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勇者の死後、咲和を抱きかかえたムシュフシュは帝都までやって来た。ココに来れば、十一の獣と合流できると考えたからだ。しかし、未だ帝都には誰も戻ってきていなかった。
彼女の腕の中で、咲和は小さく寝息を立てて眠っている。
静かな帝都を行くムシュフシュは、独り言ちる。
「姉さんたちに会ったら、なんて言えばいいんだろう………」
ムシュフシュは他の十一の獣から見れば裏切り者だった。勇者に与する反逆者。そんな者が、自らの王を抱いて戻って来たとなれば、その場で戦闘になりかねない。
*―*―*―*
気づけば、ムシュフシュは城の前までやって来ていた。そして、躊躇いなく扉を開ける。
「「お帰りな――――――――――ムシュフシュ、どういうつもりかしら?」」
扉を開けた先には、ラフムとラハムが手を繋いで待っていた。しかし、その表情は険しい。
「ラフム様、ラハム様。お久しぶりでございます。ムシュフシュが帰還いたしました」
「「貴女の帰還など誰も望んでいない。サナを置いて直ちに去れ。さもなくば―――」」
「大いなる母の命により、私はココに帰還いたしました。大いなる母は私にサナ様を守れと言った。そして、皆にもよろしくと」
ムシュフシュは二人の言葉を遮って告げた。
「「母様? …………じゃあ、先の光は」」
二人の表情が崩れる。
先の蒼黒の光は「ウェールス・ムンドゥス」の全土から確認できた。当然、二人の目にも入ったことだろう。そして、そこから二人は答えを導き出す。
「「つまり、サナは母様を降ろしたと?」」
「そう言うことなりになります」
「「そう……そうだったの…………サナが…………」」
二人はその場に、力が抜けてしまったのかしゃがみ込む。その表情は安堵と驚愕の混ざった不思議なものだ。
「大丈夫ですか?」
「「え、ええ。大丈夫よ。問題ないわ。まずは、サナをどこかの部屋で休ませなさい」」
「かしこまりました」
小さく首を垂れて、ムシュフシュはその場を後にした。彼女の背中を見送った二人は、
「「私達も母様とお会いしたかった………」」
小さな嫉妬を言葉にした。




