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「原初降す決別の時。混沌は解かれ、秩序を新たに生まれ変わる。世界を成すは、我らが理。廻り、育み、営み、そうして世界は進んで行く。しかして、我らは原初を忘れることはないだろう―――」
握られた戦斧はその姿を、マルドゥクの身の丈すら超える巨大な弓へと変えた。大いなる水の盾と大いなる風はマルドゥクの体から抜け出し、空中で混ざり合って、一本の矢へと変貌する。
大いなる風が体から抜けたことによって、右脚の支えはなくなった。しかし、痛みを気にすることなく立ち膝になる。右脚の断面から血が滲み出る。
戦斧の変貌した弓に、自らの権能を賭して作り上げた矢を構えた。目標は、サナ。
「――――原初降すは我らが愛と知れ!」
矢は射られた。それは終焉を齎し世界を開闢する一射。その速度は空気の壁を破壊する。自身の身体的損傷すら厭わないその一射にサナは気が付いた。
「ほう、やるではないか」
瞬間、魔術陣を描く。
「原初の名の下に、世界を睥睨し選別する。独断、偏見、自己愛とエゴ。誰も殺したくない、誰も傷つけたくなどない。ならば、元から無かったと、そうすれば傷つかず済むではないか。故に、汝などいなかった」
詠唱の完了し、左腕を「原初降すは我らが愛と知れ」へと突き出した。するとサナと一矢の間に十一枚の薄紫色の円形の壁が現れる。そして、一矢と膜は激突する。
ガラスが砕けるような音と共に壁の一枚目が砕かれた。しかし、一矢の速度は確実に落ちた。一矢は二枚目、三枚目と、その速度を落としながらも砕いてく。
「やるではないか………」
ふと、右腕を手繰るように振るった。
「何ぃい!」
その意図に気が付いたマルドゥクは咆哮する。




