別れ
「母ちゃんどうする?」
ソラは不安になりながら母であるメタナルに尋ねた。そんな不安に怯えるソラを見て自分が怯えていてはダメだと思い、メタナルは覚悟を決めるのだった。そうしてメタナルは足早に神父の近くに駆け寄るのだった。
「ピース、あなたに頼みがあるの。」
「ほう。メタナルが私に頼み事など珍しいな。なんだ?」
「どうせ今から逃げても全員は助からないのでしょう?」
「あぁ。おそらくここにいる人数の半分いや生き残ったとして4分の1の人数だろうな。」
ピースはまるで苦虫でもかみつぶしたような苦痛に顔をゆがませるのだった。
「やっぱりね。」
メタナルは知っていたのだ。悪魔の恐ろしさを。強さを。凶暴さを。
「で頼みとは何なのだ?}
「ソラをあたしの代わりに連れて逃げてほしいの。その代わりに私はおとりになるわ。どうせみんなで逃げてもあやしまれるでしょう?」
ソラは何いってるの母さん?と思いあまりの驚きに硬直するしかなかった。
「それはそうだが、君一人ではとても・・・。しかも君にはもうかつての力は・・・」
「一人じゃないぜ!」
「あたしたちも戦うわ。」
「メタナルさん一人にそんな重荷を背負わせてたまるか。」
その声は遠くから聞こえてきた。他にも来ていたまちの親たちであった。
「みんな・・・・」
メタナルは感動に心を震わせるのだった。
「だからさピースさん俺たちの子供たちも頼むぜ。神殿に詳しいあんたが頼りだ。」
「あたしの子供も頼んだよ。」
そう言われると神父は胸を痛めると同時に責任感が芽生えるのだった。
「あぁ。任せてくれ命に代えてでも守って見せよう。」
「ええ頼むわ。」
「グァァァァァァァァァァァ。」
「悪魔が近くまで迫ってきているわ。さぁはやく。」
それぞれが自分の子供たちに短く別れの挨拶を済ませる。周りにはすすり泣く子供、訳が分からず硬直する子供、親のぬくもりに包まれる子供皆様々だった。
「母さんも一緒に逃げよう。」
とソラは言うのだった。
「ダメよ。ここで逃げたらソラ達まで危険にさらしてしまうわ。」
「でも・・・」
口を噤んでしまうソラ。その瞳には涙が浮かんでいる。
「大丈夫。母さんを信じなさい。どんな時でも私はソラを見守っているわ。」
「かかぁさぁん。」
涙に目を潤ませながら母親に抱き着くのだった。それをまるで太陽なようなほほ笑みで包み込むメタナルだった。あぁなんて温かいのだろう。ソラが生まれてきてくれてよかった。
「さぁはやく逃げなさい。ピース頼んだわ」
「ああ。行こう。」
ピースに腕を引っ張られメタナルからどんどん離れていくソラ。
「かあちゃん。かあちゃん。かあちゃん・・・・・」
ひたすらに名前をソラは呼び続けるのだった。
「ソラは絶対守って見せる。ここからは一歩も通さないわ」
「ああ俺の可愛い子供には指一本触れさせやしねえ」
「グァァァァァァ。」
「来たわね」
親と悪魔の戦いが始まるのだった。