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【改稿版】十一の獣は魔王と共に  作者: 九重楓
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02

 月日は流れた。


 私が結の中に芽生えてから十年が経った。結は中学生から大学生になった。

 彼女の肉親は私の想像通り、父親が一人いるだけだった。私が結の中に芽生えるよりも前に母親とは死別していたのだ。毎朝彼女と父親が母親の小さな仏壇に手を合わせているのを見た。


「あー、今日も暑い……」


 結が零す。確かに今日は暑い。夏も最盛期を迎え、燦々と降り注ぐ太陽の熱が空気すら焼き焦がしている。


【換わるか?】

「いいよ。もう少しで図書館だしね」


 結局、私は結の提案に乗ってしまい、月に数度のペースで表に出て来ていた。初めは彼女を装うことにも苦労したが、今となってはすんなりと出来るようになった。

 このセカイを見るようになって、このセカイで咲和が死ぬと言うことが全く想像できなかった。「トラウェル・モリス(あちら側)」とは比べ物にならないほど発展している文明では、科学と魔術の境界は既に曖昧なものにいなっていた。これだけ科学が発展していれば魔術が衰退するのも理解できる。少なくともこの国では食うに困ることはなく、多くの者が清潔な衣服を身に纏い、住まいに困ることもない。そんなセカイを私は見た。


 しかし、それでも、咲和は死んだ。

 事故死? 病死? 殺、された? そのような不幸が彼女を襲ったのか?

 縺?d縲∫ァ√′谿コ縺励◆


 どのような理不尽が咲和を殺すのか、私は想像したくないだけかもしれない。


「ふぅ、生き返るぅ」


 冷房の効いた図書館内に足を踏み入れた結は緩んだ声を漏らした。大きな声ではなかったが、静寂の満たされた館内に彼女の声は響き、司書の一人が彼女を睨んだ。

 司書に睨まれた結は小さく頭を下げて、そそくさと中央に置かれた机まで移動した。




 彼女が勉強を始めて二時間ほど経った頃だっただろうか。私は一人の少女に意識を向けた。


【結】

「ん?」


 集中している結に話しかけることは憚られたがそれでも私は声を掛けてしまっていた。


【奥の、大型書籍の棚を見てくれ】


 結は静かに私の言った方に視線を向けた。

 そこには結の通っていた中学と同じ制服を着た一人の少女が一冊の本を持ってキョロキョロとしていた。

 その少女は遠目にも汚れていることが分かった。結と比べて髪はべたつき、肌もあれている。纏う制服も皴だらけで手入れがされていないことが分かった。そんな彼女は顔いっぱいに不安を塗りたくったような表情をしている。

 全てに怯えて生きる子ネズミの様だった。


「あ、もしかして」

【ああ、あの娘が咲和だ】


 私が頷くと結は咲和の動向を窺いつつ勉強道具をまとめ始めた。咲和が手ごろな席を見つけて腰掛けると結も移動する。結は意識を向けられることのないように静かに咲和の向かいの席に腰掛ける。さもこれから勉強を開始すると言わんばかりに本を広げた。

 私は咲和が呼んでいる本を確認する。それは「古代オリエント集」と言うものだった。後にソレが様々な神話を集めた資料集であると結から聞いた。


「それ、難しくない?」


 徐に、結が咲和に声を掛けた。咲和はびくりと肩を震わせた。それが私と咲和の初めての邂逅だった。

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