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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
7章 原初

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10

 ムシュフシュの『我が毒は勇ましき者の為に』はマルドゥクに対する専用のスキル。勇者たるマルドゥの受ける傷を肩代わりし、攻撃を行った者に毒を付与すると言ったものだ。


 彼女の流した血液がマルドゥクへと届く前に、何かに阻まれたかのように途切れた。


「そして、何よりだ。私が自らの子を手に掛けるわけがあるまい」


 サナの瞳には一つの色が灯る。


 それは愛ではない。


 それは憎悪でもない。


 それは、どこまでも純粋な闇色(さつい)だ。


 魔力を伴った羽ばたきで、雲よりも高く飛翔する。


「塵が多いな」


 地を睥睨し、魔術陣を描いた。


 それは、複数の魔術陣が幾重にも重なった複雑かつ巨大なものだ。


九重(ここのえ)の蛇焔は、天焼き、地焼き、その(あぎと)で世界を砕く。支配などあらぬ。あるのは強烈なまでの破壊のみ―――――九重の(エクスキディウム・)星壊の(セルペンス・フランマ)蛇焔(・ノウェム)


 詠唱は完了した。


 魔術陣からは咲和が今まで放った蛇焔など、比べるにも(あた)いしないほど巨大な、九つの首を持った蛇焔が姿を現した。その背中からは天を覆うほどの翼が生えている。


「なんだ、アレは――――――――――あんなもの………規格外すぎる………」


 戦斧を握る手に力が抜ける。



 「ダメだ。あんなものに挑んではいけない」そう、マルドゥクの中の何かが弱音を吐く。「ダメだ。このままでは人類が終わってしまう」そう、マルドゥクの中の何かが警笛を鳴らす。「ダメだ。(オレ)がやらなければ全員が死ぬ」そう、マルドゥクの中の何かが叫んだ。


 その何かを信じる。それが、勇者であるマルドゥクだった。



「ッ――――――――(オレ)が貴様を屠り、「ウェールス・(この)ムンドゥス(世界)」を護る! この命に代えても!」


 戦斧を握り直す。


 九重の蛇焔は天を覆い、その九つの首で地上の(あくた)を焼いていく。

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