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「この人が皇帝、イシュ・アッガシェル……………………………………………………違う」
ベッドに腰掛けていた皇帝と呼ばれたその者は立ち上がり、傍らにあった大剣と呼ぶにふさわしい機械仕掛けの怪剣を手に取る。
「全然違うじゃないですか!」
「どうした?」
「おろ?」
突然の咲和の咆哮にギルタブリルとイシュは目を見開く。咆哮によって、イシュは咲和の存在に気が付いた。これでは部屋に入る前にギルタブリルがスキルを発動させた意味がない。
「これっっっっっっっっぽっちも違うじゃないですか! 何が、男装の麗人ですか! 何が私と変わらない背格好ですか! 何が私と似たような歳ですか! 意味が解りません、ズルです! そんなのズルですよ! 私だってちゃんとご飯食べてるし、ちゃんと寝てるし、ミルクだってたくさん飲んでるにも拘らず、ちんちくりんなのに! ズルいズルいズルいズルいズルい!」
地団駄を踏みながら咲和は吐き出すように続けた。ギルタブリルのスキルを無駄にしてまで咲和が吐き出したのは、皇帝イシュ・アッガシェルの容姿についてだった。
咲和と変わらない小柄な体、軍服に身を包み、その長い焦げた赤毛は後ろで一つに結ってある。強い意志の宿った、黄金色の瞳の切れ長の目。顔の一部と左腕は機械に置き換わっている。
そして、軍服の上からでもわかるほど豊かな胸。
一方で、咲和は細い線の少女そのものだった。つまり豊かとは言い難い。
「「フィクティ・ムンドゥス」が王、キングゥだと?」
「皇帝、イシュ・アッガシェル! 私がその邪魔な駄肉を削ぎ落してあげます!」
「よくわからぬが、余の体に駄肉なぞ存在せぬ! 見よ、この完成された肉体を!」
自身の体を誇るかのようにクルリと舞って見せた。その行為が咲和の嫉妬に火をつけた。
「決めました。骨すら残さず灰にしてあげましょう―――――焼く妬く厄。この災厄を以て、我が怨敵を焼き滅ぼす―――妬災の蛇焔!」
一瞬で、魔術陣を描き、指を鳴らした。魔術陣からは火焔の蛇竜が飛び出し、イシュを呑まんと口を開けた。
「流石は「フィクティ・ムンドゥス」が王、キングゥ! 余の相手に相応しい! 」
黒塗りの扉を背にイシュは握った大剣を振るう。それは余りにも巨大な鉄の塊で、小柄なイシュが振るうには過ぎる代物だ。しかしそれを難なく振るって見せた。
振るわれた大剣は蛇竜を真ん中ですっぱりと切り裂いた。切り裂かれた蛇竜はその形を保てず崩壊する。
咲和とギルタブリルの顔に驚愕が張り付く。
今まで咲和の魔術を打ち破る者は十一の獣のほかにいなかった。しかし、人間であるイシュは咲和の魔術を打ち破った。




