04
生徒と教師とが、ずっと一緒にいられることはない。
あるはずもない。あってはならない。
それでも私は彼女と一緒にいたいと思った。
苦痛しかなかった世界に暖かさをくれた彼女の隣にいたいと思ったのだ。
「先生……私――」
「ダメだよ」
寒風吹きすさぶ秋空の下、学校での彼女の根城である社会科準備室で、私の言葉を制止した彼女の顔は困惑に彩られている。
「あと少し。あと少しでいいんだ。卒業まで待ちなさい。卒業式が終わったら、もう一度その言葉を聞かせてくれないかな?」
「……はい」
私は彼女の言葉を飲み込む。あと数か月なんだ。大丈夫。これまでに比べれば、あっという間のはずだ。
月日は流れた。
卒業式は滞りなく進み。私は中学を卒業した。
これで私と彼女は生徒と教師と言う関係を終わらせる。
「君の家に行ってもいいかな?」
「なんで、ですか?」
唐突な彼女の言葉に思わず棘のある言い方になってしまった。
「最後に、やらなきゃならないことがあるから、かな」
そこにはいつか見た、少しだけ困ったような笑みがあった。
「………わかりました」
そんな彼女の言葉に私は肯定するしかなかった。




