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シュガルの案内で、咲和たちは城内の食堂までやって来た。そこは、部屋を分断するような長机と十五脚の椅子が用意された、長細い部屋だ。
咲和は最奥の席に腰掛けた。ギルタブリルは入り口から最も近い左側へ。咲和の脇には、シュガルと、イシュを抱いたネガルが立っている。
「我は橋渡しの獣となり、大いなる海と彼の地を繋ぐ。混ざり、溶け合い、裂け目を晒す。我が言葉は境界を越えた―――――――勝鬨は我らが母の為に」
宙に魔術陣を描き、詠唱を終えた。魔術陣はスクリーンのように彼の地を映した。
「あー、あー、こほん。ナンナイ・クルウ帝国国民の皆さん、御機嫌麗しゅう。私は「フィクティ・ムンドゥス」が王、キングゥです」
その声は、戦場を除く帝国全土に響き渡った。先の魔術は遠方へ声を届かせるものだ。
帝都の騒めきは鳴りを潜め、響き渡る咲和の声に誰もが耳を傾けた。
「帝国は我らが手に堕ちました。よって、これからは私が皇帝です。皆さんの生殺与奪権は私にあります。何か私の気に入らないことをした者は、一辺の慈悲もなく殺して見せましょう」
その言葉に帝国全土に衝撃が走った。それは前皇帝が亡くなった際の速報を超える衝撃だった。誰もが皇帝のことを支持し、誰もが帝国に負けなどないと信じて疑わなかったからだ。王国への侵攻も、今でこそ滞っているが、すぐに巻き返すだろうと信じていた。
だからこそ、この突然の帝国陥落は予想されなかった。いや、できるはずもなかったのだ。誰が、「フィクティ・ムンドゥス」の獣たちが帝国に攻め入ることを予想できようか。帝国には獣たちの怨敵である勇者はいないのだから、勇者のいる王国こそが、「フィクティ・ムンドゥス」の十一の獣に狙われるはずだと。そう思ってもおかしくなどない。




