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「………サナ様」
黙っていたムシュマッヘが小さく口を開いた。彼女の声に咲和はビクリと肩を震わせた。
「サナ様……申し訳ございません。ワタシの声がサナ様を混乱させるとは思ってもなかったのです。ワタシの認識不足でございました。以降、サナ様の身の回りのお手伝いは他の者が担当することになるでしょう。ですので、ワタシの処遇につきましては、その者より伺うとします。この度は、大変申し訳ございませんでした」
声を震わせながらムシュマッヘは傅いた。
「では、失礼致します」
立ち上がり、踵を返す。その腰からは艶かしく光を反射する太い蛇の尾が伸びていた。
「あ、あの……」
背中を見せたムシュマッヘへ手を伸ばす咲和。しかしそれは、ラフムとラハムによって阻まれる。
「「あの仔は固い性格だから、今追っても意味ないわ。後で、別の者から言伝を頼みなさい。その方があの仔も納得するわ」」
彼女のことを全く知らない咲和は、二人の言葉を信じるほかなかった。