02
「どうかしたの、イシュ。「アッシュール」へ向かうのでしょう?」
腕を組んで難しい表情をするイシュに、シュガルが声を掛けた。それだけでイシュの表情は和らぐ。
シュガルも普段、湖に浮かぶ城で着ているシンプルな黒のドレスではなく、全体に刺繍のあしらわれた紫色のドレスを身に纏っている。
「その方法について悩んでおるのですよ。姉上」
そんな返答にシュガルは不思議そうに首を傾げる。然もそんなことは悩むべきことではないと言わんばかりに。
「馬車でも使えばいいのでは良くて?」
シュガルはイシュの後ろを指をさす。
「その馬車があれば何も困ってい、ない、んだ………あ」
振り向きながらイシュは言葉を詰まらせた。何、初めに確認したではないか。この村には民家が三軒と馬車小屋が一戸。そう、馬車ならばあるのだ。
「ネガル」
「はい」
大胆に肩の露出した青色のドレスに身を包んだネガルは、さっとシュガルの脇に寄った。
「姉上を少し頼むぞ」
「お任せください」
シュガルを背中に隠すようにネガルが前に立つ。
「無茶はダメよ?」
ネガルの後ろからひょっこりと顔を出してシュガルがイシュに釘を刺す。その一方で右腕を触れられたネガルはその顔を真っ赤に染め上げた。
そんな様子を見たイシュは小さく溜息を吐いてから、頷いて馬車小屋に足を向けた。




