09
「おろ? 狙いを誤ったか。すまぬな。流石に慣れぬ体ではうまくいかなんだ。なに次はうまくやって――――おろろ?」
「そう何度も、喰らってやるモノか!」
指を鳴らそうとしたサナの腕は、マルドゥクの放った大いなる風によって断ち切られた。その先からは血液が流れだす。
「ふん。まぁ、マルドゥクだしな。これくらい当然か。しかしだ」
描くことなく、腕の断面に魔術陣が現れる。既に流れていた血は止まっている。そして、そこから新たなる腕が再生する。
「再生ぐらい阻害してみせよ」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇえ! 大いなる風よ!」
右脚に大いなる風を纏わせる。それを新たな脚として立ち上がった。
「おー。すごいすごい」
ぱちぱちと拍手する。サナからすれば純粋な称賛だったのだが、傍からは煽っているようにしか見えない。マルドゥクにもそう伝わったようで、額に青筋が浮かぶ。
「なんだ? 気に障ることを言った覚えはないぞ?」
「ムシュフシュ!」
「――――御意…………『我が毒は勇ましき者の為に』」
マルドゥクの言葉に立ち上がり、直刀を自らの手首に押し当てる。そして彼女は自らの手首を半ばほど切り裂いた。切り裂かれた手首から流れ出た血液は、広がることなく、真っ直ぐにマルドゥクへと向かう。
「ほう………私の娘すらも汝の手足か」
「獣の力なんぞ使いたくはなかったが………出し惜しみしていられる状況ではないからな」
マルドゥクは大いなる風を纏った戦斧を構えなおす。その体は大いなる水の盾が表面に現れている。
「しかしな―――」
パチン、と指を鳴らす。
「なんだと!」
「なんで…………」
「―――私が自らの子の力を把握してないわけあるまい」




