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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
5章 謁見

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06

「魔力を廻せ! 全力で行くぞ!――――――此度、この戦場において余は無敗。敗走などありはしない。敗走などあり得ない、敗走など許されない。余の憤怒(こころ)こそ絶対の刃である――――――皇帝率いる千歴の英霊インペラトール・ヘーロス・レグノー


 床に突き刺した帝剣の柄を握り、一瞬で詠唱する。すると、イシュの体に灯っていた赤い魔術陣は消え、新たに青色の魔術陣が灯った。



「――――――――――――ッ!」

「うおぉ!」


 咲和とギルタブリルは左右に跳び退いた。


 二人のいた場所には帝剣を超える大剣が七本、深々と刺さっている。


「鎧か!」


 見上げたギルタブリルが思わず溢した。


 壁際に立っていたはずの鎧が大剣を振り下ろしていた。


「これも魔術ですか!」

「そうよ! その慧眼のまま余に迫れ! でなければ、ココからは生きて出られると思わぬことだ!」


(この人は強い………きっと、私よりも実戦経験は豊富だ……)


 咲和をこれまで感じたことのない恐怖が支配する。足が震え、その震えが全身へと伝わる。目の間には自分のことを殺さんとする、イシュがいる。そのイシュは自分よりも遥かに実戦経験が豊富だ。しかもココは敵の本拠地。自分の味方はギルタブリルしかいない。


(………この人に勝つ?)


 ふと、そんな疑問すら湧いた。


 自分にイシュを倒すことが出来るのだろうか、と。


 体の震えは止まらない。



「―――――!」


 手を握られた。


「大丈夫。サナ様には家族(あたしたち)がいる!」


 ギルタブリルが咲和の手を両手で包み込んでいる。


「ギルタブリルさん………ありがとうございます」


 小さく頷いて、ギルタブリルは手を放す。そして、咲和に背を向けた。その視線の先には七体の巨鎧がいる。


「こちらはあたしに任せろ。サナ様は皇帝に集中してくれていい」

「行きます!」


 二人は同時に床を蹴った。


「奴だけで、余の皇帝率いる千歴の英霊インペラトール・ヘーロス・レグノーが相手取れるものか!」

「彼女のなら問題ありません!」


 衝怒の絲剣イーラ・フィールム・グラディウス機械仕掛けの帝剣インペラトール・マーキナー・グラディウスとがぶつかり合う。


「あたしをなめるな!」


 二人の後ろでギルタブリルが声を上げる。


 ギルタブリルが蠍の尾を巨鎧の片脚に巻き付ける。


「ふん!」


 そして、尾を引いた。バランスを崩された巨鎧はそのまま転倒する。巨鎧を中心に床に亀裂が走った。


 残った巨鎧が、その手に握る大剣をギルタブリルへと振り下ろした。


「計算通りってやつだな」


 巨鎧達の大剣に依る振り下ろしによって、床に入った亀裂は巨大な穴へと変貌する。当然、その中心にいたギルタブリルは落下する。その穴を作った巨鎧達も同じようにその穴に吸い込まれていく。


「ギルタブリルさん!」


 その光景に思わず咲和は穴の方を見た。その隙にイシュは帝剣を振り抜いた。それを受け止めきれず、咲和は後退りをする。


「大丈夫、家族(あたしたち)がいる!」


 その言葉を最後にギルタブリルは穴へ落ちて見えなくなった。

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