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06
「ココにおられましたか」
食堂のドアが開かれたのは、降伏宣言から十分ほど経ってからだった。
「はい、お疲れ様です。ムシュマッヘさん」
入ってきたムシュマッヘは、座っていたギルタブリルに一瞥をくれる。そして咲和の隣まで行って傅いた。そのまま手を取り、手の甲に口づけをする。
「もったいなきお言葉。十一の獣がムシュマッヘ、ココに推参いたしました。残りの者も、すぐにお呼びいたします」
「いえ、私が行きます。皆疲れてると思いますから。ムシュマッヘさんはココで待っていてください。門でいいですか」
立ち上がって咲和は言った。
「御意。皆、門にて待機中でございます」
「ありがとうございます。そうだ、後ろの三人には手出し無用ですからね?」
ムシュマッヘが扉を開ける少し前に目を覚ましたイシュとネガルは肩を強張らせ、シュガルは微笑む。
「かしこまりました」
「では行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
シュガルは首を垂れ、咲和は小さく手を振った。




