ミア
*********************
|
|
|
ー辺りを見渡す…そこは、ライが寝てた場所である。しかし、<現在>までとは異なる。
ーー暗い部屋、窓枠から覗く月明かり、まだ新鮮な家の造りは異世界だ。…手には、さっきまで見ていた参考書がある。
ーーー怠い疲れが、このからだにはある……稽古中の擦り傷が痛々しく残る。どうやら、<現在>の世界のライの身体の状態と異世界の状態は、関係無いようだ。
「眠れなかったですか………」気配が無かった所から、唐突に言われる。
…反射的に目を凝らす。
「私ですよ、シンです」
「はぁ~」
「驚かせて、すみませんでした。あやさんに、留守の間頼んでいてほしいと言うことでして」
「あ~なるほど、、、今ってどれくらいですか?」
「三時から四時くらいです」
「昼間で寝ると、こっちでは夜か…」時間軸が在ることと考える。
「大丈夫ですか?」
「全然、大丈夫です。でも、それぐらいに起きると…」
「暇ですか?」
「とても暇っす……ここら辺歩くこと出来ますか?」
「勿論、、、案内しますよ」
「ありがとうございます‼」基本的に興味があった異世界の場所だ。少し眠くても、回ってみたい。
|
|
ライはすぐさま立ち上がり、外の世界へと行く。
…基本的なことはほとんど地球と同じだろう。ただ、サイズ感がここら辺地域は健全な方で、デカイやつらが遠くにチラホラ見える。
「…ん?」チラホラ見える…と、言ったが正確には、大勢見えだす。
「別種の、中小区分恐竜か……問題は全く無いです」
「マジっすか、、、」問題が全く無い……とは、思えない。…ここまで、微かな音が聴こえてるのだから騒音被害程度には、為るのでは?
ーーその瞬間、風が揺らぐ感触がした。
!…通り向けるような風が吹いたと同じに物凄い波が、恐竜たちに注ぐ。
「ふんがぁっーー」最後に疑問の響きが伝わる。…そして、方向が、変えられる。
波が発生した中心には、あやさんがいた。
「まさか、今のは!」
「彼女ですよ」
「…‼」それは、絶対に届かない次元で、多大なエネルギーを持つ…少女だ。恐ろしい一面にライは壁を感じてしまう。
ーー見える範囲に居るのに、どこか、別のヒトなのか、、、でも…あやさんはふらりと、膝から倒れる。
「ライさん、あやさんの元へ」シンさんの一声に我を取り戻し、彼女の元へと向かう。
|
「大丈夫なのか?」
「大丈夫…もう収まった。心配かけてゴメン」
「無茶はしないでください。つい最近まで、戦いの連日、無理は必要ないです。撃退は私が引き継ぎます」
「お願い………」あやさんは、申し訳なさとどこからか、運び込まれる責任と罪悪感と不安が、垣間見えた。手の拳が引き締められ、下を向く姿は先程までとは大きく異なる。
ーーこの少女は弱い部分が、存在する。
…ライの話をここまで、聞き入っていたのは、何かの不安でもあるのだろう。
「あや!大丈夫かいな‼」富沢さんと複数人やって来る。
「うん…大丈夫そう…それより、やっぱりこれは……」
「……違うやろ、<あの事>は推測でしかないんねん。自分の身体を心配しいい」
「そうだけれどーーあまりにも、ここらの方向だけなの……偶然すぎない?」
「!……確かに、な」
「それと……目が私に向けられている。嫌な視線」
「ドベルとの関連を疑ってるのか?」
「うん、感覚でしかないんだけど……」薄暗い中、皆はその可能性を否定するような、、、いや…実際は棄てきれていない。が、信じたくないのか、余程の馬鹿げた仮説で在るのか、あやさんの考えすぎと彼女に声をかけている。
「あやさん、大丈夫です?」アランがくる。
「大丈夫よ」
「住民たちに被害を与えたくないのは、分かりますが、まずはご自身を大切にしてください」
「…そうだよね」
「らいくんも心配かけて、ゴメン」
「全然大丈夫、」
|
|《あやさんは休息の為戻っていく》
…今は、あやさんの代わりにシンさんが、恐竜たちの迎撃を行っている。まだ、代わって数分間しか、経ってなく、何も問題は無い。
「…ここに残られるのですか?夏ですが、寒いですよ」
「シンさんが、討伐してるの見たくて」
「分かりました」
|
|||《そこから、約一時間》
|
寝付こうとも、寝付けない状態にライは陥っていた。(もう、離れようかな)その時
「はぐれた一部の恐竜が来てますね…」ライもシンさんに習って搭から覗いてみる……数は4、サイズも他のより小さく、怯えている様子だ。
…群れから置いていかれたのだろう。
「シンさんたちなら、一瞬ですね」
シンさんは少し考えてから、
「ライさんが討伐するのは?」
「えぇ‼」困惑してしまう。ライは異世界である程度の力はあるらしいが、対マンでは戦闘員100人に3. 4 人の実力と現時点でも中々にスゴいのだが、精鋭とあやさん、シンさん等を除いている。
…つまり、化け物ほどの力は無いのだ。
「この世界は、下剋上です。生き残る術が必須…ライさんの力加減のレベルも知りたいですし」
「死なないですか?」
「非常の場合は、私が全力で守ります。しかも、大怪我しないと思います。ライさんの体質では」
「防御耐性、獲得!?」
「普通の人より、少しだけ、体が頑丈…そんなですけど」
「やっぱ、悲しい」ライは少し他人より、優れている部分はある。しかし、上の上という人に追い付けていなかった。それもあって、異世界でも同じとは、運命を感じてしまう。
…まぁ良い。異世界では大いにラッキーではある
「やりますか…」いろいろ言ったが、楽しみだ。
|
|
|
シンさんは、数人の戦闘員に壁の中の人たちの安全と不安を煽らないよう少し離れた所で撃退をやるよう指示してる。
一方、ライの方は万が一に備え、シンさんが見守る。その視線の先には、アトランタと呼ばれている恐竜…体型は2メートルを越している。
ーー「本気でやるのか……」緊張で足がかじかむ。異世界に来て、自分がこれぐらいの相手……とは到底思えない。少なくても、アトランタは怯え理性を無くしていた。その牙に、草食系の特長や、痩せた体。
ーーーでも、現実の世界だったら、噛みつかれたり、突進だけでも骨折はするだろう……死なないとは、言い切れ無いのだ。
「覚悟は出来ましたか?」
…覚悟は決めたと思う。震える足を前に向かせ近づく。同じく恐怖に刈られているアトランタがこちらを見て威嚇してくる。
「こわっ……」弱腰になってしまう。そんなこちらの気持ちを察したのか、逃げる選択をなくし、攻撃態勢をとってくる。
「木刀は、前に向かせなさい‼」
「はいっ!」厳しめの言葉が入る。…構え直す、こちらも前屈みになり、どんどん時が遅くなるようだ。
…相手の足が動いた。真っ直ぐこちらに、飛び込んでくる。ライは泣きそうなまま、木刀を体を、尚も相手に向ける。アトランタは泣かば狂気に襲って来た。
「ぐっ……おりゃゃゃゃ‼」おもいっきり、振る……が、恐怖の余り振るタイミングが速すぎて、木刀の先だけがあたっていた。その瞬間、、、
「バシュ、クォォォォン!」木刀がかすった音と、悲鳴が響く。かすっただけなのに、かなりのダメージを負っている。
……ライが意気消沈してる間に、数匹のアトランタは、一斉に逃げ出していった。
「ふむ、やはりライさんは感情が入るとより力が制御出来ない様です」シンさんが歩み寄ってくる。
「ほぇへ?」
「折れた先の木刀を見てください」
「……あっ」真っ二つに折れている。まぁ、地面にもあったてたし、力が強すぎたと言うことか…
「木刀を真っ直ぐ振れていない……右下がりに当たっている」
「__?それになにか問題が」
「ライさんは、利き手とのバランスが取れていない……何回も言いますが、力制御が出来ない」
確かに、そうだけれど、そんなに………
シンさんの表情はその眉間深さが、酷いものを物語っていた。
「ライさんは、真っ直ぐ木刀を振ろうとしてましたよね?」
「_?もちろん」
「ライさんの振り方を再現します。見ていてください」そう言い、シンさんはライを見ながら、刀を振る。
「こんな感じでしたよ」
「どんな感じでしたか?」
「こんな感じです」ともう一回、刀を横にスライドさせるだけだ。
「まさか……その振り方ですか?」
「はい」
「嘘ォ‼」周りの戦闘員に確認の視線を送る……が、みんな首を縦に振るだけだ。
「真っ直ぐ振ろうとしてたのに、、、」
「私の推測ですが、もとの世界の感覚に慣れてないと思います。その状態だと、危険ですので……」
「やばぁ………」言葉が出来ないほど、感覚が違うのだ。
「ライさん、、、疲れたと思いますので、さすがに休まれては?」
「そうですね……」身体的な面より、精神的な面で疲れた。
|
再び寝ていた場所まで、戻り布団に入る。
…隣に置いてあった参考書を見て、思う。
(異世界に持ち込んだものは、戻ってくるのか?)戻らなかったら、かなりヤバイ……異世界に持ってきているのの中には、ライのスマホが在るのだ。
ーーそうであってほしくないと、参考書が戻るよう意識しながら、眠りにつく…
*********************
ー「うっ…朝か」まぶしい光に目を細めてしまう。当然のように部屋は寝た前と変わっていない。のに、参考書だけが無くなっていた。
「マジかよ、、、」現実世界から物体に向かって意識を重ねると、その部分は異世界に持ち込める。しかし、異世界から現実の世界には、意識しても、駄目なようだ……
ーー《アレ?俺、終わったんじやね‼》ーーー
|
\この予感は時期に、本当のモノだったといずれライは自覚することとなる。
|
|
|
ー月曜日、学校は無い、三連休である。特に思うこともなく、1日を終える。夜、布団の中に入り眠りにつく……
*********************
ー先ほどまでの、暗いへやでは無い。眩い光りで、覆われている。
「疲れは取れましたかな?」ライさんが、声をかけてきてくれる。
「凄く、ぐっすりと」体が疲れていたのか、かなり深い睡眠が出来たようだ。寝ることを幸せと感じるものとして、深い睡眠が取れたことは、気分が良い。
「私は、明日の準備があるので、ライさんの見守りに、あやさんが来ます」
「おぉ、良き良き。でも、体調は大丈夫何ですか?しかも、何か気にしていたようですし…」
「…あやさんは、恐竜たちの行動が、自分自身に在るのかと考えていることを、悩んでいます」
「何故?そうなんですか?」
「全く、そのようなことは確認できていませんし、恐竜が、わざわざあやさんを攻撃してくることの意味が在りません」
「だったら、なんで……」
「確かに、恐竜の不自然と言える被害、それまでのドベルの激しい攻撃がありました……でも、それはそこまで不可解なことでないと、私を含めみんなが思ってました。あの恐竜の目を見るまでは…」シンさんはそこまで言い、少し間を開けて
「あれは、目的に対する殺意が、しかも、私も昔何処かで向けられた経験がある__圧倒的な人物の重圧が」シンさんの顔と視線の先には、絶対に譲れない何かが_____家紋らしき印にふれどこか遠くを見ていた。
|
|
|《…その後、あやさんと交代の時が来た》
「らいくん、昨日は心配かけてごめん」
「いえ、いえ……そんな。体調大丈夫何ですか?」あやさんの悩みを知り、どのように話せば良いか迷ってしまう。
「らいくんが、暴れても取り押さえられる程度にはね」冷酷な含みのある笑みで返される。
「よ、良かったです‼」……(コワッ、小悪魔)
「フフッ♪らいくんが、ここの世界のこと知りたそうだから、この辺りを、今日は回ろ」
「はい⁉」……(可愛い過ぎ、ドSな感じがいい)謎の性癖が生まれだしていることに、思うところがありながらも、喜んでしまう。
__その後は、ひたすらこっち<現実世界>と<異世界>の文化の違いや、ライについて、あやさんの立場を話し合った。あやさんは、アンダーチェートの一番の《ライン》の娘……だが、血は繋がってないらしい。通常ではあり得ない数の属性でチャクラと量を操れると言う。
「てかな、別に何故こんな体質かは知らないけど、遺伝要素や後天的出来事で変わるよ」
「ヘェ、俺とかは?」
「全く、、、可哀想だけどムリって断言できる」
「希望は絶たれた……」やはり、出来ないことは、出来ないのだ。(あっ、)
……誰かの、叫びが聞こえる。
__
「ママ、パパ、お姉ちゃん、、、……」か弱い声が、聞こえる。
そこには、布にくるまった少女がいる。泣いてる少女は、ゆっくりとこちらに目を向ける
「………」助けを乞うような視線
「ミアちゃん⁉大丈夫?」
____________________*
ーあやさん家に居る。ミアと呼ばれる少女は、数少ないドベルからの捕まる事無く、逃げて保護された《火、光属性》が使える種族らしい。年齢は、10 歳くらいの幼い印象が彼女から見える。何でも、ほんの前に、一族が襲われ家族の手によって、アンダーチェートの所まで逃がされたらしい。
ーー(ツラいだろうな……)その目線で考えたら、簡単に想像できてしまう。ライは、反抗期真っ盛りで、今、家族が嫌いだ。少しすれば、一人でも、制度が甘い日本社会では、生きていくことはできると思ってる。
……しかし、この子は自分の意思でなく、他人から離されたのだ大切な家族を。
「……大丈夫だから、、、家族はすぐに会えるようにするよ。……私たちで」あやさんの手が強く、優しく、彼女の手を握っている。
「私は、用があるからその間、ミアちゃんを見守っていてくれる?」
「くしくも、俺を見張る人って必要じゃ?」
「ううん、一応周りに護衛つけるけど、力余って他人にケガはしなそうだから………」
「俺、そんな印象ですか。悲しいっすよ」
「私と手を握った時の握力、普通の人なら、骨折ってたよ」
「ヤバ~」
「じゃ、ヨロシク」
「任されました」最後にグッとサインで送る。
「後、一つお願いが」
「何んですか?」
「念のため、家からでないでね」
「はい」
「おにぎり、机に置いといたから、ミアちゃんと一緒に食べてね」
「おけです」
「ごめんホントありがとう、またね」
「いってらっしゃい‼」あやさんは、最後に手を振り行ってしまった。……何となく、気恥ずかしい思いがまだ在りながら、ライも手をふって送る。
「さぁて、、、任されてみたもの、やることないしシンさんに言われてたストレッチを」
「お腹すいた~~~!」甲高い声が響く。さっきまで、泣いてた少女だ。運んでる途中、よくお腹がなっていたので、起きたら、遠慮させないで食事させようと思っていたのだが……ここまで、大きな声で主張されるとは、思わなかった。
しかも、猫みたいな性格で、初対面の人に対しては、警戒心が強いらしい。(…嘘だな)と思ってしまうあどけなさだ。
ーー俺は、一言の大きな声の為に、あやさんが用意してくれたおにぎりを取りに向かう。
「んっっっ⁉」絶句してしまう。可笑しい可笑しすぎる……ソコには、サッカーボールサイズの巨大おにぎりが二つ置いてあった。
……置き書きには、<らいくんとミアちゃんの分。心配だからこの量で>と簡素に書かれているが、この量、ミアがどれだけ腹減ってても食えるようじゃない。(俺も、食えた量じゃない‼)と思いつつも、重量のあるおにぎりを運ぶ。異世界に来ての、力でそれほど重くないが、現実世界のライなら、一つでも運べもしないだろう。
「食事だよ」
「!!こんなに…ありがとうございます。でも、そんな」
「あやさんが作ってくれたから、彼女に言ってね」
「ーー分かりました。でも、私を連れてきてくれた、あなた様には、とてつもない感謝を_」
ミアは大げさ過ぎることを心から真剣な眼差しで言ってくる。……ちょっと、まだ、戸惑いがあるのか、お腹を鳴らせながらも、上目遣いでもじもじしてる様子が、あったので、ライは笑いながら、こっちも頂きますと言い,食べるようにした。そして、ミアもやっと食べ始めた。
____________________*
|
|
|
《少女、ミアは巨大おにぎりを平らげてしまうのだった》
……「この世界の胃袋は、どうなってるんだよ‼」
最近そう思うことが、多いのだ。