた。え、なんでそんなに用意周到…?!


そして、気付く。………私…誰に担がれてんの…?



恐る恐る右を見れば、ちょっといかついおじさんの顔。無精髭が似合うイケおじ……いや待て待て。どうなってる?



「あ、団長ったらまた女の子担いで…そんなだから女性人気ないんですよ!」


「え、女だったのか?すまん。けどこの方が早いし今はいいだろ?」


「全く…後でちゃんと謝るんですよ。じゃあエルイットさんは私が送りますから」


「任せた!じゃあなエルイット!」


「はい。サシャさん、頑張ってくださいね」


「え、ちょっ、ぐぅっ…?!」



何も、言えなかった…!


なんか美人に手を振られたけど振り返せなかったしエルイットさんも笑顔だったし!何がどうなって…?!


このおじさん、私をどうするつもりだ…?!



「も、ももぉぉお……!!」


(楓っ!くそ、この変態め!俺の楓をどうするつもりだ!)


「おっ?さすがヘルハウンド、速いなぁ!そのまま着いて来いよ!」



また速度あがった…!


私を担いで走り出したおじさんは、超絶足が速かった。モモが追いかけて来てくれてるけど距離は縮まらない。てかモモ…俺のって言った!俺の楓って!不謹慎だけど嬉しくて顔がにやけるぅう!


…はっ!によによしてる場合じゃなかった!絶賛連れ去られ中なんだった!



「ちょ、っと…!いきなりっ、なんですか?!」


「喋ると舌噛むぞ?」


「じゃあ!止まって!」


「それは出来ん!貴重な団員を逃したくはないからな!」



おじさんの走る勢いが凄すぎるせいでまた土煙があがり、周りの景色が何も見えない。あぁ、モモ…!きっとすごい汚れてるんだろうなぁ…!


この人が何を言ってるのか意味がわからないしどうしたいのかもわからないけど、足を止めるまで待つしかなさそうだ。


願わくば厄介ごとではありませんように…!

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